生徒会長の権力

 スタスタと侵入してくる影。

 こ、こいつはまさか……学年主任か!!



 くそ……終わったか。



「大二郎。大二郎ってば!」

「ん……リア」


 無念のあまりうつむいていた俺は、リアに服を引っ張られて頭を上げた。ちらっと横を見ると、そこには――



「え……」



「どうも、神白くん。君の為に一肌脱ぎに来ましたよ」

「か……会長!」



 そこには、生徒会長の比屋定先輩がいた。堂々とした良い表情で……。まるで救世主だな。



「おや、生徒会長ではないですか」

「ええ、校長先生。私からも二人の同棲を認めて戴きたいのです」


「……分かりました」




 ……へ。




「えぇッ!? そんなアッサリと!!」



 俺は思わずビックリして、突っ込んだ。まてまて、娘のあずさの言葉にはちょっと悩んでいたのに、会長には呆気なくひとつ返事ってどういうことー!?



「も~、スズちゃんってばぁ」

「ごめんなさい、あずさちゃん」



 あずさも会長もキャッキャと盛り上がっていたが、いや分からんって。



「あの、会長これどういう事ですか?」

「それはこの私が説明しよう、神白くん」

「は、はい、校長先生」


「それはだね、生徒会長は『比屋定財閥』のご令嬢だからだよ。この秋桜学園に多額の寄付をして下さっているんだ。そもそも、この学校作ってくれたのも比屋定財閥だったりするのでね! 逆らえんのだよ!!」



 そういう事か――――――い!!!



「そんなわけなんです、神白くん。この私も『カムチャッカ荘』に住みますね」

「え……エエッ!?」


 いきなりの宣言に俺は声が裏返った。……うそーん……つまり、なんだ……。あずさもあずさの兄である賢典先輩も……そして、会長もアパートに引っ越してくる……!?


 校長が深く頷き、納得していた。



「そうか、比屋定会長がいれば安心でしょう」

「いいのかよ!」

「ええ、権力と金には勝てんのですよ」



 ハッキリと言うし!

 会長がお金持ちな理由もようやく分かった気がする。株や投資だけではない……元々お金持ち・・・・・・だったんだ。




「ちょっと待ったああああああああ!!」



 こ、この声は学年主任!

 来やがったか……だが、もう遅い!!



「おや、学年主任の三蓋菱さんがいびし先生」

「校長先生! 同棲なんて認めていないでしょうね!?」

「認めましたが」


「馬鹿な!! 校長先生、彼らはまだ未成年ですぞ! あんな銀髪の美少女を前に理性など保てるはずがない。みだらな行為だってしているでしょう!! 事件も起こしているし、これでは他の生徒に示しがつかんでしょう」



 いやまて、事件は棚橋が起こしたんだがな!?



三蓋菱さんがいびし先生、神白くん達のアパート『カムチャッカ荘』は『学生寮』です。秋桜学園と既に提携済み。五乙女兄妹と比屋定生徒会長も住む予定があるんです」


「その通りだ!!」



 扉から現れる……セルゲイさん!

 なんでいるんだよ!!



「お、お爺ちゃん!?」

「やあ、リア。話は聞かせて貰った……校長先生。予定通り、理事長に『カムチャッカ荘』を学生寮として認可してもらった。これで問題ないはずだ」



 ……つまり、これで俺とリアは……!



「そういうわけです、三蓋菱さんがいびし先生。彼らになんの落ち度もなければ、問題もないのです。よろしいですね」



 ――と、校長先生は静かに言い放った。



 がくがく、ぷるぷる震える三蓋菱さんがいびしは、次第に顔を赤くして……



「うあああああああああああああああ!! 馬鹿なあああああああああああああ!! くそ、くそがああああああああああ!!」



 発狂して校長室を飛び出していった。

 おいおい、いくらなんでも悔しがり過ぎだろ。どんだけ認めたくなかったんだよ。



三蓋菱さんがいびし先生は、学年主任に相応しくないようですね。……ともかく、これで神白くんは安心して生活を送って良いのです」


「ありがとうございます、校長先生。みんな! セルゲイさんも!」



 感謝しているとリアが飛びついてきた。俺は受け止め、ぎゅっと抱きしめる。



「大二郎、やったね!!」

「ああ……これで離れ離れにならないッ! リア、ずっと俺といてくれ」

「うん。……すっごく好きだよ、大二郎」



 ――ああ、俺もだ。

 今日、今度こそリアに気持ちを伝えよう。

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