おまけ
オオカミ令嬢と冬の一日(全3話)
第1話 ぷくぷくディオネだ!
「ぷくぷくディオネだ!」「キュキューイ!」
と私は声を上げると当然のように、その
ディオネは、この冬の間にすっかりと
(お城で、お菓子ばかり食べているからだね!)
「
ディオネは逃げ出すと、お兄ちゃんの後ろに隠れた。
(
どうやら、私が手を出せない安全な場所を心得ているようだ。
「嫌がっているだろう――
とお兄ちゃん。ディオネは『ベー』と舌を出す。
「だって、
私こと、クタルに反省の文字はない。
ピンと
ここは私の大好きなお兄ちゃん『リオル・ルーグ』の執務室である。
黙っていても、お茶とお菓子が出て来て、
「仕事の邪魔だよ!」
とディオネ。今日の彼女は機嫌が悪いらしい。
(いつもはもっと仲のいい姉妹なの! ホントだよ?)
「女の子に『太っている』と言うからだ……」
お兄ちゃんは――ハァ――と溜息を
そして、ディオネの頭を優しく
(わふ?)
「『太っている』なんて言って無いよ!」
私は言い返す。
「ぽっちゃりしてるとか、コロコロしているとか、ぷくぷくしてるとか――」
「キュイキュイ」
可愛いよね!(わふん!)――と私は胸を張った。
『……』
アレ? 二人の視線が
(冬だからかな?)
「すまないな……ストレスで、いつもよりハイになっているようだ」
お兄ちゃんはディオネに
「うんん――師匠の
彼女はそう言って、首を横に振った。
――わふ?
どうやら、私だけが仲間外れのようだ。
(
お兄ちゃんは書類を整理していた手を
そして、そっと
――わふん!
私は思わず
さっきまで肩に乗っていた白い毛玉こと『キューイ』は、早々に私から離れた。
お兄ちゃんが私の髪を優しく
それだけで、私は嬉しくて――く~ん――と鼻を鳴らしてしまった。
「ディオネは今、【
「知ってるよ!」
お兄ちゃんが魔術で作り出した植物の木の実を食べているんだよね!
【
けれど、魔術師には【
毎日それを食べたお陰で、ガリガリだったディオネは、すっかり豊かになった。
「モチモチで
私はそう言って、お兄ちゃんの胸元に顔を
お兄ちゃんは
「すまないな――ディオネ……」
そして、また
「うんん、リオル
師匠の
キューイはそんな彼女の足元に移動すると、
「キュイキュイ」
とおねだりをする。きっと『ご飯』だ。
最近はディオネに食事を
ディオネはそんなキューイを
「仕方ない――少し
とお兄ちゃん。私から離れると、
「イストルを連れて、中庭に来い」
私に命令する。
「わおん!」
私は
教会で用意してくれた聖衣は動き
青と白を基調とした
ただ、この国で耳と尻尾を隠す必要は無いので、それは助かっている。
「ああっ! 待って――」
とディオネ。
「『聖女』で『お姫様』なんだから――」
そんな
「大丈夫! 見付からないようにするから――」
私は窓から飛び出すと、屋根へと
「分かってないよね……」
ディオネがそんな事を
季節は冬。外は一面の銀世界だ。
今年は大量の【
その
「えっと、イストルは――」
彼は最近出来たばかりの『少年騎士団』に入った。
今の時間帯は、訓練で
任務といっても――大人の騎士と一緒に街の見回りをしたり、街の住民から苦情を聞いて回ったり、お城で警備の
「ちょっとくらい、借りてもいいよね?」
(私、聖女様だし、この国のお姫様だし――)
屋根の上から見回すと、丁度、雪かきをしている集団を見付けた。
人手が
――トサッ!
屋根から飛び降り、静かに着地すると、
「借りるね」
私は団長らしき人に声を掛けた。
「わっ! 姫様⁉」
突然、現れたの私に
慌てて
「な、
私はイストルを
「弟!」
と元気に返事を返した。
こんな所を見付かると、礼儀作法だの、勉強だの、と部屋に監禁されてしまう。
「コラッ! クタル
イストルが暴れる。
「フフッ、久し振りに大好きなお姉ちゃんに
――わふん! ういやつめ!
「違う! 絶対違う!」
私は照れるイストルを
(おっと、その前に……)
「私の事は見なかった事にしてね☆」
ポカン――としている団員達に告げた。
これでよし! ディオネに小言を
私は
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