44 いざ王都!

「ネイビス。起きなさい!」

「んーーー」


 昨日は夜遅くまでカーネルドと話をしていたのでネイビスは寝不足だった。


「起きないと朝のチューしてあげないわよ?」

「今起きます!」

「ふふふ」


 ネイビスはイリスとビエラと目覚めのキスをしてから背伸びをした。


「もうそろそろ出るわよ!」

「はーい」

「ネイビス君の寝癖可愛い」


 ビエラはネイビスの寝癖を手のひらでぴょこぴょこして遊んでいる。


「ビエラも行くわよ!」

「うん!わかった!ネイビス君行こ?」

「うん」


 三人は駆け足で朝のイカルの町を往く。日はまだ登ったばかりで町は薄暗い。チラホラと飛空艇発着場を目指して歩く人がいた。三人が飛空艇発着場に着くと長蛇の列ができていた。


「流石に王都行きは人気があるわね」

「そうだね。乗り切れるかな?」


 ある程度列が進んだところで係員の声がかかる。


「今定員に達したのでこれ以上ご搭乗はできません。明日の朝8時にも王都に行きの便はありますので是非ご利用ください」


 ネイビス達はその日王都行きの飛空艇に乗ることができなかった。


「失敗したわね。明日はもっと早く並びましょう」

「そうだね。ネイビス君。どうするの?」


 ビエラが考え込んでいるネイビスに尋ねると、ネイビスは手を叩いて宣言する。


「今日は今まで狩ってきた魔物を売りに行くぞ!」

「それもそうね。一体いくらになるのかしら」

「楽しみだね!」


 ネイビス達は飛空艇発着場を後にして商業ギルドへと場所を移す。早朝ということもあって商業ギルドは閑散としていた。三人は買い取りコーナーへと向かう。


「いらっしゃいませ。こちらでは素材の買取を行なっています」


 大きなテーブルの向かいに座る係の女性が確認する。


「はい。お願いします。あのー。すごく大量にあるんですがいいですか?」

「ええ。まあ。ちなみにどのくらいありますか?」

「これよ」


 係の女性に尋ねられるとイリスが自身のインベントリを表示して女性に見せる。


 インベントリ

 :

 :

 ・トカゲの尻尾×9999

 ・ドスリザード×2403

 ・トリゲーター×216

 ・レッドトリゲーター×108

 ・ブルートリゲーター×108

 ・グリーントリゲーター×108

 ・キングトリゲーター×12

 ・フロッグ×36

 ・パープルフロッグ×18

 ・イエローフロッグ×18

 ・スリーパー×18

 ・レインボーフロッグ

 ・フロストコング×42

 ・フリーズコング

 ・ゴブリン×42

 ・ホブゴブリン×21

 ・ゴブリンメイジ×21

 ・ゴブリンジェネラル×21

 ・ゴブリンキング

 ・火の魔石B×42

 ・メテオキメラ

 ・巨大アリ×42

 ・巨大赤アリ×21

 ・巨大青アリ×21

 ・巨大緑アリ×21

 ・ウィンドタイガー×42

 ・風の魔石A

 ・ゾンビ×33

 ・スケルトン×22

 ・グール×22

 ・無の魔石B×22

 ・闇の魔石B

 ・エルデ産クッキー×24


 ちなみにトカゲの尻尾が9999個なのは、その値が限界というわけではなくいちいち回収するのが面倒になり、その個数で捨て始めたからだ。また女王アリとストームタイガーはネイビスの『プチメテオ』により跡形もなく焼失している。


「え……」


 イリスのインベントリを見た係の女性が固まる。まるでビエラの『プチフリーズ』を受けて凍結していったゴブリン達のように。


「このトリゲーターとは……。フリーズコングとは……。メテオキメラとは……。すみません。ギルドマスターを呼んできますので少々お待ちください」


 係の女性は足速に裏へと消えていった。少しして眼鏡をかけたちょび髭の似合うダンディーな男が一人やって来た。


「どうもこんにちは。商業ギルドイカル支部ギルドマスターをしておりますロイスと申します。以後お見知り置きを」

「どうも。俺はネイビスです」

「私はイリスよ」

「ビエラです!よろしくお願いします!」


 自己紹介が終わるとロイスは眼鏡をクイっと上下させ、本題に入る。


「聞くところによると君たちは未知の素材を持って来たと。是非拝見させいただきたい」


 イリスが自身のインベントリの表示を見せる。


「ふむふむ。中にはここダンジョン都市イカルのダンジョンに出てくる魔物の素材もあるようですが、確かに未知のものが多い……。うん。これは実に愉快だ!ギルドマスターとしての腕がなる!さぁ、どんどんこのテーブルに出していってください!」


 最初は落ち着いた大人といった感じだったロイスはイリスのインベントリの表示を見るや態度が急変した。イリスは少し引きながらも言われた通り先ずはトカゲの尻尾から出していく。


「これはもしかしてロックリザードの近縁種のリザードの尻尾ではないですか!?それにしてもこんな大量に!一体どこに……。あ!いえ、訊くのは野暮でしたね。冒険者というものは秘密がつきものです」

「ドスリザードだと?この硬質な皮。実に良い素材だ!おや、この魔石の大きさだとCランクですね」

「トリゲーター?なんだこの生き物は!?鳥なのか?ワニなのか?謎が謎を呼ぶ!Bランクの魔石か。それにしてもこの立派な牙は高く売れるぞー!」


 そんなこんなで買取は進んでいった。興奮気味に語り続けながら査定を続けるロイスと半分上の空で頷き続ける三人の戦いは一日中続いたとか。


「合計で57,806,900ギルです。いやー。実に有意義な時間でした!それにこのイカル支部での取引額過去最高額ですよ!」


 白金貨57枚、金貨80枚、銀貨69を三人は受け取り上手く分けてそれぞれのインベントリにしまった。


「またのご来店をお待ちしています」

「は、はい……」


 ネイビス達は商業ギルドを去ると重い足取りで飛空艇発着場に一番近い宿屋に向かった。


「はぁー。疲れたわー」

「私も疲れたよ」


 宿の部屋に入った瞬間イリスとビエラはベッドに倒れ込む。ネイビスはそっとベッドに腰掛けて呟く。


「いよいよ明日か。王都」

「ね!楽しみ」

「明日は朝一で飛空艇に並ぶわよ」

「そうだな。もう寝るか」


 三人は寝る前のキスをしてから川の字で寝る。ビエラとイリスの二人に挟まれながらネイビスはこれからの計画に頭を巡らせてなかなか眠れなかった。

 翌朝、イリスに叩き起こされてネイビスは起きる。寝ぼけ眼のまま飛空艇発着場に向かい、できていた列に並ぶ。三人は今回は無事に乗ることができた。今三人はデッキで風に吹かれている。


「卒業したのが3月5日だから約三ヶ月と半月振りだね」

「もうそんなに経ったのか」

「ほとんどダンジョンを周回していただけだったけれどね」

「それもそうだな」

「ねぇ、見て!鳥さんだよ!」


 ビエラが指差す先には一匹の白い鳥が空を飛んでいた。その鳥は三人を王都へと誘うかのように力強く羽ばたいて王都の方へと飛んでいった。

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