第54話 おっさん閑居として…
俺は朝からギルドに来てひたすら待っていた。
何をかって?…新人冒険者をだ!
ここに屯している冒険者達には『盗賊皆殺し事件』や『子爵家私兵隊リンチ事件』がバレてるせいで態度がよそよそしいのだとアイリーンが昨夜教えてくれた。
なんとなくは知ってたけど…
冒険者ならそんなに気にしないだろうと思ったのだが、まぁまぁ危ない奴として認定されたらしい。
だから、そんな事を知らない新人冒険者を捕まえて「一緒に冒険しようぜ!」ごっこをしようかと朝早くからギルドの食堂兼酒場兼待合所のテーブルで網を貼っていた。
暇だ。余りの暇さにパイパンヘッドがギルドに入って来た瞬間に「おっ!パイパン!ちょっと来いよ!」と呼びつける。
物凄い嫌そうな顔をしながらも律儀にやって来る。
「おい、ハゲ、朝からしけたツラしてんじゃねーよ!あん?頭から光放ってるくせによ!」と、なんとも粗野な冒険者的挨拶をかましてみる。
「…あ、あぁ、すまん…」暗い顔のパイパンヘッド
「いやいやいやいや!なんじゃそりゃ!違うだろ?!もっとこう冒険者的な荒くれチックな返答があるだろ!このハゲー!!」
全然なってない!最初に見せた荒くれ感は鳴りを潜め仔犬のように震えている。
「おい、俺の台詞の後に続いて復唱しろ」
嫌そうな顔のパイパンヘッドを無視して
「なんだとテメェ!ハイッ「…なんだとテメェ…」もっと声出せよ、殺すぞ…。」
周りは完全に我関せずを貫いている顔だ。
「朝から調子こいてっとモンスターに殺されるより前にぶっ殺すぞ!ハイッ「…朝から調子こいてっとモンスターに殺されるより前にぶっ殺すぞ!」まぁ、いいだろう。これが冒険者的挨拶の模範だ、もっと雰囲気出していかないとな!」
と、パイパンヘッドの背中をバン!と叩いて戻っていいと顎で促し仲間達の元に解放してやった。
遠巻きに見ていた他の冒険者達は巻き込まれないように目を合わせないように必死だった
ふとギルドの入り口に目をやると、見るからに素人と思われる3人組の少年2人と少女1人がキョロキョロとギルドの中を見ていた。
(キターーーッ!)
パイパンヘッドも気付いたのだろうが、動く気配がない。
目線で「行けよ!」と合図するが凄い嫌そうだ。
パイパンが絡んでる所を助けて好感度上げ上げ大作戦は失敗だ。
しょうがないので「登録の受付はあそこだぞ」と見るからにリーダーであろう赤髪ツンツンヘアの元気少年に教えてあげた。
「おっさん、ありがとな!」と笑顔の元気少年に癒される。「あの、ありがとうございます。」と素朴な田舎少女に礼を言われ、その2倍の体重はあろう巨体の少年は鼻を垂らしてアホそうだ。
受付を終わらせたであろう3人に近寄って、
「お前達、今日は依頼受けるのか?予定も計画もないなら角ウサギでも狩りに行かないか?今ならいい稼ぎになるぜ?」
と、冒険のお誘いだ。
赤髪元気君は「おっさん新人なのか?いい歳こいて?」と宣った。周囲の空気がサッと静まるのを感じたが素朴少女が「ごめんなさい!悪気はないんです!この子馬鹿なんです!」とフォロー。
「気にしてないよ。俺も登録したばかりの新人なんだ。いい歳こいてるのも事実だしアハハハ」と大人の対応。
それより、鼻水垂らした巨体少年は腹が減っているのかさっきから腹の音が凄い!
アイテムボックスから露店で買いだめしていた焼き立ての豚串ととり串を取り出して餌付けしてみる。
赤髪元気君は「勝手に餌付けすんなよ!www」と笑い、素朴少女は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
ぼーっとしてた巨体少年の目が2倍は大きくなって肉を見ている。
「お食べ」と言うと凄い速さで肉を食べた。
朝から面白いものが見れたので2人にも肉串を勧めてたらギルド長が現れた。
「ちょっと話しがある。私の部屋にきてくれ」
「俺は今から新人冒険者達との交流に角ウサギの依頼にと忙しいのだが?」
「角ウサギなんかお前が行かなくてもいい!長期依頼の件だ、来てくれ」
せっかくの冒険者的イベントを潰されてしまい
「また、今度な…」と3人に1本5
「今朝、商会から連絡があった。明後日の夜明けに出発するらしい。今日の昼過ぎか明日までに一度商会に来て欲しいそうだ。」
ギルド長が連絡事項を伝えてきたので、
「暇だし今日いくことにする」と言うと、白い目で見られ
「さっきは忙しいと言ってたろ…」とひとりごちたが、お前が邪魔したんだよ!とは言わなかった。
昼過ぎまで時間もあるし金もある俺は、買い物しながら暇を潰すことにした。
武器屋で長めのククリ刀のような短剣2本と腰の後ろに交差して固定するシースを買い、防具屋で格好良さげな皮鎧と皮に金属板で補強したガントレットのようなロンググローブと皮と金属板の付いた脛当てを購入しファンタジー感を重視して装備を整える。必要もないのにベルトに大中小のポーチも付けてみた。
ぱっと見、斥候職の冒険者だ。
小金持ちおっさんはこういう所で見栄を張るのだ。
俺は新しい装備にウキウキでマルコス商会に向かった。
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