35 隠しエリアinドラゴンズボルケーノ

 三人は飛空艇に乗り大陸東端の町ロッカに来ていた。今は宿屋に泊まることなくドラゴンズボルケーノを目指して歩いている。辺りは草木の生えていない殺風景な岩場が続いていた。


「隠しエリアってあのドラゴンズボルケーノにあるのよね?」


 イリスが前方のドラゴンズボルケーノを指差してネイビスに訊いた。


「ああ、そうだな」

「ドラゴンかぁ。倒せるかなぁ?」


 心配性のビエラはこれから登るドラゴンのいる活火山、ドラゴンズボルケーノを見て怖気付いていた。


「大丈夫、大丈夫。いるのはレッサードラゴンだけだから」

「それでもドラゴンには変わりないよ?」

「そう言われたら否定できないな」

「平気よビエラ。私が守ってあげるから」


 イリスが雷鳴剣を構えてビエラを安心させようとする。


「それに、隠しエリアにいる魔物の方がレッサードラゴンよりも強いからな」

「え?ドラゴンよりも強いの?」

「というか、フロストコングの方がレッサードラゴンよりもはるかに強いからな?」

「えー!そうだったの!」

「ああ。ただドラゴンは空を飛ぶのが厄介だな」

「そうね。剣士の私の出番は無さそうね」

「それなら任せて!私が『プチホーリー』で撃墜するから!」

「それは頼りになるな」


 話しながら歩いていると日が暮れた頃に三人はドラゴンズボルケーノの麓までたどり着いた。


「今日はここでテントだな」

「そうね」


 掲示板情報によれば麓はギリギリドラゴンの縄張りに入っていないそうだ。三人はいつものようにテントを用意して早めに寝ることにした。

 翌朝、三人はいよいよドラゴンズボルケーノを登り始める。ゴツゴツした岩肌を登っていく彼らの上空には何匹かのレッサードラゴンが飛び回っていた。


「襲ってこないね」


 上空を旋回するレッサードラゴンを見ながらビエラが呟いた。


「そうだな。もしかしたら俺らの実力を分かってるのかもな」

「なんだか味気ないわね」


 レッサードラゴンは明らかに縄張りに侵入してきた三人に対して警戒していたが、彼らが隠しエリアのある火口に着くまで襲ってはこなかった。三人は火口の縁に立って溶岩が煮えたぎっている火口を見下ろした。


「流石に暑いわね」

「そうだね。もう汗びしょびしょだよ」

「今からさらに暑くなるぞ」


 三人は火口の内側にできた人一人がギリギリ通れるくらいの小道を通ってさらに溶岩に近づいていく。


「ここから先が隠しエリアだ」


 三人は螺旋階段のように火口の内側を下に行く道を下って溶岩スレスレの岩場にたどり着いた。目と鼻の先にある溶岩から熱気が押し寄せてくるその場所には大きな横穴が空いていた。


「また洞窟?」

「そうだぞ。ちなみに残りの一つの隠しエリアも洞窟だぞー」

「錬金術師さん、洞窟好きだったのかな?」

「それくらいしか隠し場所が無かったんだろ」


 三人は横穴を進んでいく。溶岩が道に沿って横を流れているので洞窟内は明るかった。少し歩いたところでビエラがネイビスに訊く。


「ここは何が出るの?」

「そう言えばまだ言ってなかったな。ファイアボムって言う宙に浮く火の塊のような奴だぞ」

「そうなの。なんか蒼魔法が効きそうね」

「その通りだぞイリス。この隠しエリアはビエラの『プチフリーズ』でゴリ押ししていく。ビエラのMPが100を切ったら、今度は俺が蒼天の指輪を付けて『プチフリーズ』だな」

「りょーかい」


 その時二体のファイアボムが溶岩の中から出てきて、三人の前に姿を現した。二体のファイアボムは小さな火の玉を飛ばしてくる。


「『マジックウォール』!ビエラ、行け!」

「分かった。『プチフリーズ』!」


 二体のファイアボムの放った無数の火の玉は『マジックウォール』に吸い込まれて消えた。火の玉が来なくなるのを確認するとビエラが前に出て『プチフリーズ』を唱えた。その途端洞窟内の温度が一転する。ファイアボムはみるみるうちに小さくなって弱まっていき、火の魔石になって消えた。ビエラは魔石の元へと向かって二つとも拾い上げてジロジロと見つめている。


「私魔石初めて見るかも」

「そうだな。ツノウサギとか羊とか狼とか、いつも丸ごと納品してたもんな」


 魔物の体内には魔石が必ずある。魔石の大きさがその魔物の強さに比例していて、ファイアボムの魔石は拳くらいの大きさだった。火の魔石で等級はBランク。これはBランクダンジョンに出てくる魔物が持っている魔石に相当している。

 ゲームでは例えばツノウサギを倒すと『ツノウサギの角』『ツノウサギの毛皮』『ツノウサギの肉』『無の魔石F』のうち0から4個のランダムの個数でランダムのアイテムをゲットできる仕組みだった。そこにLUKが関わっていたのだが、どうやらこの世界では全てもれなくゲットできてしまうようだった。

 もはやLUK先輩は日常的な運の良さ程度にしか意味をなしていなかったりする。

 イリスが魔石をインベントリに仕舞って三人は先に進んだ。ちなみに今イリスのインベントリには大量のトカゲの尻尾と数百匹のトリゲーターと数十匹の大ガエルと数十体のフロストコングとフリーズコング一体と数十体のゴブリンが眠っていたりする。

 その後も二、三体で出てくるファイアボムを『プチフリーズ』で火の魔石Bに変えながら三人は洞窟の奥へと進んでいく。火の魔石Bが30個ほど貯まった時三人はイリスとビエラのレベルが50になっていることに気づく。イリスとビエラはそれぞれ第三スキルを覚えていた。


「私『リジェネ』覚えたよ!」

「私は『魔獣斬り』を覚えたわ」

「それはいいな。このままどんどんいくぞ!」


 その後も十体ほどのファイアボムを倒して三人は大きな空間に出る。入り口以外四方八方を溶岩に囲まれた陸地があり、そこには一体の火を纏った巨大なキメラが鎮座していた。



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