第7話



「急にどうしたんだ?」


「い、いえ。少し気になって……」


「ふぅ〜ん……まあいい。そうだな、回避するなら…………え?正直に言っちゃうぞ?」


「どうぞどうぞ」


「あと……そうだな……最低でも12、3万ぐらいは必要だな……」


「ほぉ〜……」


「信頼できるお前だから言ってるだけだぞ?」


「ありがとうございます」


(店長。俺のこと。信頼。ふふふ)


なんて言い響きだんだ!!


「それで?知ってどうするんだ?」


「い、いえ。得には……」


「かっかっか!……そうか。……ほら、冷めない内に食ってくれ。」


「はい……」



それからは少し、店長とこの店の思い出を語り合った。



「また閉店するまでに1回でも来てくれ。その時にはまたおまけしてやる。」


「ありがとうおございます。」



    *



『この店おすすめ 絶対に行くべし。店長美人。』


うん。こんな感じでいいだろう。


タンッ


エンターキーを押して


俺は自身のブログに投稿する。



ピロン♪ ピロピロピロピロピロピロピロピロン♪



早速、ネットの民たちが反応した。


『TGがおすすめの店?』

『これは行くしかないですな!』

『店長が美人?』

『俺そこの店知ってる。店長めっちゃ美人だお』

『店長?美人?……はぁはぁはぁ……!』

『勝田スペシャルってのが店の看板だお』

『今俺近く通ってるから、早速行ってくるお!』

『パンパカパン!』

『俺の秘められし息子がぁああああ!!』



うおぉ……早速行ってくれる人もいるのか……


うん。さすがネットの民。言うことのレベルが違う。


「これで大丈夫……かな?」


考えたって答えはまだわからない。


明日また様子を見に行こう。


「おやすみなさい……ZZZZZ……」



    *



翌日朝6時に、ラーメン勝田の前まで来た。


(うっわぁ……)


店の前には長蛇の列が出来ていた。


ガシッ


後ろから誰かに掴まれた。


「おい天狗。何した?」


「……え……店長……さん?」


サングラス、帽子にマスク。


完全に不審者だ。


「そうだよ……。お前に昨日餃子をオマケしてやった店長だよ……。お前ちょっとこっちこいや。」


そのまま俺は店の裏まで引っ張られた。



    *



「おい天狗。何したんだ?」


「いや〜……ちょっとだけ……」


「ちょっとだけ?」


「あはっはっはっは……」


「まあいい……ほらこれ。」


店長が何かを渡してきた。


「店の制服。着ろ。」


「俺が?」


「お前以外に誰がいる。こんだけ、1人は到底さばききれないような量の人間を連れてきたのは、

いったい!どこの!目の前の!馬鹿は!……誰だ?」


「……僕です」


「わかったんならさっさと服着ろ。安心しろ、バイト代は出してやる。」


「はい……」



    *



「1番テーブル!勝田スペシャル3杯!」


「あいよ!」


「5番テーブル!勝田スペシャル2杯と餃子1つ!」


「あいよ!」


(しんどい……今すぐ逃げたい……)


店長と目があった。


店長の口が動いた。


(うん?なになに?……に・げ・る・な・よ? ママー!怖いよー!)


「6番テーブル!勝田スペシャル1杯と炒飯1つ!」


「逃げるなよー!」


(店長!心の声が漏れてますよ!)



    *



「……」


「おっ、少しは男前になったんじゃないか?」


「……」


(俺は……燃え尽きた……)


「はい。バイト代。」


テーブルに漱石が5枚置かれた。


「今日は大変だったけど。一日の売上だけで赤字は回避できた。本当にありがとう。そして、二度とするな。」


「はひ……」


「今日は私の賄だ。あんたの好きな勝田スペシャルと、餃子一個おまけ。」


「ワーイ……」



    *



「アリガトウゴザイマシタ……」


「また来いよ」


「ハイ……」


俺は棒のようになった足を引きずりながら、何とか家まで帰る。


ガチャッ


「ただいま我が家。おかえり俺」

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バグで最弱魔物になった 〜けど魔王になる〜 @lemon-lemon

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