湯気の記憶

作者 悠木 柚

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★★★ Excellent!!!

 子どもの頃の記憶は、思ったよりも鮮明に思い出せるものです。
 特に、あの日と変わらない『赤いきつね』と『緑のたぬき』を見つけてしまったらね。臨場感たっぷりに目の前に映し出されますよね。

 思い出の中に溢れるのは、日常の些細な出来事ばかり。
 でもそんな一つ一つが、なぜか大人になると愛おしくてたまらなくなる瞬間があります。その時、ようやく気づく家族の気持ち、温かさ。

 大人になって、一人で乗り越えなくてはならない時があっても、一人で抱え込まないで! 頭を空っぽにして銀の蓋をめくってお湯を注いでみてください。
 きっと湯気の向こうに、あなたを支えてくれる物語が蘇るはず。
 一人だけど一人じゃない。

 心も体もほっこりできるお味。お勧めです。

★★★ Excellent!!!

当たり前の日常が、当たり前じゃなくなった時、初めて人は、その尊さに気づく。
それが実は、とてつもなく得難いものだったんだと、気づく。
それを華やかにするための家族の、本当にささやかな気遣いや根回しに、その優しさに、気づく。

決して心地いいばかりではない今の現実の中で垣間見る、ほんの小さなきっかけ。
例えば、蓋と縁の隙間から漏れる湯気。
宝物みたいな追憶を立ち上らせてくれるきっかけは、実は、生活の中に溢れているのかもしれない。

そう思って、暖かい追憶を求めて、部屋の中のそこここを見回してしまうような、心に染みるものがたり。

★★★ Excellent!!!

時を経て、子供の頃には理解できなかった、反発さえ覚えた親の愛情に気づいた時、本当の意味で『大人になった』と言えるのかもしれない。

たった一人の空間で、湯気の中の麺を啜る。
解れた親の意図が温かく腹に収まる時、また一歩前へ。
都会の片隅のブレイブ・ストーリー。

★★★ Excellent!!!

大好きな『赤いきつね』はいつも妹のもの。「僕」はきつね派なのに、いつもたぬきを食べていた。
大人になって独り立ちした今、好きなものを好きな時に食べられる。でも、僕が選ぶのは……

今だからこそわかる、両親の想い。辛い仕事に追われる日々を支えてくれる、数々の記憶。それらを呼び起こしてくれるのは、あの味。
「赤いきつね」と「緑のたぬき」がセットだったように、懐かしい味と大切な記憶はセットになっているのでしょう。
このままCMになっても不思議じゃないくらい、素敵な作品です。

★★★ Excellent!!!

成長して独り立ちし、自分はユニークな存在で何の影響も受けるつもりはない。大人になり始めの頃に必ず通るであろう束の間のナルシズム。しかし、数ある記憶の中には消すことのできないファクターがいくつかあるものだ。その一つが「家族との思い出」だろう。
独りになって気づく家族団欒のほっこりとした感情……それを浮かびあがらせるアイテムが「赤いきつね」と「緑のたぬき」であり、湯気と共にふわりと擽る出汁の香りである。

作品に和んだ後、是非とも「赤いきつね」か「緑のたぬき」を食して欲しい。もしかしたら、あなたも心と目に沁みる家族との一風景を思い出せるかもしれない☆

★★★ Excellent!!!

 騒がしい家族との日常を好んでいた主人公。テーブルの上に置かれたカップ麺が二つ。主人公は、いつも妹と取り合いになり、ジャンケンでどちらを食べるか決めていた。
 「赤いきつね」と「緑のたぬき」はセットでしょ? という謎の決めつけで買ってくる母。もしかしたら、母が兄妹喧嘩をさせて、家族の楽しみを増やすために、わざと二種類をワンセットで買ってくるのでは?
 
 家族それぞれの想いと、その中心にあった二種類ワンセットのカップ麺。
 賑やかで、楽しくて、温かくて、幸せな雰囲気が伝わってくる一作。

 是非、御一読下さい。