愛人契約してよ
ボートレースで大勝してしまった。
約80万円もの大金を手に入れ、俺は手がブルブル震えた。とはいえ、実際に勝ったのはリアの婆ちゃんだ。
「と、とりあえず……60万円を封筒に入れてっと……! なんだこの札束のおこづかい。ありえねー!!」
「落としちゃだめだよ、大二郎」
「お、おう。任せろ」
会場を後にして、俺たちは出入口を目指すのだが――その帰り道でメイド服に身を包む少女が向かって来ていた。なんだ、コスプレか?
その顔をよく見ると――
「「え……」」
俺もそいつも目を合わせてしまう。
見知った顔じゃん。
「あれぇ! 大二郎くんとリアちゃんなんでボートレース場にいるの~?」
なんと風紀委員長の『
「それはこっちのセリフだ、
「何って売店のバイト。このカッコの方が受けるからさ~」
「そんなバイトをしていたのかよ。にしても……スカート短すぎるだろう」
ジッと観察していると、リアが俺の目を手で隠す。
「見ちゃダメ」
「……そうか、すまん」
「あはは、二人とも夫婦のように仲いいね。で、今日は大二郎くんもリアちゃんもレースは勝った?」
「あ、ああ……約80万円ほどな。実際は60万円だけど」
「へ……は、はちじゅうまん!?」
驚くべき金額を聞いて、
「俺たちは予想しただけなんだが、結果的には万舟券をゲットした」
「すご……! 大二郎くんって凄いね……わぁ、あやかりたい。ねえ、大二郎くん、あたしと愛人契約してよ!」
「ブッ! 馬鹿、こんな所で愛人とか叫ぶなよ」
「ああ、ごめんごめん。まあ冗談だけどね! それじゃ、あたしは着替えに行くから、また来週~」
ブンブンと元気よく手を振って行ってしまう
「俺達も帰るか」
「うん。でも愛人契約はダメだよ」
「わ、分かってるって」
◆
新居駅前にある『うなぎ屋』に入った。
今回勝利した金でさっそく贅沢というわけだ。
さくっと注文して、ニ十分ほどしてテーブルに来た。出来立てのうな重が黄金の光を放つ。
「これが
「ああ、美味いぞ。絶対に美味い」
「「いただきま~す」」
さっそく
カリモフっとした食感と秘伝のタレの風味が口内に広がる。なんて絶品。美味すぎて涙が出る。それはリアも同様だった。ロシア人の口にも合うんだな。
「美味しい!
もう
リアは上品に味わいながらも、
俺も続いて完食。
さっそく12,000円の支払いとなったが、まだまだ余裕。
支払いを済ませた後、そのまま新居駅へ。辺りはすっかり暗くなって夜だ。
その道中、リアはある方向を指さしてこう言った。
「ねえ、大二郎。あのホテル、寄ってく?」
「あのホテルぅ?」
なんだかお城っぽくも怪しいLEDの光を輝かせるホテルがあった。――って、ラブホじゃねーか!!
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