#23 市民プール
スマホを持ってからは頻繁に連絡を取るようになった。
と言っても、私からソウジくんにメールを送るばかりで、ソウジくんからは「はい、わかりました」との返事程度しか来ないけど。
それでも、相談したい時にすぐに相談出来たり、事前に都合を確認出来る様になったので、お出かけとか勉強会とか今までよりも誘いやすくなって、とても助かった。
それに、何よりも、ソウジくんのことがより身近に感じられるようになった。
8月に入る頃には、私にとっては奇跡的にも宿題がほぼ片付いた。
そこで、ここまでほとんど遊びに行かずに宿題や受験勉強を続けていたこともあり、久しぶりにソウジくんと遊びに出かけることに。
と言っても、市民プールだけど。
それでも二人で遊びに出かけるのは久しぶりで、数日前からとても楽しみにしていた。
当日は、朝から市バスに乗って出かけて午前中はプールで遊んで、お昼はお弁当食べてから帰ってくる予定。
お弁当は、いつもおにぎりばかりだったので、サンドウィッチを作ることに。
ソウジくんには事前に嫌いな具とか無いか確認したら、何でも食べるというので、玉子とハム&チーズの2種類作ることにした。
日程決めたり、サンドウィッチの具の相談したりも、全部スマホで連絡して確認した。
朝7時に起きてサンドウィッチの具材の卵を茹でて、熱を冷ましている間にシャワーを浴びた。
シャワーから出て着替えて髪を乾かして、台所で料理の続きを再開。
ゆで卵の殻を剥いて砕いてマヨネーズと混ぜながら塩コショウで味付け。
次に、食パンを取り出してミミをカット。
重ねる方の面にマーガリンを塗って、ハムとチーズを挟んだ物を3つ、玉子を挟んだ物も3つ作って、それぞれ4等分にカット。 カットした物を立てた状態で並べてラップでラッピング。
あとはペットボトルの冷たいお茶を水筒に移して、お弁当の準備完了。
自分の部屋に運んで、リュックにお弁用と水筒、タオルに水着、目薬に綿棒にリップクリーム、あとレジャーシートやetcを詰め込む。
9時にバス停で待ち合わせなので、15分前には家を出た。
バス停に着くと、ソウジくんは先に来ていて、ベンチに座って読書をしながら待っていてくれた。
『おはよう!』と挨拶をして私もベンチに座って待っていると、直ぐにバスが来て乗り込む。
『バスだとクーラー効いてるから、快適だね~』
「そうですね。 この季節は歩きだと大変ですからね」
『でも、今日だったら汗かいてもプールでさっぱり流せるから、歩きでも良かったかも?』
「多分ですが、プールで疲れて帰りは歩きたく無くなると思います」
『ふふふ、そうだね。 やっぱりバスで正解だね』
20分程で目的地の市民プールの到着し、入口で料金を払って入場した。
直ぐに別れてそれぞれの更衣室に向かって着替える。
更衣室から出ると、ソウジくんは待っていてくれた。
『お待たせ!』
「じゃぁ消毒してから行きましょうか」
『うん!』
プールに行くと大勢の人で賑わっていた。けど、小学生くらいの子供がほとんどで、私たち位の中学生は全然居なかった。
ソウジくんと二人で遊んでいるのが、学校の人たちにバレるのはよろしく無いので、敢えてこういう場所を選んで来たんだけどね。
プールに入る前にソウジくんが真面目に準備運動を始めたので、私も真似して準備運動した。
プールに入ってからは、最初こそ二人とも泳いだり意味もなく水掛け合ったりしてはしゃいだけど、直ぐに飽きてしまい、あとはクラゲの様にユラユラ浮かんでみたり、プールサイドで寝転んだりしながら過ごした。
しかし、プールサイドで二人で並んで寝ころんでいる時に、凄い発見をしてしまった。 凄いと言っても、私にとって”凄い”というだけなんだけど。
ソウジくん、元々綺麗な顔してて、みんなからもイケメンって呼ばれてるけど、濡れた髪をかき上げた姿は、普段の5割増しくらいイケメンだった。まさしく「水も滴る色男」だ。 破壊力抜群。 寝ころんでる間、ずっと顔見てた。
2時間くらいプールで遊んで、昼前には着替えて、二人とも濡れた髪のまま移動した。
市民プールの近くには、市営のグランドや公園などが有るため、公園の方に移動して、木陰を探してレジャーシートを広げて、お弁当を食べる用意をした。
『サンドウィッチは初めて作ったから、美味くなかったらごめんね?』
「大丈夫です。綺麗に出来てて美味しそうですよ。 頂きます」
『はい、どうぞ』
プールで泳いだあとだったし、木陰は風がよく通る場所だったからか涼しく過ごしやすくて、食事を終えた後もしばらくココで休むことにした。
ソウジくんは読書を始めたので、私は寝ころんで、そんなソウジくんを眺めて居た。
ソウジくんがウチに来てからもうすぐ5カ月かぁ
お母さんが亡くなってから半年近く。
もちろん寂しいんだろうけど、少しでも寂しさを紛らわせること、出来ているのかな?
ソウジくんと一緒に過ごしていると、私はもちろん楽しいけど、ソウジくんもそう思ってくれてるのかな?
『ソウジくん・・・手を繋いでもいい?』
「・・・はい・・・どうぞ」
そう言ってソウジくんは、読んでいた本を閉じて左手を出してくれた。
私は寝転がったまま右手で、その手を掴んだ。
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