Episode Ⅺ (2-5)
一年い組の教室に集まった生徒達。
欠席する事なく全員が席に着いていた。
「みなさん。おはようございます」
「\\\\\\おはようございます‼ //////」
担任の挨拶に元気に応えた。
朝のホームルームは今日の事だけでなく、近くに行われる行事についても話がある。
「さて、一か月後に毎年恒例の体育祭が行われます」
中学に入って初めての学校行事。
アテナやい組生徒達は楽しみに聞いている。
「体育祭は、中高合同で二日間行われます。開催までの一か月は体育祭練習期間になるので、皆さん頑張って練習しましょう」
「\\\\\はい! /////」
しかし、アテナは大事な事を忘れていた。
無関係者の気分でいた彼女は自分の中で痛い目に遭う事になる。
「どうしよ~」
小声でも治める事のできない気持ち。
気になったミツキは休み時間に話しかける。
「どうしたの? アテナ」
そして、胸の内を明かす。
「私。運動が苦手なのに」
アテナは自分が陰光大学教育学部付属中学一年い組の生徒である事をあの瞬間だけ忘れていた。
「ここもどこも、体育祭ってあるんだな~と少々絶望中」
彼女の気分は話を進めるごとに小声になる。
そして、話していても全く聞こえなくなる。彼女の精神は暗黒と化した。
運動部を兼任しているミツキ。
根っからのスポーツ少女に共感はできなかった。
だが、彼女の気分をこのままにしておくのは、周りに影響がありそうだと思う。
「まあ~。心配な事とか、苦手な事があれば助けるから」
「ありがと~」
ミツキは自分の感覚でしか話す事ができなかった。
しかし、できる限りの支援をしようと約束する。
生徒達は運動着に着替え、体育の授業を迎える。
担当教師が欠員の確認をした。
「はい。朝に説明があったと思いますが、体育祭の練習をこの一か月、集中的に行います」
陰光大学教育学部付属陰光中学・高校の体育祭。
それは二日間中高のみならず、大学の施設も使い行われる。
体育館や校庭など多くの学校施設が会場だ。
種目は、中高共通で実施される。
玉入れ、サッカー、野球、バレーボール、射撃、カーリング、長距離走、短距離走、リレー。 多種多様の種目は団体と個人で日程を分散して設定されている。
淡々と説明を進める教員。
「あっ! 皆聞いた? 今回は提供企業から賞品がでるそうだよ」
「えっ? それって、高級肉とかですか?」
「いや、普段は飲食物とかだけど。今回はアクセサリーらしいよ」
「なーんだ」
体育教師の言葉に食べ盛りの慧は残念に感じる。
その反応は他に期待していた生徒達の多くも思った。
企業提供が偶にあるだけでも、モチベーションも上がる。
それが食べ物ではないとなれば、生徒達の落ち込みは一入。
「でも、それも高級品らしいからいいんじゃない? 君達が優勝しないと賞品はもらえないから、ここで練習を頑張るよ」
「\\\\\\は~い//////」
賛否両論あるが、生徒達は体育祭の準備を始める。
陰光大学教育学部附属校の体育祭は毎年、中学・高校の合同開催で行われる。
中学はクラスがい組、ろ組、は組、に組、ほ組、へ組、と組。
合計七クラス対抗で争われる。
生徒達は出場する種目の決定の為に話し合っていた。
時間の半分で決まった。
生徒たちは自主的に練習をしていた。
アテナ、ミツキ、エレンをはじめとする女子生徒が集まった。
体育委員と一緒にミツキは近いアテナに質問する。
「バレーの経験ってある?」
「それが〜授業でやった程度で、全くした事ないよ」
恥ずかしがりながら答えた。
「OK! じゃあ、基本なところから練習を始めよう」
一人一種目の出場条件。
運動の苦手なアテナはバレーボールに専念する事になる。
運動神経が良いソフトボール部員のミツキはアテナ達と一緒にバレーボールに出場する。
他に女子は六人出場する。
一クラスの人数が一般的な学校と比べると少ない付属中高。
一つの種目に出場する生徒数は少ない。
一通り出場する種目が決まった。
早速、女子バレーチームは練習を始めた。
「それじゃあ、ボール上げてね。アテナちゃん」
「は~い!」
上げたボールにアテナは打ち上げる構えをとる。
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