49 大預言者
謁見が終わり三人は客室に戻っていた。その胸には黄金に輝く勲章が煌めいている。
「ふぅー。終わったわね」
「だね。疲れたよー」
「まだ帰れないけどな」
三人は少し休憩を挟んだ後国王達とともに昼食を食べる運びとなっていた。そして午後は転職やらステータスやらの緊急会議に参加することになっていた。ネイビスにとってはむしろここからが本番だった。そう。ネイビスにはある使命があった。ダンジョン周回の解禁という大役が。そのために転職という情報をこれまで広めてきたのだ。
「そうだ、ネイビス。不死のアクセサリーは?」
「あ!忘れてた。昼食の時にでもお願いするか!」
その時部屋がノックされた。
「昼食の時間です。案内します」
老紳士が三人を案内する。ちなみにアーネルドは仕事があるらしく謁見が終わった後国王と少し話をして帰っていた。三人は広い食堂に通される。既に国王や王妃、王女に王子らしき姿があった。そして先の男とアリエルと呼ばれていた銀髪美女もいた。
「よく来てくれた!私はそなたらを歓迎する。先程は試すようなことをしてすまなかったな」
「いえいえ。仕方のないことですよ」
国王が謝るとネイビスが代表して返答する。
「そうか。そう言ってもらえると助かるな。さぁ。食べよう」
食事はとても豪華だった。サラダにパスタ、ピザにグラタンにオニオンスープ。どれも出来立てでネイビス達は満足した。
「あの。国王様。一つお願いがあるのですがいいでしょうか」
「何だ?言ってみなさい」
「はい。実はAランクダンジョン『ドラゴンの巣』の攻略をしようと考えているのですが、そのために不死のペンダントが必要でして。貸していただけないかと」
「ほう。Aランクダンジョンの攻略か。それは結構。不死のペンダントも貸し出してやろう。確か『絶対零度』にも貸していたしな。後で渡すよう取り計らっておこう」
「ありがとうございます」
不死のペンダントはあっさり貸出許可が出た。その後も食事を進めていく。やけに銀髪美女がネイビスを見つめてきていた。ネイビスは気になって質問する。
「あのー。俺に何か?」
「ううん。ただ見惚れていただけだよ」
「そ、そうですか……」
食事中、銀髪美女はずっとネイビスを見ていた。ネイビスも銀髪美女を意識してチラチラ見ている。それに気づいたイリスとビエラが顔を曇らせる。
「ネイビス、ちょっと。あの女知り合い?」
「ネイビス君。説明して?」
ネイビスの両脇に座るイリスとビエラが問い詰める。
「いやいや、今日が初対面だよ」
「私達よりもああいう大人の女性の方が好みかしら?」
「あの人たぶん私よりも大きい」
「そうなのか?」
銀髪美女は全身を覆うローブを着ているのでネイビスには彼女の体型がわからなかったが、女性同士では何か分かるものがあるのだろう。
「なになに。ボクの話?」
三人がコショコショ話していると銀髪美女アリエルが言った。
「いや、美しい人だなーって。な?」
「え、ええ。そうね」
「う、うん」
三人は必死に誤魔化す。
「ふーん。それよりも三人は恋人なのかな?」
「ええそうよ!」
アリエルが尋ねるとイリスがハキハキと答える。
「あら残念。でも素敵ね。勇者パーティーみたい」
「ああ。『絶対零度』ですか?」
「ふふふ」
アリエルは否定も肯定もしなかった。ただ不敵に微笑んでネイビスに熱い視線を送るだけ。ネイビスは独特な雰囲気の人だなと思った。
「なんだアリエル。ネイビス殿に気でもあるのか?」
王子がアリエルに尋ねる。その眉間には皺が寄っていた。
「あら。嫉妬かしらレオハルト」
アリエルは王子を見返して言う。
「そ、そうじゃ無い。ただ確認しただけだ」
「レオはエルのこと大好きだもんね」
「な!違うし!訂正しろ」
王女が王子をからかって微笑む。それに対して王子は強く反発した。
「まぁまぁよさんか。それよりそろそろ昼餉は終わりだ。皆もお腹いっぱい食べただろう」
「はい。そうしましょう」
国王がそう言うと隣に座っていた王妃が頷く。昼食は終わり三人は会議までの時間、再び客室で過ごすことになった。食堂を出て行く三人にアリエルが声をかける。
「アクセサリー。良いものをつけてますね」
「分かりますか?」
ネイビスは振り返ってアリエルに聞き返した。アリエルは微笑んで答える。
「ええ、まあ。『ランダム勇者』の皆さんに預言者として一つ言わせてもらいます。神はあなた達を真の勇者として認めました。あなた達は確かに強い。ですが、まだ足りません。もっと強くなって頂かなくては」
「言われなくてもそのつもりですよ」
「なら安心です」
「そうですか。ではまた」
ネイビスはアリエルに一つお辞儀をするとイリスとビエラと共に食堂を出て行く。三人の後ろ姿を見ながらアリエルは誰にも聞こえないような小さな声で呟いて笑う。
「彼なら殺せるかしら。ふふふ」
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