キスと告白っぽいもの

 遅刻もせず秋桜学園に辿り着く。

 そのまま教室へ向かって隅の席へ。


 隣の席に座るリアは、俺の方を見てにっこり笑う。さっきは五乙女そうとめの件でいていたかと思えば、そうでもなかった。機嫌は良さそうだな。


 しばらくしてHR≪ホームルーム≫が始まる。担任の梅中うめなかがペラペラと喋る最中さいちゅう、リアは小声で俺を呼んだ。


「ねえねえ、大二郎。これ見て」


 言われて視線を落とすと、リアは机の上に胸を乗せていた。ただそれだけなのにボリューム満点の巨乳が俺の視線を釘付けにしてくれた。


 さすが形が良いだけあって……デカくて柔らかそう……って、ちが~う! だめだ、今はHR中だぞ。他の男子に見られたり、担任にバレたらまずいって。


 俺は『やめなさい』とサインを送り、止めさせた。リアはしてやったりと笑うと、俺から視線を外した。



 ◆

 


 そうして、退屈な授業が淡々と進んでいく。



 ――時は流れ、なんとか三時限目の授業を終えた。休憩で席から立ち上がると、クラスメイトと話していたリアがこちらへやって来た。


「ちょっとこっち来て」

「お、おう」


 廊下へ出て、そのまま人気のない場所へ向かっていく。


「ここなら人いないよね」


 キョロキョロと周囲を警戒するリア。

 誰かに聞かれたくない話なのか。


「ああ、ここ屋上に近いしな。あんまり人が来ないよ。……で、話ってもしかして……朝の件か」

「ん? 朝の件?」

「ほら、五乙女の……怒っているのか」


「?? 大二郎、何を言ってるの?」


 あれ、違った。

 てっきり、五乙女に見惚れてしまった件でクレームの嵐を受けると思ったんだがな。どうやら、俺の思い違いらしい。


「じゃあ、なんだ」

「……あのね、我慢できなくなっちゃった」


 そう言って、リアは顔を近づけてきてはキスをしてきた。今日は何故か甘い香りがして……そのせいで頭がぼうっとした。


 俺はびっくりして――固まる。学校でキスなんてもう何度もしているけど、さすがに誰かに見られたらまずい。だから、この状況になるとアトラクション体験よりもドキドキしていた。


「リア、俺……」

「ごめんね、わたし……キスするの好きなんだ。大好きな人とすると、すっごく幸せを感じる。こんなロシアっ子でごめんね」

「知ってるよ。もう何度されたか分からないし、でも嬉しいんだ。リア、俺はな……」


 思い切って告白しようとした――その時だった。階段を上がってくる人の気配。



 コツコツと上履きの音が規則的に響く。



 そこに現れた人物は……



 なッ! なんでコイツが……!

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