第72話 恋人にプレゼントを渡す時って緊張するよね?




 水着を買い終えた俺と澪さんは昼食をフードコートで済まし、午後はブラブラとモールを見て歩いた


 あ、もちろん水着が入った袋は俺が持ってますよ?


 彼女の買った荷物を持つのは彼氏の義務、、って友1がこの前言ってたし



澪「ずいぶん歩いちゃいましたね。」


 お、これはチャンスなのでは?


和「じゃあさ、丁度いいベンチがすぐそこにあったから行ってみない?」


澪「お気遣い感謝します。」


 目をつけていたベンチに向かう




澪「すごい、、、夕陽が綺麗に見える場所ですね。 もしかしなくても狙いました?」


和「バレちゃったか、、、実は、渡したいものがあって。」


 キレイに梱包されたプレゼントをカバンから出し、彼女に渡す


澪「えっ! これを、私にですか?」


和「うん。 普段の感謝とか、婚約相手への想いを込めて。」


澪「、、、開けても?」


 俺は頷き、澪さんは恐る恐る箱を開ける


 中に入っていたのは、二つで一組の指輪


 俺と澪さんの、婚約指輪だ


澪「これは、指輪、ですよね。」


和「うん、婚約指輪。 中学生にまだ宝石は難しくて、、、細工の入ったリングになってしまったけど。」


澪「いえ、中学生の私たちには丁度いいですよ。 デザインもおしゃれです!」


 まぁ、宝石を付けれない分そこにはこだわった


澪「二つあるのは?」


和「一つは澪さんへ。 もう一つは、、、澪さんから俺に渡してほしい。 指輪を一方的に渡すだけだったら、なんか嫌で。 だから欲張りかもしれないけど、澪さんからも渡してほしいんだ。」



 俺は傲慢だし、ネガティブだ


 愛情だけでなく、だなんて


 でもこればかりは性分でどうしようもない


 だってそうだろう?


 俺の気持ちだけが先回りして、空回りしてしまうなんて怖い


 彼女が紡ぐ言葉だけでなく、行動で示してほしいなんて、、、改めて考えても欲張りだな




和「、、、あれ? いつの間に!?」


 軽くネガティブになってたら、気づかぬうちに俺の指は輪に通されていた


澪「フフ、これが私の覚悟ですよ?」


 さすが澪さんというか、なんというか、、、


 考える時間も、相手に気づかれないように指輪を通したのも凄いな


澪「和樹くんは私の指に通してくれないんですか? 泣いちゃいますよ?」


 両手で顔を隠して、指の隙間からこちらをチラチラ見る姿も可愛いんだな!


 これが!


 ま、やられっぱってのも駄目だよな


和「ほら、手を出して。」


 指輪片手に手を差し出させる


 言われた通りに差し出された手を優しく掴み、そっと指輪を通す


 澪さんは指輪を一瞥し、俺の顔を向き、言った


澪「、、、今、とっっっても嬉しいです。」


和「俺もだよ。」


 そしてしばらく、お互いに指輪を見つめながらニヤニヤする時間を過ごした


 傍から見ればバカップルみたいに見えるんだろうな、、、




澪「ときに和樹くん、指輪の話なのですけれども、、、」


 堪能する時間が一段落終え、澪さんが問いかけてきた


和「どしたの?」


澪「指輪がピッタリなのは嬉しいのですが、、、いつ測ったのですか?」


 ウッ!、、、


和「それは、、、」


澪「それは?」


 おっと、澪さんの顔がだんだん冷たくなってきましたよ


和「横で寝てる時に、そっと、、、」


澪「、、、、、、」


 ちょ、それってどんな感情の顔ですか!?


澪「寝ている人の体をどうこうするのはいただけませんね、、、」


 デスヨネー


澪「でも、それくらいなら良いでしょう。 今回は許しますが、次に行ったらどうなるか分かりますよね?、、、」


和「承知いたしました。」


澪「よろしい!」


 でも寝ているときくらいしか澪さんに鋤が無いんだよなぁ


 とにかく、次はしないようにしよう




澪「、、、指輪をはめたいのは山々なのですが、学校に行くときはどうしましょうか?」


 紅明中学校は色々と特殊とはいえ、やはり装飾品の持ち込みは控えるように言われている


 勿論その事は知ってるし、だからこそ用意もしてあるのだ!


和「任せて。 それも考えてある。」


 俺が取り出したのはネックレス用の紐


澪「なるほど! ネックレスのようにして首にかけ、制服の襟で隠せば見つかったりしませんね。」


和「まさか好評とは、、、」


澪「?」


和「いや、意外というか、澪さんって『校則は絶対に守ります』っていう感じの人かな、と思ってたから。」


澪「基本は守りますが、今回は例外です。 、、、クラスが違うことに、寂しさを覚えていたので。 指輪のネックレスをかけていれば常に和樹くんを感じていられると思って、、、」


 あ、澪さんもそうなんだ


和「俺も、澪さんとクラスが違うくて寂しくて。 でも、これがあれば澪さんとのつながりを感じられる。 だから賛成してくれて嬉しいよ。」


澪「和樹くん、、、」


 彼女は目を閉じて、ゆっくりと顔を近づけてくる


 俺もそれに合わせて顔を近づけ、触れ合うギリギリで目を閉じたーー




澪「んっ、、プハッ、、和樹くんったら♡」


和「んむっ、澪さんだって、、、」




 なんというか、大人への階段を少し登ったような日だった


 無論、帰ってから指輪が見つかり楓さんと秀和さんに話を根掘り葉掘り聞かれたことは言うまでもない


 あ、でも隣で話す彼女が本当に幸せそうな顔をしていて、こっちも幸せになったのは誰にも話さないでおこう










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