第22話 お味噌汁

(たべたい)

声にならないけれど、口の動きで食べたいと希望されたカンさん


肺炎を繰り返して、食事が止められてしまって数か月


先生にカンさんのご希望をお伝えしたら

「口腔ケアの時に、薄めた甘いジュースを使ってあげて

急にそのままの濃度にしたら、ヒリヒリしてしまうから、

最初は薄めてね。慣れてきたらそのままでもいいよ。

味噌汁でもジュースでも、好きなものを使ってみて。」


さっそく実行すると、とても喜ばれたカンさん


インスタントのお味噌汁を持ってきて、お見せした

いままでにないくらいの満面の笑み

袋の味噌汁椀と中身の味噌汁の写真をうれしそうに

しばらく眺めていた笑顔の姿が心に残る


毎日数回、旅立たれた日まで好きだったお味噌汁で口の中を拭かせていただいた


終末期の口腔ケア

いろいろなものを使えることを教えてくださった先生との出会いがもっと早ければ

いまになってそう思う


いままでは、水かミント味ばかりだった

食べたくても、食べられない方にずっと水かミント味だけのケア


もっと学べばよかった

いままでお見送りさせていただいた方に

これでケアできればとただただ悔やむ

遅すぎる後悔














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