ドライブデート?

 帰宅部終了。

 三十分の充実した雑談タイムを終えて昇降口まで向かうと、担任の梅中うめなかに呼び止められた。


「大二郎、午後は何処どこへ行っていたんだ? 他の先生からもお前の姿がなかったと聞いたぞ」

「あー…」


 生徒会長と“カードゲームしていました”なんて馬鹿正直に言えるはずもない。ここは、上手く誤魔化すか。


「ぐ、具合が悪かったんです……」


「そうか、体調不良だったのなら仕方ない。確か、大二郎、お前はプログラミングのバイトをしているんだったな。夜遅くまで仕事しているのか?」


「ええ、まあ……」

「そうか。無理はするなよ。体は資本だからな、体調には特に気を付けるんだ」


 なんだか、凄く気遣きづかわれているな。

 どうしてだだろう? でも確かに、学校の校則でバイトをする場合は申告しなきゃいけない。だから担任はきちんと申し出てある。そこまでは分るけど……う~ん。


「あ、あの、先生……」

「なあに、ちょっと門前でお前の関係者に話しかけられたのでな」

「俺の関係者?」

「あー…なんと言ったかな。黒髪美人の『遥』と言ったかな。綺麗なお姉さんじゃないか! リディアがいるというのに、お前というヤツは……青春アオハルだな」


 ポンッと肩に手を置かれ、梅中は満足気に去っていく。……え、ちょ、ちょっとまって……その黒髪美人の『遥』って人は――まさか!!


「リディア! 直ぐに門前に行くぞ!!」

「へ……ああ、うん」


 直ぐにくつを履き替え、門まで向かう。

 すると、門前には超イカツイ『マイバッハ Sクラス』が停車していた。……うわぁ、これは間違いないじゃん。とうとうこんな場所にまで追ってきたか!


「……く」

「ねえ、大二郎。あの自動車、カッコよくて凄いね。なんで学校前にまっているんだろう~?」


 事情を知らないリアは、首をかしげる。

 そうだな、そうだよな。


 もう観念するしかないとあせっていると、車の中からビシッと決まったスーツのお姉さんが現れた。……はるかさんだ。


「こんにちは、大二郎くん」

「……お、お久しぶりです……」


 ひたいから汗を滝のように流す俺。手汗もやべぇ。


「……大二郎? この女性ひとだれ?」

「プログラムの仕事をくれている人だよ。『東雲しののめ はるか』さんって言って、まあ、ある意味では上司……いや、社長・・なんだけどね」


「しゃ、社長!?」


 遥さんは、にっこり笑ってリアと向き合う。


「よろしくね、リディアさん。貴女の事は大二郎くんから聞いているわ。まあ、立ち話もなんだし、弁天島駅前にあるアパートまで送ってあげるから、乗って乗って」


「ええ! この車に乗っていいんですか!?」


「いいわよ。大二郎くんもぼうっとしてないで乗って」

「は……はい」


 とんでもない事になったなぁ。


 マイバッハの後部座席に乗車。なんだこの異次元クラスの乗り心地。一生あるかないかの経験だぞ、これは。

 というか、この車を軽く調べたが『3000万円』もするらしい。驚きの金額だ! さすが社長、儲かっているんだなぁと俺は思った。


 車が走り出すと、ご機嫌な遥さんが話を振ってくる。


「最近、いっぱい仕事してくれてありがとうね、大二郎くん」

「いえ、仕事を紹介して貰えているだけありがたいっす。俺なんかが役に立てるとは思いもしなかったし、でもおかげでアパート暮らしできていますし、本当に感謝していますよ」


「うん、ある意味、わたしのおかげでリディアちゃんと同棲できてるもんね?」


「ぶっ……! なんで同棲の事まで知ってるんですか! そこまでは話していないですよ!」

「この前、アパートを訪ねたの。で、不在だったから、そのまま帰ろうとしたんだけど、外国人のおじいさんが二人の関係をいろいろ教えてくれたのね。だからよ」


 外国人のおじいさん?


 って……それって……


 リアのお爺ちゃんだー!!!

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