第83話 澪視点⑥



 私はとても驚きました


 まさかお婆ちゃんのお隣さんが、和樹くんのお父様のご実家だなんて、、、


 倦怠期予防としてのお互いの里帰りのつもりだったのですが、結局いつも通りになってしまいましたね、、、


 ですが!


 私は和樹くんに飽きられてしまうことは無いと信じていますし、まして彼に飽きるなんてことはあり得ません


 やはり杞憂でしたね


 、、、だって隣りで寝ている彼の顔がとっても幸せそうなんですもの


 かく言う私の口元も緩みきっています


 何故なら、寝具がいつも使っているベッドと違い、お布団だからです


 ちなみに、今はお婆ちゃんの家の客間で、いつものように二人で寝ています


 婚約していることを話すと、『なら同じ床で寝ても構わんやろうし、その方が寝やすいやろ』とお婆ちゃんが言い、その流れでここに至ります


 そして何故お布団であることが幸せに繋がるのかと言うと、、、


 いつものベッドは『寝る用』です


 では、なら?、、、


 、、、ということをお互いに考えてしまい、新鮮な気分を味わえました


 あ!


 勿論そういうことはまだですから!


 でもまるで、その直前であるかの様な緊張感と高揚感、、、


 倦怠期の予感など微塵も感じさせない雰囲気でしたよ




澪「、、、好きです。」


 彼の耳元で囁きます


澪「優しいところ、かっこいいところ。」


 彼の耳元で呟きます


澪「弱気になっている時に守ってあげたいと思わせてくれるところ、でもいざという時は守ってくれるところ。」


 彼の耳元でささめきます


 何度言っても足りません


 何度繰り返しても足りません


 言語化できないほどの愛が胸の中で暴れています、、、今にも飛び出したいと言っています


 彼の仕草が、優しさが、容姿が、彼の全てが、私の心を魅了します


 本当に、本当に大好きです


澪「これからも、一緒にいて下さいね♡」


 私は幸せな気持ちで眠りに入りました、、、






 時間は進んで、翌日の朝のことです


澪「ふわぁ、、、あれ? 和樹くん、まだ寝てますね。」


 起きると珍しく、隣りで彼がまだ寝ていました


 慣れないお布団であまり眠れなかったのでしょうか?


 それはそれで、私のベッドで寝ることに慣れているということを示しているので嬉しいです


 それにしても、、、


澪「いつ見ても可愛い寝顔です。」


 あ、いえ、いつもは彼に起こされている側なので、そんなには見ることは叶っていないのですが、、、



 この時、悪戯心が芽生えてしまいました


澪「今なら悪戯できちゃいますね、、、」


 まだぐっすり寝ています


 起きない子には悪戯ですよ!


 どんな悪戯をしちゃいましょうか?


 頬におはようのキス?


 、、、それとも唇に?


澪「どれも恥ずかしいです、、、」


 周囲に誰もいませんし、当の和樹くんも寝ています


 いつもなら勢いで彼をからかっているのですが、改めて悪戯のことをを考えると緊張しちゃいます


 ですがここで止めてしまうと、なんだか負けた気がするので嫌です


和「すー、すー、、、」


澪「むぅ、、、」


 私はこんなにも悩んでいるのに、人の気を知らずぐっすりと、、、決めました!


澪「エイ!」


和「、、、フガッ!?」


 彼の額にデコピンをしました


和「てっ敵襲!?、、、なんだ澪さんが。」


澪「フフ、敵襲って、、、」


 面白いところも好きですよ♡


和「クッ、この悪戯っ子め。 仕返しだ。」


澪「アイタッ。」


 お返しにデコピンされました、、、


和「おはよう。」


澪「おはようございます、、、」






 今は和樹くんのお祖父様の家で朝食を食べています


 白米、味噌汁、焼き鮭、ほうれん草のおひたし、たくあん、、、どれも伝統的な日本食でとても美味しいです!


 智子さんが作られたということですが、時間があれば是非お料理を指導していただきたいですね



澪「それで、今日の何をする予定なのですか?」


和「うん、久しぶりに近くの川に行こうかなと思ってる。」


澪「それって、山の近くにある浅い川ですか?」


和「あれ、澪さんも知ってたんだ?」


澪「勿論です! 私もよく行ってました。」


 浅い川なので子供も安全ですし、何よりここから近いので気軽に行けるんです


和「一緒に行く?」


澪「是非お願いします!」


 よく通った道や場所でも、彼と一緒ならもっと楽しいです!


和「じゃ、短めの服に着替えてくるから少し待ってて。」


澪「私も着替えておいたほうが良いですかね、、、」


 今はワンピースを着ていますが、水場で遊ぶなら着替えたほうがよろしいのかもしれません


和「う〜ん、、、短パンとか持って来てる?」


澪「いえ、水着しか持ってきていなくて、あの浅い川なら水着を着るほどではないかな、と思いまして、、、」


和「あ、俺の2枚あるから片方着る?」


澪「ふぇっ!?」


 か、かか和樹くんのショートパンツ!?


 これは所謂、彼シャツイベントというものではないでしょうか!


 ショートパンツですが!


和「どうしたのそんな声出して、、、もしかして短いの嫌いだったりする?」


澪「い、いえいえ全然ウェルカムです!」


和「お、おぉ、、、」



 和樹くんが一度部屋へ行き、また戻ってきました


 片手にはショートパンツが2着


 一つは赤色、もう片方は黒色ですね


和「どっちが良い?」


澪「で、では赤色の方を、、、」


和「オッケー、はい、これ。」


 差し出されたショートパンツを受け取ります


澪「そ、それでは着替えてきますね。」


 失礼になってしまいましたが、足早に立ち去り着替えに行きます


 これ以上あそこに居たならば、恥ずかしいのがバレてしまいます、、、




澪「ふぅ、、、」


 客間に戻り一息つきます


 まさか私が彼シャツに弱いとは、、、


 この前に頭を撫でられた事も含め、自分の弱点をどんどん自覚してきています


 どうしましょう、、、彼に頼られるような人でありたいという望みもあるのですが、彼に弱点を知ってもらいたいという謎の欲もあるのです


 うぅ、、、これも全てこのショートパンツのせいです!


 思考が上手く回りません!


 、、、もう何も考えずに早く着替えましょう






 




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