08 アクセサリーショップ
ネイビスはただただ驚いていた。
「こちらの銀塊が全部で510,000ギル。金塊が全部で1,300,000ギル。ミスリルの塊は2,000,000ギルになります」
ここはロコルの町の商業ギルド。ネイビスはここ以外に売る場所が思いつかなかったためゲームで設定されていた値段より低くなければ売ろうかなと軽く考えていた。しかしここで嬉しい誤算があった。この世界ではゲーム内よりも銀、金、ミスリルの価値が桁外れに高かったのだ。
「合計で3,810,000ギルになります」
百万ギルに当たる白金貨3枚と一万ギルに当たる金貨81枚が支払われた。ちなみに硬貨の価値は次のようになる。
鉄貨:1ギル
銅貨:10ギル
銀貨:100ギル
金貨:10,000ギル
白金貨:1,000,000ギル
「じゃあ一人白金貨一枚、金貨二十七枚取ろうか」
カウンターに積まれた金貨や白金貨を三人は黙々と手に取りインベントリに入れていく。
「白金貨なんて生まれて初めて見たよ」
「私も。いつか将来成功して手に入れようって思ってたけどこんなに早く手に入れられるなんて思っても見なかったわ」
「俺は予想以上に高く売れて驚いたな」
商業ギルドを出るなり三人はそれぞれの感想を言う。ネイビスはインベントリを確認してにやける。
インベントリ
・1,274,200ギル
・マギカード
「これでしばらくはお金の心配はなさそうだな」
「そうね。飛空艇も乗れそう」
三人は町の北にある飛空艇発着場まで歩いていく。発着場の看板には『12時発イカル行き:30,000ギル』の文字があった。
「早く来すぎちゃったわね」
「そうだね。まだ二時間もあるよ」
「なら、せっかくお金も貯まったんだしアクセサリーショップでも行くか?」
「いいわね」
「私も賛成」
ネイビスの提案が通り、三人は発着場まで来る道で見かけたアクセサリーショップに入る。ちなみにこの世界には防具の概念はあるが、機動性を損なうためあまり装備する冒険者はいない。そもそも『ランダム勇者』の世界には防具が存在しないのも少なからず影響しているだろう。『ランダム勇者』では二つ装備できるアクセサリーだけがステータスに追加効果をもたらすのだ。
店内にはネックレスや指輪、バングルなどがたくさん置かれていた。ネイビスは前世の記憶を思い出し、一つのアクセサリーを探していた。
「ロコルリング、ロコルリング……。あった!」
ロコルリングとは『ランダム勇者』の中でロコルの町のアクセサリーショップで一つだけ買うことのできた中々有能な指輪型のアクセサリーだ。効果はHP+30とSTR+10。
スライムの森の隠しエリアで入手したバングル類には劣るものの、序盤ではすごく役に立つ。
一つだけ難点があるとすればかなり値段が高いのだ。お値段なんと300,000ギル。もちろんネイビスは買うことにした。
「これください」
ネイビスが店のカウンターにロコルリングを置き、椅子に座る老婆に語りかける。
「ほう。いい腕輪だノォ。お前さんはただの冷やかしかと思っとったが、どうやら違うらしい」
老婆はネイビスの付けているミスリルバングルを見て「クックック」と高笑いする。
「300,000ギルだよ」
ネイビスは『ランダム勇者』の中だとロコルリングはもう少し安かった気がしていた。だが、この世界の物価はゲームの頃とは違うと今朝学んでいたので疑うこともなく支払いを済ませる。残金は974,200ギル。
ネイビスが購入したロコルリングを右手の人差し指に嵌めていると、ビエラが声をかけた。
「ねぇ、ネイビスくん!私このネックレスと指輪買おうと思うんだけどどうかな?」
ビエラが手に持っていたのは魔晶石のネックレスと銅の指輪だった。魔晶石のネックレスはMP+30。銅の指輪はINT+15。
「いいんじゃないか?僧侶見習いにぴったりのアクセサリーだ。それならダンジョンの中でも役に立つと思うぜ」
「うん、分かった!これ買うね!」
ビエラも老婆の元へ向かい二つのアクセサリーを買った。
「ねぇ、ネイビス君は何買ったの?」
「このロコルリングっていう指輪」
ネイビスは自慢げに右手の人差し指に嵌まる独特な形の銀色の指輪をビエラに見せびらかす。
「へぇー。カッコいいね。私も指輪買ったからネイビス君と同じ場所に付けようかな」
そう言ってビエラは自身の右手の人差し指に銅の指輪を嵌める。
「ネックレス付けてあげよっか?」
「え、いいの?じゃあお願い……」
もじもじとするビエラのことはお構いなくビエラの首にネックレスをつけるネイビス。そんな二人を見てイリスはため息をついていた。
「あなたたちねぇ。カップルじゃないんだからイチャつくのはやめなさい?」
「か、カップル!?」
「別にいいだろ」
ビエラは頬を染めて俯く。対してネイビスはイリスに視線を向けて言う。
「嫉妬かな?」
「な訳ないでしょ!まったく!」
その一部始終を眺めていた老婆はやはり「クックック」と高笑いするのだった。
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