転 ダンジョン攻略編 歯車が回りだす

45 王都到着

 ネイビスとイリスとビエラは飛空艇のデッキにて沈みゆく夕陽を眺めていた。飛空艇はあと少しで王都に着く。そんな折、ビエラが言い出した。


「ねぇ。私思ったんだけど。死のブレスに即死効果があるなら不死のペンダントつければ大丈夫じゃないかな?」


 その言葉を聞いてネイビスは思わずビエラに聞き返した。


「不死のペンダント?」

「うん。オリエンス世界大会で使われるやつ。どんなにダメージを受けてもHPが1残るっていうアクセサリーだよ?それならもしかしたら即死回避できるかもって」

「そのアクセサリーの名前は確かに不死のペンダントなんだな?」

「う、うん!そうだよ!」

「よし!それならかなり時短できるぞ!」


 不死のペンダント。それは『ランダム勇者』の終盤で入手できるアクセサリーだった。その効果は即死防止。闇魔法系の即死効果を防ぐと同時に即死級のダメージを受けてもHPが1だけ残るというとても優秀なアクセサリーだった。しかしこのアクセサリーの入手方法はなかなか厄介だった。というのも、不死のペンダントは宝箱に入っていたりせず、自分の手で作らなくてはならないのだ。その必要な素材には魔大陸で手に入る素材もあり、素材集めが大変で作るのに苦労する。それ故にネイビスはビエラの『レイズ』でAランクダンジョン『ドラゴンの巣』を攻略しようと考えていたのだ。


「ちなみにその不死のペンダントはどこにあるんだ?」

「たぶん、王様が持ってるんじゃないかな?大会の度に宝物庫から出してるって聞いたことあるよ」

「王様か……。ベストタイミングだな!」


 それを聞いてイリスが問い詰める。


「あなたまさか国王様にお願いする気なの?」

「ああ、そうだぞ。不死のペンダントも宝物庫で燻ってるよりも、俺達の役に立つ方がいいに決まってる!」

「呆れた。本気なのね」

「ビエラ。いくつあるか知ってるか?」

「えーっとね。少なくとも10個はあるんじゃないかな?」

「ならそのうちの三つくらい貸してくれるだろ。いやー。最初は王様に会うの緊張してたけど、今はなんだか楽しみになって来たな!」


 ネイビスは謁見が待ち遠しくなった。今日は6月19日。三人は今日はそのまま宿に泊まり、明日冒険者ギルド王都支部に赴こうと考えていた。何事もなく飛空艇は王都に着き、三人は飛空艇を降りる。


「懐かしいわね」

「うんうん!」


 イリスとビエラは街中を歩きながら懐かしさを感じていた。一方のネイビスはと言うと明日の冒険者ギルドで何を話すか想像してはにやけていた。ネイビス的にはカーネルド以上の反応を期待していた。


「ネイビス。さっきからニヤニヤやかましいわよ」

「ネイビス君。また何か企んでる?」

「いやー。明日冒険者ギルド行くだろ?そこで転職の話をしようと思ってな」

「またするの?」

「ああ。カーネルドさんが証書を書いてくれたがそれだけだとちょっと心配でな。だから証人を現地調達しようってわけさ」

「なるほど」


 三人は王都の町を歩いてある場所に着く。


「ここ確か最初の集合場所にしたわよね」

「ああ。始まりの噴水な」


 噴水からは絶えることなく水が流れ落ち、心安らぐ音を奏でていた。夜の帳が下りてなおライトアップされて噴水の周りは明るかった。噴水の周りにあるベンチには老夫婦や子連れの家族などがいて、どこか暖かい空気が占めている。


「ねぇ。二人とも。少し話さない?」


 イリスとネイビスがボーッと噴水を眺めていると間のビエラがそう切り出した。


「俺は別に構わないが、何話すんだ?」

「まぁ、色々だよ」

「私もいいわよ」


 三人は空いていたベンチにネイビスを真ん中にして並んで座る。


「私ね。本当にネイビス君とイリスちゃんがパーティーの仲間でよかったなって」

「そ、そうか。ありがとう」

「ふふふ。ネイビス君ってすぐありがとうって言うよね?」

「そうか?」

「うん!そう言うところ大好きだよ」

「私もだからね、ネイビス」


 ビエラはネイビスの左手をイリスはネイビスの右手をそれぞれ握った。


「俺も二人と組めてよかったよ」

「まさか落ちこぼれだった私達三人に国王様に謁見する日が来るなんてね」

「ね!すごいよね」


 それからしばらく三人はこれまでの三ヶ月間の出来事を話し合った。スライムの森で属性スライムを避けたことだったり、隠しエリアの滝でびしょ濡れになって着替えたらネイビスが二人の裸を見てしまったことだっだり、話せばキリがなかった。時間が経つにつれてイリスとビエラはだんだんと体をネイビスに密着させていく。それに気づいたネイビスが確認する。


「二人とも。一応ここ公共の場だからね?」

「分かってるわよ」

「だからもう少し離れようね?」

「分かったわ。続きは宿でしましょう」

「うん。そうしよっか」


 三人は噴水を後にして宿屋『始まりの宿』に入る。


「三人で1500ギルです」


 受付のおじさんに三人は銀貨を5枚ずつ渡す。その時ネイビスは受付のテーブルの上に並べて置いてあった指輪型のアクセサリーが気になった。『湯煙の宿』や『風林の宿』には置いてなかったが、ダンジョン都市イカルの宿には必ずこのアクセサリーが置かれていたのをネイビスは思い出す。


「あのー。このアクセサリーってなんですか?」

「ああ、これ?知らないのかい?避妊の指輪だよ。冒険者だったら一個は持っておくことをお勧めしとくよ?てっきり兄ちゃん達は持ってると思ったけど意外なこともあるもんだな」

「避妊!」


 ネイビスは避妊の指輪を手に取って調べる。効果には確かに避妊と書かれていた。


「ネイビスどうしたの?」

「ネイビス君どうしたの?部屋行こうよ」


 後ろに待機していたイリスとビエラが受付のおじさんと話し込むネイビスに声をかける。


「あ、ああ。ちょっと待ってくれ。これ三つ買います!」

「これは女がつけるやつだぞ?兄ちゃんもつけるのかい?」


 おじさんはからかうようにそう言った。


「あ、じゃあ一つは予備でお願いします」

「あいよ。一つ20000ギルするが出せるかい?」

「はい!金貨6枚ですね。どうぞ」


 金貨6枚などネイビスにとっては端金だ。ネイビスは即決して即買いした。


「何買ったの?」

「聞いて驚け!避妊の指輪だ!」


 そう言ってネイビスは買った三つの避妊の指輪をイリスとビエラに見せる。


「避妊の指輪!?確かその指輪、結構な確率で宿屋に置かれてるやつよね?」

「避妊ってことは例のアレできちゃう!?」

「つまりそういうことだ」


 噴水の前にいた時から熱々だった三人は部屋に入ると同時に絡み合い、熱く長い夜を過ごすのだった。




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