特産品を作ろう!パートⅡ①
「じゃあ、今日は『恐慌』状態を治すポーションの材料を探すぞ」
「「「「「おー!」」」」」
キーリが『完全耐性の指輪』を完成させた二日後。
ポーションの素材を探しに俺たちは魔の森にきていた。
昨日は『恐慌』状態を治すポーションの作成をしていたので、二日ぶりの探索ということになる。
昨日、百本のポーションを作ろうとしたのだが、素材が足りなくなって作りきれなかったので今日は素材を探しに来たのだ。
「キーリ。探索まで付き合わせて悪いな。キーリはポーションの作成も一人でやってるのに」
「大丈夫よ。私が『採集』の魔術で採集したほうが状態のいい素材が手に入るんだから、私がやったほうがいいでしょ」
口ではそういっているが、実際一人で大量の錬成をするのはきついのだろう。
昨日はキーリはやけくそな感じでポーションの調合をしていた。
手捌きが見えないくらいになってたのを見た時は冷や汗が止まらなくなった。
どうやら、採集がリフレッシュになったらしく、今は普通に戻っている。
よかった。
ポーションはキーリ一人で作ってもらっている。
最初、ポーションはリノとスイも含めた三人で分担して作ろうとした。
今錬成鍋を持っているのがその三人だけだからだ。
『恐慌』状態を治すポーションは作るのは難しくない。
材料も魔の森の中で見つかるありふれたものだし、二人にも作ることができる。
そう思っていた。
だが、実際にポーションを作成してみて、問題が発生した。
二人の作るポーションはなぜかキーリが作るものより効果が低かった。
リノとスイの作ったポーションでは、使ってから『恐慌』状態が切れるまで、少しだけ長く時間がかかってしまうのだ。
戦闘の場合はその時間が命取りになる場合もある。
結局、安全性を考えて、百本全てキーリが作ることになってしまった。
原因はよくわからない。
錬金術の本にも作成者によって結果が変わるということは特に書いていなかった。
だが、リノとスイの加工した素材でキーリが作ってもキーリが一人で作る場合の半分以下の効果しか出なかった。
もしかしたら、リノの索敵能力同様にステータスでは確認できない何かがあるのかもしれない。
「二日は探索をしなかったから、久しぶりって感じね」
「三日前より浅い部分だけどな」
アリアも楽しそうに採集をしている。
ポーションの材料は別に深い部分じゃなくても手に入る。
結構余分に採集してはいたのだ。
だが、『完全耐性の指輪』を作るためにほとんど消費していたらしい。
百個には届かなかった。
あの指輪を作るのには相当な量の素材を使ってしまった。
何度も失敗したし、一度に使う量もかなり多かった。
実はこの辺でまだ見つけていない素材も結構必要で、前に見つけた魔女教の工房にあった素材を使って作ったのだ。
だから、もう一度同じものを作るのは無理だろう。
土台となるミスリル指輪もないしな。
「ごめんなさい。材料をたくさん使いすぎちゃって」
「キーリが気にすることじゃないよ。百本できるまで探索は中止って決めたのは俺なんだから」
ポーションが百本に届かなかったが、探索に行こうという話はあった。
だが、行かなかったのは最初に決めた百本っていうのに拘った俺の判断だ。
材料はたぶん今日中に集まるだろうし、一日二日伸びる程度なら最初のプランを通した方がいいと思ったのだ。
こういうところで妥協しても意味ない。
実際、話をしながらもかなりの量の素材を採集している。
この分なら午前中のうちにも必要な分の素材は集まると思う。
「あ。すこし待ってください」
「ん? どうした?」
ミーリアが何かを見つけたようで、近くの木の根元に座る。
今日に夕飯の食材でも見つけたかな?
それにしては動きが妙だ。
ミーリアはわざわざ手袋をして木の根元から何かを採集している。
食材だったらそのまま手で採集するだろう。
そして、振り返ったミーリアの手には毒々しい感じのキノコが握られていた。
「ねえ、ミーリア。それ、魔狂キノコじゃない?」
「そうですよ」
キーリが顔を青くしてミーリアに聞くと、ミーリアは満面の笑みで返事をする。
魔狂キノコ。
魔力の流れなんかを狂わせるキノコで、毒キノコだ。
このキノコは魔力で抵抗しにくい。
だから、強い魔術師を殺すのにつかわれたりする毒キノコだったはずだ。
俺でも食べれば二日くらいは苦しむことになる。
古代魔術師文明時代では使用が禁止されていた。
そういえば、最近、そういう話をした気がするな。
魔力を暴走させるような素材はないかと。
「まさか、レインに食べさせるとか?」
「えぇ!?」
アリアが青い顔をして俺とミーリアを交互に見る。
俺はミーリアに恨まれるようなことをしただろうか?
思い起こして見ても、ミーリアに嫌われるようなことはしていないはずなんだが。
「? どうしてそんなことしないといけないんですか? そんなはずありませんよ」
ミーリアは本当にわけがわからないという様子だ。
俺はほっと胸をなでおろす。
よかった。
嫌われてはいないようだ。
そうだよな。
俺に使うキノコを俺の前で採集するわけはないか。
「そ、そうよね。じゃあ、それ何に使うの?」
「次の商品に使おうかと」
ミーリアが笑顔でそう言うと、キーリの顔が引きつった。
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