第5話 賢者の鎧

「アルバード様、アルバード様。ギュリオン殿が帰られましたよ」


 レオンは肩を落とすアルバードに声をかける。


「レオン君よ……すまぬ。大の大人が、なんと情けない。私はなんと無力か!」


 唇を噛み締めるアルバード。

 好き勝手に国を弄られ、娘までも連れ去られてしまった。

 悔しくないわけがない 


「そんな。アルバード様は、ずっと賢明な判断をくだされています。それに、これは私のわがままみたいなものです」


 生活が保障されているのなら、自分が帝都に行く必要なんてないのだ。


「ですから、自分でお金を用意します。そして魔動鎧を用意して、フェリア様のもとに」

「……ありがとう、レオン君。もちろん、私も色々と考えてみる。それにしてもフェリアは良い友人を持ったな」


 会議室の壁に掛けてあった絵画を見て、アルバードはしみじみとした顔をする。

 

「我が先祖である勇者ヴェルは、魔王を倒すため多くの仲間を得た。そこには君の先祖である賢者リゼルもいた」


 絵は、建国神話の一節を描いたものだ。

 勇者たちが仲間と共に、魔王城へ今まさに乗り込もうとしている場面。


「──うん?」


 アルバードは絵を見て何かを思い出したのか、声を上げた。


「そうだ、鎧──鎧と言えば! この王都は、もともと魔王城があった場所。勇者ヴェルは仲間と共に巨大な鎧を作り、魔王城の城門をこじ開けさせた。門番たる古の竜を倒したのもその鎧」

「賢者リゼルが魔力を用い、動かしていたという鎧ですね」

「どういう構造かは知らぬが、何か使えるやもしれぬな……だが、今となってはどこにあるか」

「ならば、私が探してみます。王都には古くからの地下水道が多い」

「私も探してみよう。それだけ巨大なものなら、何かしら手掛かりがあるはずだ」


 アルバードの言葉にレオンも頷く。


 ──手を加えれば、魔動鎧として使えるかもしれない。それがあれば帝都に。


 レオンは、その日から古代の鎧を探すため行動するのだった。

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