第85話 川で遊ぶのって、幼い頃を思い出すよね?
サラサラと清水が流れる川
下流よりの中流のため、適度な流れの速さとなっている
和「、、、何度来ても綺麗だなぁ。」
澪「はい、あまり人の手が入らない地方だからこその風景ですよね。」
和「そうだね。」
此処は特に県や市から指定されているわけではないが、それでも美しい景色が広がっている
だからこそ地元民に愛され、俺達のように帰省した人にも人気なのだ
和「今は人がいないみたいだね、、、ラッキーだ。」
澪「では人目を気にせず楽しめますね。」
和「早速入ろう。」
足を水に入れようとした俺の手を彼女が掴む
澪「待ってください、準備運動をしていません。 最近では浅い川でも事故が起こる可能性があるそうです。 私達は中学生ですが、保護者がいないこの状況では慎重に行きましょう。」
和「なるほど。 了解しました、澪隊長!」
映画のマネで敬礼する
澪「それでは屈伸からいきますよ、和樹隊員?」
えっ、ノッてくれるとか可愛いッ
和「体操が終わったということで、和樹、行っきま〜す!」
巨大モビルスーツ操縦士のモノマネをしてみるが、言うほど深い川でもなし、普通に跳んで入っただけだった
和「あ、冷たくて気持ち良い。 澪さんもおいでよ!」
澪「今行きます、、、きゃっ、本当ですね。 冷たくて気持ち良いです。」
、、、ふと、悪いことを思いついた
映画とかアニメでよくある、相手に向けて水をかけるやつ
アレをやってみたい
和「ねぇ、ちょっとこっち向いて。」
ふふ、俺が何を企んでいるとも知らずに、、、今dワプッ!?
和「な、澪さん!?」
俺が水をかけるより早く、彼女は水をかけてきた
澪「フフ、驚きました?」
和「、、、気配切りってやつ?」
澪「いえ、川にいる状況で何の脈絡もなくいきなり体の向きを変えろと言われたならば、コレしかないと予測しましたが、、、和樹くんの手を見るに、予想通りだったようですね。」
クッ、予測されたか、、、
ここで諦めても良いのだが、負けたまま終わるのも何か嫌だ
和「仕返しだっ!」
澪「キャッ!?」
やってやったぜ、、、アレ?
顔を手で覆ってる、、、
澪「痛い、、、勢いが強すぎですよ、、、」
和「ッ!? ご、ゴメン!」
かける勢いが強すぎたのか!?
もしや誤って石も一緒にかけてしまったのか!?
何やってんだよ、俺!
遊んでたつもりでも彼女の顔を傷つけたなんてクズのすることじゃないか!
今ならまだ対処できる、急いで駆け寄rワプッ!?
澪「フッフ〜ン、また引っかかりましたね。」
顔を振り、前を向くと、笑顔な澪さんが立っていた
笑みを浮かべるその顔には、傷一つ無かった
澪「まだまだ甘いですよ、、、どうしましたか?」
和「、、、良かった、、、澪さんに怪我がなくて。」
澪「な、泣かないでください! 私も冗談が過ぎました!」
涙をこぼす俺の頭を、彼女は抱きかかえる
、、、たかが遊び、たかが水で何をそこまで焦るのか、と思う人もいるのだろう
しかし、誰よりも何よりも大切にしたいと思う澪さんを俺自身が傷つけたなんてことがあったら、それこそ俺が耐えられない
俺は脆い
澪さんという幸せを知ってしまった今、彼女にかなり依存してしまっている
俺は弱い
さっきのことでも泣くほどなのに、本当に彼女に怪我をさせてしまったら罪悪感で押しつぶされる
澪「ごめんなさい、、、貴方が私を大切にしてくれていることは重々承知していたはずなのに、、、悪ふざけが過ぎました。」
和「、、、俺もごめんね。 本当に痛くなかった?」
澪「はい。」
和「良かった、、、うん、もう大丈夫だよ。 抱いてくれてありがとう。」
そう言い、彼女の腕から離れる
澪「いえ、私の責任ですから。」
和「澪さんは悪くないって! 俺が過剰に反応しちゃっただけだからさ。 、、、ごめんね、脆い彼氏で。」
澪「そんなことありません! 貴方は私を気遣ってくれただけです! 、、、何より、立場が逆だったとしたら、私も泣いていました。」
ッ!
和「アハハ、、、お互い、相手のことを好きすぎだね。」
澪「フフ、そうですね。」
深刻な雰囲気から取り返すように、大きく笑う
和「、、、もっと遊ばない?」
澪「えぇ、勿論!」
残った時間で、日が暮れるまで、川岸を散歩したり石を裏返して水中生物を見つけたりしてたくさん遊んだ
初めは何事かあったけれど、振り返ってみれば楽しく遊べたと思う
、、、こうして自然の中で遊ぶと、童心に帰るというか、もっと幼い頃を思い出す
でも、あの時は爺ちゃんと遊んでたけど、今は違う
好きな人、、、澪さんと遊べてる、、、昔よりももっと幸せだ
そう言ってしまうと爺ちゃんに失礼だが、本当のことだからどうしようもない
すまんな、爺ちゃん
とにかく、今日も楽しく過ごせた
和「澪さんは今日楽しめた?」
澪「はい。 川で遊べたこともそうですが、私を大切にしてくれていることを改めて知れたのが一番嬉しいです。」
それが一番なのね、、、
澪「私の悪戯心が招いてしまった出来事であり、一瞬でも和樹くんを傷つけてしまったことを反省しています。 ですが、貴方の想いを感じることができて幸せでした。」
和「そう思ってくれたら俺も泣いた甲斐があったよ。」
澪「本当にすみません、、、」
和「アハハ、、、」
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