39 隠しエリアin風林山
三人は風林山の頂上へと続く登山コースを歩いていた。周囲は竹林で、時々レッサータイガーという魔物が出てきて襲ってくる。レッサータイガーは小柄な虎で、俊敏な動きで襲ってくるが、大抵はネイビスの『プチマジックミサイル』かビエラの『プチホーリー』で迎撃していた。レッサータイガーが運良くその二つの魔法を避けることができても、最期に待っているのはイリスの『魔獣斬り』だった。特攻効果の乗る剣士系の第三スキルの威力はかなり強力だ。
ちなみにネイビスの『プチマジックミサイル』の威力は全然プチではない。『プチマジックミサイル』が当たったレッサータイガーは爆死する。
「今まで登ってきた山の中で一番優しいわね」
「大雪山は寒かったし、ドラゴンズボルケーノは暑かったもんね」
「だが眺めは微妙だな。林ばっかで景色が全然見えない」
相変わらず景色を気にするネイビスだった。
「それより隠しエリアの情報教えてよ」
「うんうん!」
「仕方ないな。出てくるのはウィンドタイガーだ。魔法防御力が高くて俊敏性が高い。まぁ、多分イリスの雷鳴剣と『魔獣斬り』があれば余裕だな」
「へー。で、ボスは?」
「ストームタイガーだな」
「てことは『プチストーム』を使ってくるの?」
ビエラは今まで倒してきたフリーズコング、メテオキメラの名前の共通点からストームタイガーの使ってくる魔法を予想した。ネイビスは笑って「ああ」と頷いた。
「大翠魔導士がレベル99で覚える魔法スキル『ストーム』の下位互換が『プチストーム』だが、今までやってきて分かると思うが、恐らくかなり危険だと思う」
「そんなに?」
ネイビスの顔が次第に曇り始める。それに気づいたイリスが聞き返した。
「ああ。そもそも魔法を使ってくる魔物自体この世界では危険視されているよな?」
「そうね。最初の頃は属性スライムすら避けてたものね」
「懐かしいね」
イリスの「属性スライム」という言葉にビエラは昔を懐かしむ。そんなことはお構いなしにネイビスは話を続ける。
「要するに、魔法は使う分にはいいが、使われると厄介だってことだ。見ただろ?メテオキメラの使った『プチメテオ』の威力を。フリーズコングの『プチフリーズ』でさえ『マジックウォール』があってもかなりのダメージを受けたんだ。『プチストーム』も侮れない」
ネイビスの説明を聞いた二人は首を縦に振った。
「『プチストーム』ってどんな魔法なの?」
イリスが尋ねるとネイビスはまた語り始める。
「おそらく竜巻を放つ魔法だな。だが厄介なのはその竜巻があちこちを動き回るところだ。『プチフリーズ』は全方位魔法だから単純に敵から遠ざかればいい。『プチメテオ』は落ちてくる火球を避ければいい。だが『プチストーム』の挙動は読めない。それが一番厄介だな」
「じゃあどうするの?」
「ビエラ、いい質問だ。ようは敵に『プチストーム』を使わせなければいい。だからボス戦は短期決着だ。例え敵が『プチストーム』を使おうとしても攻撃し続ける覚悟で行くぞ!」
「「おー!」」
その後三時間ほど歩いて三人は風林山の頂上へと辿り着く。これから三人が向かう隠しエリアは実はもう既に見つかっていたりする。その名も『虎穴』。その洞窟の中に強力な虎の魔物が住み着いていることが知られていて、掲示板によると今まで『虎穴』に挑んで死んでいった者は多いという。
それもそのはずだ。何故なら大雪山やドラゴンズボルケーノ、風林山にある隠しエリアの洞窟に出てくる魔物の推奨レベルは70以上なのだから。人類最高到達レベルが67のこの世界では誰一人挑んで無事に帰れる者はいなかった。
「この道ね」
三人は頂上付近に建てられた看板を見て、『虎穴』へと続く道を見つけた。三人がその道を下り始めた時三人に声がかかった。
「お前達、まさか『虎穴』に行くのか?」
三人が振り返ると一人の男性と一人の女性が心配そうな眼差しで三人を見ていた。
「はい。用があるので」
「やめておいた方がいいわ。『虎穴』に行った人は誰一人帰ってきていないのよ?」
「そうだぞ。俺達は時々こうして『虎穴』に向かう命知らずを止めているんだ」
そう言って二人はギルドカードを見せてきた。
名前:ギルガルド
年齢:37
性別:男
職業:剣豪Lv.45
ダンジョン攻略履歴
Cランクダンジョン『蟻塚』3年前
Fランクダンジョン『ウサギパラダイス』3年前
Fランクダンジョン『ウサギパラダイス』3年前
:
:
名前:アイーナ
年齢:35
性別:女
職業:弓使いLv.42
ダンジョン攻略履歴
Cランクダンジョン『蟻塚』3年前
Fランクダンジョン『ウサギパラダイス』3年前
Fランクダンジョン『ウサギパラダイス』3年前
:
:
「Bランクの俺達も一回『虎穴』に入ったことがあるんだ。あれはレベルが違う。ここらにいるレッサータイガーの比じゃねぇんだ」
「そうなの。最低でも私達と同じBランクはないと許可できないわ」
「なら俺達のマギカード見ます?」
名前:ネイビス
年齢:17
性別:男
職業:魔法使いLv.55
ダンジョン攻略履歴
Cランクダンジョン『蟻塚』昨日
Dランクダンジョン『ゴブリンの巣窟』4日前
Eランクダンジョン『カエル沼』8日前
:
:
名前:イリス
年齢:17
性別:女
職業:剣士Lv.47
ダンジョン攻略履歴
Cランクダンジョン『蟻塚』昨日
Dランクダンジョン『ゴブリンの巣窟』4日前
Eランクダンジョン『カエル沼』8日前
:
:
名前:ビエラ
年齢:17
性別:女
職業:僧侶Lv.47
ダンジョン攻略履歴
Cランクダンジョン『蟻塚』昨日
Dランクダンジョン『ゴブリンの巣窟』4日前
Eランクダンジョン『カエル沼』8日前
:
:
「え!三人ともBランク以上なの?しかも君はAランク!」
「本当なのか?もしそうなら止めることはできないな」
三人のマギカードを見て二人は態度を一変させた。
「それにしてもこの若さでそのレベルか。相当努力したんだろうな……」
「そうよね。しかも、マギカードってことはあの勇者学院の卒業生なのよ」
「あのー。そろそろ行っていいですか?」
ネイビスが二人きりで話し始めた二人に尋ねると、二人はそれに気づいて返答する。
「ああ!止めて悪かったな。死んだりするんじゃねぇぞ!」
「是非後で『虎穴』の奥に何があったか教えてちょうだい!」
「分かりました……。では」
ネイビス達はやっと二人の拘束から解放されて来た道とは別の方向に伸びる道を下っていった。十分程歩いたところで道は洞窟の入り口にたどり着く。その入り口には『危険!立ち入り禁止!』の文字が書かれた看板が何個も立っていた。
「いかにも危なそうな場所ね」
「そうだな。まぁ、これから入るんだけどな」
三人は看板の忠告など無視して『虎穴』の中へと入って、洞窟の奥へとズカズカ進んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます