第6話 心の拠り所

(今日はそろそろ終わろうかな……)


現在村から脱出した時点で、現在夕方の6時。


(けど……何処でセーブしようかな……)


基本、普通のプレイヤーは非戦闘エリアに分類されるベットや宿などでセーブするのだが……


(ベットもないし……だからといって宿にもいけない……)


「いたぞー!さっきのゴブリンだー!」


(うわ〜……追いかけてくんのかよ……)


仕方ない、俺はゴブリンなのだから。


(何処か安全な場所は……)


「あった」


ある。


目の前にある。


(嫌だ。あそこだけは嫌だ。)


今俺の目の前にあるのは、


肥溜めだ


「逃がすなー!近くにいるぞー!」


まさに究極の選択


(入るか……?いやけど、やっぱり……)


「いたぞー!肥溜めの前だー!」


(そうだ。コントローラーを前に倒すだ……って!やっぱ嫌だよ!)


「よくもアルナちゃんを!!!!」


男が鍬を振り上げてきた。


「あっ」


反射的に回避ボタンを押した。


そのまま俺はバックステップをして


(え……う……うっぷ!?)


「てめぇ!肥溜めに逃げるなんて卑怯だぞ!!!」


男の言葉を聞く前に、俺はもうトイレに向かってBダッシュしていた。



    *


「ヒュー……ヒュー……」


(あかんって。あれはあかんって……。)


二回目の肥溜めダイブ。


一向に慣れる気がしない。


画面を見ると全体が茶色い汚物に埋め尽くされていた。


(……なんだか……どうでも良くなってきた……)


俺はモザイクがかけられそうな汚物に埋め尽くされているテレビの前に座る。


(始めっからこうしとけばよかったんだよな……。俺は何を抵抗してたんだろう……?)


「あはははははは」


俺は何故か口から出る感情のこもっていない笑いを抑えることもせず。


セーブボタンを押す。


『セーブが完了しました。

 {注意事項}セーブをしてもセーブされた場所であなたの分身が攻撃されるとGAMEOVERになります。』

 

定番の文字が画面に出てきた。


そして、


画面が暗くなる。



パーン!パパパーン!パパパーン!ジャジャジャジャーン!



ファンファーレのような音楽とともにタイトルの画面に戻ってきた。

「っ終わったー……!!」


少しその場で背伸びをする。


「ふぅ……」


(これからどうしようかな……?)


少し……いや大分がお腹も減ってきていた。


(今日はあそこかな?)



    *



カランカラン!



「らっしゃい!……おっ!天狗じゃねぇか!」


「こんばんは」


俺のことを天狗と呼ぶのは「ラーメン勝田」の店長、勝田淳奈さんだ。

本人は最近小じわが増えてきた。なんて愚痴ってたが、めちゃくちゃ美人だ。


「今日もいつものかい?」


「いえ、今日は餃子もセットでお願いします」


「おっ!今日はなにかいいことでもあったのか?」


「いえ……悪いことです」


「はっはっは!準備してくる。」


(逃げたな)



    *



「おまち!」


目の前には、この店看板メニュー。勝田スペシャルと餃子が置かれた。


「うん?あれ?」


思わず店長の方を見る。


「今日は餃子2個おまけだ」


「あざっす!」


さすが店長!


肥溜めで汚れたオレの心を洗い流してくれる


「うめぇ!」


「かっかっか!そうかい!」


「いやぁ〜やっぱりこの店はやめられない!」


「そうだな……」


「……?店長どうしたんですか?」


「いつか言おうとは思ってたんだけどな……」


俺は餃子を3個目を口に入れずに途中で止める


「今月の売上がまた赤字だったらもうこの店は閉めようと思ってるんだ……」


「えっ……あっ……」


思わず餃子を落としてしまった。


「ああ”あ”〜〜〜!俺の餃子〜〜〜!」


「はっはっは!

……まあそう言うことだ……多分今月でこの店は閉店。開店当時からずっと来てくれているお前には悪いが、そろそろ私の財布がしんどくなってきてしまってな……」


(しんどいはずなのに俺を励ますためにおまけをしてくれたのか……?)


「赤字を回避するにはあといくら必要ですか?」


「は?」


今度は俺が店長を励ます番だ。

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