第32話 本葬

私は単位という大切なものに別れを告げた


椎間板ヘルニアを抱えたまま実習に行くことは即ち死を意味するとのこと


今回の実習は単位ごと諦め、来年に延期する事で話がまとまった


私は逆に冷静になり、YouTubeで父方の祖父の時のお経を探し、流した


実習に関わるものや単位に関わるものをパソコンの前に置き、水の代わりにお酒を置いた


線香の代わりにたばこに火を灯した


私は一人で単位の葬式をやることに不安を感じ、親友に電話で実況葬式をした


親友は大爆笑をし、笑いを堪えながらお経を唱えていた


私は単位に別れの言葉を告げた


椎間板ヘルニアのせいで実習が行けないという事実に目を向けられない自分がいた


不謹慎だという人もいるかもしれないが、私はこうでもしないと昇華できないと思い、頭のいかれた行動をわざとした


両親はもう卒業してくれさえすればなんでも良いと、9割諦めのコメントをくれた


学生結婚もありだ、と言われた


孫を見せろ、と言われ私は悠陽を考えた


愛想笑いでやり過ごし、お風呂に入った


大好きな彼らをたくさん見て、湯船につかり、腰を温める


彼らはキラキラと輝いて、まるでディズニーに行っているかのようで、たった3分の短い動画でも夢を見せてくれた


ただの歌詞なのは分かっている


それでも、愛の言葉を綺麗な旋律に乗せて言われれば、ドキドキしてしまうのが私だった


今まで不幸ばかりの人生で、教授にもえげつないと言われるようなことばかりで、そろそろ幸せになっても赦される時期が来たと思いたい


この世で一番美味しいのは一口目のビールだな、とお風呂あがりに思った

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