探索再開しよう①
「よっし。これで終わり!」
俺は畑を囲う壁を作り終わった。
壁といってもただ土を盛り上げただけの簡単なものだ。
冬になれば壊すのだし、こんなものでいいだろう。
これだけでもグレイウルフは入ってこない。
手で押しても壊れないし、強度もこれで十分だろ。
「お疲れ様、レイン。キーリの担当分はさっき終わったってミーリアが報告に来てくれたから、これで終わりよ。キーリは魔力切れでヘトヘトらしいけど」
俺が壁を叩いて壁の強度を確認していると、そばにいたアリアが話しかけてくる。
キーリの担当分が終わったということは、畑は完全に壁で覆うことができたことになる。
さっきミーリアが来ていたのはキーリの担当分が終わった報告だったのか。
(いや。本当に二週間で終わるとはな)
二週間はあっという間に過ぎた。
俺が思っていたより魔物が溢れてたみたいで魔物退治は結構大変だったのだ。
何が大変って魔物を探すのがかなりの手間だった。
おそらく去年より前にあふれた魔物なのだと思うが数頭の群れになっているグレイウルフもいた。
そういう場合は散り散りに逃げたりするので、魔物を探さないといけなかったのだ。
いるかいないかわからない奴は放置してもいいかもしれないが、いるとわかっているのに放置するのはあまりよくないだろう。
それ以外にも、逃げるグレイウルフを追いかけたせいで一日では戻れない所まで倒しに行くこともあった。
あの時はアリアたちに心配をかけてしまった。
帰ってきたら相当心配されたらしく、泣きながら説教をされた。
本当に悪いことをしたと思っている。
失敗の最大の原因は遺跡で見つけた謎の魔道具を使おうとしたことだ。
魔道具で倒そうとしたせいで接近する必要があったので魔物を逃がしてしまったのだ。
『風刃』を使えば一発で終わるのだからそうしておくべきだった。
あると使っちゃうんだよな。
説明書があるわけでもないから使ってみるまで効果もわからないし。
魔道具が不発でいろいろ試しているうちに魔物に気づかれて逃げられたりもしたっけ。
事前にちゃんと使い方を調べておくべきだったな。
それに、何度か人がいた痕跡を見つけたので、その対応をしていたのも探索に時間がかかった理由の一つだ。
だいたいは焚火なんかの痕跡しか残っていなかったけど。
一度だけ魔物に襲われていたから魔物を倒してから助けたんだが、俺のことを見て一目散に逃げて行くのだ。
今世の顔はイケメンで別に怖くないと思っていたんだが。
後でミーリアに聞いた話だと、商人か冒険者だろうとのことだ。
魔の森の近くは遺跡なんかが見つかることがあるので、一攫千金目当てで来る場合があるそうだ。
冒険者はともかく、商人には村まで来てもらった方がいいかと思ったが、ジーゲさんを辺境伯様が専属に雇って月に一度くらいのペースで村に送ってくれるらしいので、他の商人は必要ないそうだ。
冒険者も、魔の森から溢れた魔物を狩る仕事なのだが、この国の冒険者のレベルではこの開拓村のあたりにいる魔物では相手にならないそうだ。
じゃあ、なんでくるんだよっと思ったが、魔物も多いし、取れる魔石の品質もいいので、それ狙いで定期的にそういう奴が発生するんだとか。
去年も何人かいたが、数日で魔物に歯が立たなくて諦めて帰るか、そのまま居なくなってしまったらしい。
そういう奴らは村の者に高圧的に当たったりするから、むしろ追い返してくれてありがとうとミーリアに言われてしまった。
確かに、今はアリアの件もあるし、外の人間は村に呼ばないほうがいいかもしれないな。
(しかし、キーリもなかなか魔力の扱いがうまくなったな)
そうしているうちに、かなりの期間が過ぎ、俺がやるはずだった壁作りが滞ってしまった。
そこで、畑の耕し作業がさっさと終わってしまったのもあって、キーリに一部をやってもらったのだ。
キーリもやってみたいといっていたしな。
俺が今日までにできそうな部分を俺の担当として、他の部分をキーリの担当とした。
ほとんどのエリアを俺がやったとはいえ、俺の担当分が終わった後キーリの担当分も手伝う必要があると思っていた。
修行を始めた直後が一番伸びやすいとはいえ、みんなの成長速度はすごいと思う。
「じゃあ、あとは種まきをすれば終わりだな。明後日くらいから探索再開できるか?」
「それもリノがもう終わらせてるわ。水やりはスイが魔術でやっちゃってるから、明日には探索を再開できるわよ。あと、明後日は休日よ」
「あぁ。そうか。じゃあ、明日から探索再開だな。明日は休むと、明後日は休日だから明々後日からなっていったらリノが拗ねそうだ」
「……確かにリノがすねそうね」
リノは探索を楽しみにしていた。
王都に行く前に遺跡を見つけたところだったし、気持ちはよくわかる。
この辺は魔力の効果が強いので水さえやっておけば勝手に畑は育つ。
何を育てているかは知らないけど、放っておいても多分大丈夫だろう。
壁も作ったしな。
何を育てるかは去年の実績も踏まえてアリアとミーリアが決めていた。
俺はこの国のことをよく知らないので、口出しできないし、しなかった。
「とりあえず、今晩にでも今後の予定の話し合いをするか」
「そうね。それがいいと思うわ」
もうすぐ夕飯時だ。
夕食を食べた後にでも明日からの予定を話すことにしよう。
俺とアリアは家路についた。
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