50 会議
ネイビスとイリスとビエラの三人は王城の会議室にいた。会議には宰相や大臣、近衛騎士団長など、偉い人達が集まっていた。長机の誕生席に国王が座り、反対側の端にネイビス達が座っている。国王の隣に座るポーツマン卿が口火を切った。
「えー。今回みなさんに集まっていただいたのは他でもない。此度発覚した新事実である転職についてだ。もちろんこれは国家機密だ。許可なくこの事を漏らしたものにはそれ相応の罰が課せられるので、各自肝に命じておくように。では、発見者の『ランダム勇者』のみなさん。お話をお聞かせ願います」
ポーツマン卿の振りを受けてイリスとビエラがネイビスに視線を送り、ネイビスが説明してよと訴える。ネイビスはやれやれと一つため息を吐くと説明を始めた。
「先ず最初に断言します。レベル99になることは可能です。俺は既に二回レベル99になっていますし、イリスとビエラも一度はレベル99になっています」
そこまでネイビスが話すと会議に参加している者がざわつき始め、次々と手を挙げた。それをポーツマン卿が仕切る。
「ブルース大臣。意見をどうぞ」
「はい。先ずどうやってレベル99に至ったのですか?記録に残る人類最高到達レベルでさえレベル67なんですよ?私には俄には信じることは出来ない」
彼の言葉に手を挙げていた者達が「そうだそうだ」と首を縦に振って同調した。それを見てネイビスはほくそ笑み応える。
「あー。それはですね。簡単な話ですよ。周回すればいいんです。周回」
「周回とな?」
ネイビスが周回と連呼したのを聞いて国王が尋ねる。ネイビスは頷いてその先を話す。
「はい、国王様。ダンジョンを周回すればいいんです。それが僕達がレベル99に至った、たった一つのやり方です」
「ダンジョンを周回したというのか?」
今度はポーツマン卿がネイビスに質問した。
「ええ。今回発見したダンジョンで周回しました。本気でやれば一ヶ月くらいでレベル99になれますよ」
ネイビスの言葉に部屋中がざわつく。
「もしそれが本当なら魔王討伐の日も近いかもしれない」
「今までのランク制度を見直さなくては!」
「そうだな。だとしたらSSランクやSSSランクか?」
三々五々と喋り会う男達を見てネイビスは手を叩いて注目を集める。
「とにかく。先ずは既存のランク制度の見直しを行う必要があります。俺からの提案ですが、69レベル以下は今までのままにして、70レベル以上をSSランク。80レベル以上をSSSランク。90レベル以上をレジェンドのLランクとするのはいかがでしょうか?そして、転職の回数と合わせて例えば一回転職したレベル50以上の人ならLAランク、二回転職したレベル60以上の人ならLLSランクのようにランクを表すようにするのがいいと思います」
ネイビスの説明を男達は真剣に聞いた。そして説明が終わると少し考えてから彼らは頷き合う。
「私は賛成だ」
「私もいいと思います」
「賛成の人が多そうですな。国王様はどのようにお考えで?」
ポーツマン卿が総意を確認すると最後に国王に確認した。国王は大きく頷いて応える。
「私もそれで良いと思う。だが、ネイビス殿は先程先ずはと言った。ということはまだ続きがあるということだ。是非ともその続きを聞きたい」
国王の言葉にネイビスはニヤリと笑った。
「ええ、もちろんです。次に考えるべきなのはダンジョン周回の一部解禁です」
「ダンジョン周回の解禁だと?」
「はい。ですが、あくまでも一部です。例えば、そうですね。試験を設けて合格した者にダンジョン周回を許可するとか、国が特別な許可を与えた者だけが周回できるとかですかね」
「ほう。限られた者のみダンジョン攻略の制限を無くすのか。それはいい考えだな」
「私は反対です。そもそも何故ダンジョン攻略が一日に一回までになったとお考えですか?それは安全のためです。無謀にも一日に何度も周回した冒険者達がどうなったか分かりますか?」
一人の男がネイビスの意見に異を唱えた。ネイビスは少し考えて返答する。
「恐らく死んだんでしょう。ですが、それは無謀に周回した人の話ですよね?」
「無謀じゃない周回があるとでも言うのですか?」
「ええ。ありますよ。そうですね。俺達のパーティーは一日に最低でも十周以上周回してましたよ?でも、ほら!こうして生きている」
「それは、あなた達が真の勇者だからでしょう。他の冒険者には当てはまりません。なので私は周回を解禁するのは反対です」
男の言葉にネイビスは綻びを見つけ、嬉笑いをしそうになるのをなんとか我慢して突き返す。
「ということはこういうことですか?普通の冒険者は周回はダメだけど、俺達のパーティーは真の勇者だから周回してもいいと。つまりそう言うことですね?」
「それは!」
「国王様。どうか俺達にダンジョン周回の許可を下さいませんか?」
ネイビスは男を無視して国王に向き直って訊く。
「うむ。私はそなたらには許可を出しても良いと思っている。既に周回をしているようだしな」
「な!国王様!本気ですか?」
「ノックよ。今日は歴史に残る変革の日だ。私達は変わらなくてはならない。国の運営に保守的な意見はいつだって大事だ。だが、今は変わる時なのだ。理解してくれるか?」
「そ、それは。はい」
「他の者も異論はないな?」
国王が会議に参加している者達に尋ねると皆首肯して同意の意を示す。ネイビスは心の中でガッツポーズを作った。
「では、『ランダム勇者』には特別にダンジョン周回の許可を与えることにする。そうだな。他にも『絶対零度』や『破壊神』、『理』の三つのSランクパーティーにもこの話をするべきか」
「私もそう思います。他にも伸び代のあるAランクパーティーにも声を掛けるべきかと」
「その通りだなポーツマン。そうするとしよう」
「はい。では転職に関してはこのくらいで。次はレベル99で習得できるという第四スキルについて議論することにしましょう」
その後、第四スキルについてや、ステータスについてネイビス達は根掘り葉掘り訊かれ、日が暮れるまで会議は続くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます