ラインで告白!?

 玄関前に現れたのは俺の親父ではなく、リアのお爺ちゃんだったらしい。あの銀髪は間違いなさそうだな。にしても、ハードボイルドな風貌ふうぼうだけど中々に若く見える。俺の親父に匹敵する渋さだな。


「久しぶりじゃな、リア。元気にしとったか」


 めちゃくちゃ流暢りゅうちょうな日本語を話すお爺ちゃん。めっちゃネイディブ! なまりが一切なく、まるで日本人のような自然な喋り方。現地民ではないかと疑ってしまう程だった。


「う、うん。というか、お爺ちゃんがなんでここに?」

「なんでって、そりゃ当たり前じゃろう。このアパート『カムチャッカ荘』の管理人だからな」

「ええ~!? そうだったの!?」


 いやいや、おかしい!

 このアパートは『さくら荘』だったはず。いつの間に管理人とアパート名が変わったんだよ。


「待って下さい。いろいろと納得できないんですが……! リアのお爺様、管理人さんは気の良いおばちゃんの『佐藤』さんでしたし、アパート名も『さくら荘』ですよ」


「もう買収したのじゃよ。今の管理人はワシ。アパート名も『カムチャッカ荘』に変えた。元管理人の佐藤さんはこころよくこの土地とアパートを譲ってくれたよ。一生遊んで暮らせる額でだがね」


「な、なんだってー!?」

「ところで、お前さんは……ふむ、神白んとこの大二郎か。大きくなったのう」


 どうやら、俺とこのリアの爺さんはその昔に面識があったようだな。覚えちゃいないけど。でも、そんな話は置いておいてだな、いろいろと状況がおかしいぞ。


「もうお爺ちゃんってば……何やってるのよ」

「これは可愛い孫娘の為じゃ。お前が幸せになれるのなら、買収だって安いモノなんじゃよ」

「そ、分かった。でも、これ以上はわたしと大二郎の邪魔をしないでね。変に干渉してくるなら、嫌いになっちゃうから」


「……ぐぬぬ。努力はしよう。大二郎くん、孫娘を頼むぞ。リアは、世界一可愛いんだ、雑に扱おうものなら……生まれてきたことを後悔させてやるからな」


 拳をバキバキ鳴らされ、ギロッとにらまれる。こわー、おっかねえ~。


 でも、リアを任せられたんだ。頑張らないとな。



 ◆



 リアのお爺ちゃんは、リアに嫌われるのを恐れてだろう静かに去っていった。案外、理解力のある人なんだなって俺は思った。


「ま、まあ……管理人さんがリアのお爺ちゃんになったのなら、少しは融通も効きそうだし、安心だな」

「それはどうかなあ。でも、大丈夫。わたしが大二郎を守るからねっ」


 腕にくっ付いてくるリアは、任せなさいと俺に視線を送る。そうだな、リアなら何とかしてくれそうだな。



 ――風呂、飯、仕事を済ませ……夜は更けていく。



「……リアの唇って桜色で綺麗だな」


 なんて写真に見惚れている場合ではないッ! いつものお風呂からの『画像』か『動画』プレゼントで、今日は『口元』の写真だったわけだ。


 日に日に俺の秘密メモリあるいはクラウドにリアのいけない写真が保存され、秘蔵データが増えていく。流出しないといいんだけど、まあ厳重に保管しているし、きっと大丈夫さ。



 時計を見ると、もう零時を回っていた。

 プログラムの仕事バイトも終え、さすがに眠くなってきた。



 ようやく設置した折りたたみベッドに背を預け、俺はまぶたを閉じた――のだが、スマホに反応があった。


 何事かと画面を確認すると、リアからのラインメッセージで――



 『Ты мне нравишься』とあった。



 だからロシア語は読めないって――ああ、これなら翻訳すればいいのか。俺はGooooooogle先生で翻訳をした。するとそこには“あなたが好き”と結果が出ていた。



 まったく……

 嬉しくて眠れないじゃないか!!(←超テンション上がった)



 俺は、寝る間も惜しんで本気のロシア語メッセージを作り上げ、こう返した。



『Ты мне очень нравишься!!!』

(君が超好きだあああああああッ!!!)



 ――と。

 送信と同時に俺は寝落ちした。

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