第72話 ブリスク①
「報告致します!聖女並びに白光騎士団がブリスクに帰還したもよう!尚、使徒の存在は確認できなかったようです!」
ニヤリと贅肉に顎と首の境すら判然とさせない男は醜い顔をさらに歪める。
「使徒の出迎えと保護に出た我が兵達とあの男はまだ戻らぬのかですか?」
あの小娘が託宣を受け、身の程も弁えず使徒の保護に乗り出したと聞いた時は少々焦ったが……
"聖棍"率いる白光騎士団といえど、倍する兵力を前に逆らう程馬鹿ではなかろう
現に使徒を連れず、おめおめと戻ってきたと言う
「はっ!未だ同志達は戻っておらぬようです!」
「……引き続き城門を監視させなさい」
平民や貧乏人を相手にしている
我々が使うに相応しいモノなのだ
どの程度使えるかは未知数であるが、これで私も枢機卿の座が狙える立場となった
この国の枢機卿は現在白光教団等を主流としたボルチィオ派の人間だ
50年前の忌まわしき聖都事変以降クンニ派は主流派の座を奪われた
高貴な出の私が苦渋に耐えた日々が漸く報われる
あの歴史の長さだけが取り柄のミッドガルドに何故神は恩寵を齎したのかは理解に苦しむが、こうして私の下にもお裾分けをしてくれた!
「グゥヒッヒッヒッヒッ!笑いがとまらぬなぁ」
醜く肥えた腹を揺らし男は笑っいた。
—————————
「ボルチィオ派ねぇ……」
この宗教団体は本当に大丈夫なのか?
よもや"聖教ではなく性教でしたwww"なんて落ちじゃないだろうな?
昔、神聖教国は絶大な国力と権勢を振るっていたが、"奇跡"とその使い手の全てを教国の管理下に置こうとし、各国の猛烈な反発に首都である聖都を包囲されるまで攻め込まれ、最後は自国の人間に殺された教皇がいたそうな。
暗君タッケル=ヤーマト、聖都事変の大罪人として有名な元教皇。尚、高度な治癒魔法の使い手としてその地位を高めていったといわれている。
コイツって……
その後、『民を導きしは高貴な者とせん。神の祝福はそこにあらん』という教義のクンニ派は力を無くし、『神の祝福は神の教えのもとにすべからくあらん』とした教義のボルチィオ派が主流となった。
この世界についてまるでダメ夫な俺にルナ先生……じゃなかった、アイリーン先生が簡単な歴史授業をしてくれた。危ない危ない
街に入った俺達は商工協会に赴き荷を下ろすと、ブリスクでのマルコス商会の拠点である本店よりもでかい支店に宿泊することになった。
無事に魔石をはじめとする各種輸送品を納品し、満足げなマルコスさんは盛大に宴を開いてくれた。
「多少のトラブルはありましたが、順調な旅程と恙無く納品出来た事を祝して!」全員で『乾杯』と言って飲めや歌えやで大盛り上がりだ。
美味い飯にそこそこいい酒を用意してくれるマルコスさんは流石、出来る商人は使う所には使うんだなぁと感心した。
商人に輸送は欠かせず、輸送には優秀な信用出来る人間が必要だ。
それらに労いと報酬はケチらない。
多分そういう事なんじゃないかな。知らんけど。
美味い物にありつければそれでいいや!と、酔っ払った頭で考えただけだ。
朝起きると折れた割り箸が尻に刺さってチクチクしてた。
アレかぁ……酔った勢いでTバック状にしたパンツとケツ筋で割り箸をへし折るという十八番の宴会芸を披露したんだった。
腹を抱えて笑う皆んなに気を良くして、何回も連続でやってやったんだわ……
ケツが地味に痛い
頭に巻いた捩り鉢巻きをとり鼻の穴に入ってた豆をフン!と吹き出して部屋に戻り寝直すことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます