新しいエリアに行ってみよう!②
「遺跡?」
遺跡といえば、古代魔術師文明の建物が魔の森の飲み込まれて残ったものだ。
以前リノはもう少し浅いところで遺跡を見つけたことがある。
だが、あの遺跡は調べつくしてあるし、別の遺跡のことだろう。
「もしかして、地図に書かれた遺跡を探そうとしてたのか?」
「(コクリ)」
前の遺跡で見つけた地図に別の建物の位置が示されていた。
前の遺跡は魔女教の教徒の隠れ家だったようだから、その地図に示されているのもおそらく魔女教関係の建物だろう。
前の建物が残っていたことも考えるとほかの建物も残っている可能性は十分にある。
「そういえば、地図に書かれていた位置はリノが探索してた方向な気がするな」
地図は今、俺の『収納』の中にしまってある。
そういえば以前調べたあたりがリノが気にしていた方角だった気がする。
リノは地図を手に入れた直後に少ししかあれを見ていないはずなのによく覚えているものだ。
俺なんて地図を見ながらでもどのあたりか探すのに苦労したのに。
「リノはまた遺跡を見つけたかったの?」
キーリは優しく問いかけるようにリノに話しかける。
「……だって、遺跡を早く見つけたくて」
「別にそこまで焦ることないだろうに」
「遺跡を見つければレイン兄ちゃんの呪いだって治せるかもしれない! 俺は魔術で助けられないから。探索で少しでも役に立ちたくて……」
「リノ……」
リノの言葉はしりすぼみになっていく。
だが、リノの気持ちはすごく伝わってきた。
リノもリノなりにいろいろ考えて行動しているらしい。
俺は席を立ってリノのそばまで行く。
リノは怒られると思ったのか顔を伏せる。
俺はそんなリノの頭を優しくなでる。
「リノ。ありがと。俺のためを思って行動してくれてたんだな」
リノの頭を撫でていると、次第にリノのこわばりが取れていく。
しかし、俺が思っていたよりリノも俺のことを心配してくれているようだ。
俺は遺跡のことなんて全然頭になかった。
スイの魔導書も当分は大丈夫だと思うし、そこまで急ぐこともないだろうと思っていた。
「じゃあ、明日は遺跡がありそうなあたりを探索してみるか?」
「いいの!? レイン兄ちゃん!」
「まあ、今日探索したところと大して離れていないからな」
今、探索しているエリアの中に、地図に記載されていた遺跡がありそうな場所がある。
リノが気にしているようなら、先にそっちの方を探してみるのがいいかもしれない。
実際に何もないかもしれない。
だが、今の場所で鍛錬をする意味は特にはないのだ。
どうせなら遺跡探索をしながら鍛錬をすればいいだろ。
唯一大変になるのは遺跡を探すという目標が増えるリノだが、違うエリアを探索しながら遺跡を探そうとするよりは対象エリアを探索しながらのほうがずっと楽だろ。
見つかるまで結構時間がかかるだろうし。
「みんなもそれでいいか?」
「それでいいんじゃないかしら」
アリアが即答で了承する。
ほかのみんなも反対意見は特にないようだ。
「じゃあ、明日からは遺跡のあるあたりを探索するから」
「え? 今日、このあとは?」
「この後の探索はなし。リノが次から勝手なことをしないように」
「えぇ!?」
「だって、リノは説教したのに聞いてくれないじゃん」
今まで説教をしてきたけど、あまり効果がないみたいだから、こうやって何か罰を与えないといけないだろう。
考えての行動なのはわかるけど、いつ大怪我につながるかわからない。
「次からは何かする前には相談をすること。俺にじゃなくてアリアにでもキーリにでもいいから」
「……はい」
リノはしょんぼりとしてしまう。
うっ。
その反応には弱いんだよ。
だが、ここで甘い顔をするわけにもいかないだろう。
何よりリノのためにならない。
「じゃ、じゃあ、明日からは遺跡があるあたりを探索するとして、何かほかに気づいたこととかあるか?」
「……そういえば、今までと手に入る素材が変わっていたように見えたんだけど」
「あぁ。確かに変わってるな」
キーリが空気を変えるように質問してくる。
キーリの言う通り、魔の森の魔力濃度が変わったので手に入る素材は変わっている。
魔の森は出てくる魔物の住みやすいようにエリアが変わっていく。
ひとつ前のところはその前と変わらずグレイウルフが出てきたので、素材自体は変わらなかったが、今度は魔物がグレイウルフからブラックウルフに変わったので、手に入る素材も変わっている。
「魔の森では主にその場所に生息する魔物の得意属性と同じ属性の素材が良くとれる」
「へー。そうなのね」
逆に言うと、そのエリアでよくとれる素材と同じ属性を魔物が持っているので、その対策は必要となってくる。
まあ、グレイウルフが特に何かの属性に寄っていたわけではないので、属性的な考えは必要なかったが、ここから先は必要になってくるだろう。
「例えばどんな対応が必要なんですか?」
「そうだな。一番気をつけないといけないのはスイだな」
「……私?」
「攻撃する場合、相手の持っている属性の攻撃をすると、相手にほとんどダメージを与えられない。最悪相手を回復させることだってあり得る」
属性を持った魔物の一番厄介な部分はそこだ。
反対属性で攻撃するのが望ましいが、そこまでいかなくても違う属性の攻撃をするのが望ましい。
「それで、ブラックウルフは何属性なの?」
「……キーリは何属性だと思う?」
「え? 私?」
「当然だろ? この中で素材担当はキーリなんだから。素材が何属性かは今後もキーリが調べてほしい」
そういうと、キーリは少し不安そうな顔をする。
「まあ、間違ってたら俺が訂正するし、順々に慣れて行けばいいよ」
「わかった」
「じゃあ、何属性だと思う?」
キーリはあごに手を当てて考える。
「……たぶん、火属性だと思う」
そして、自信なさげに俺に向かっていった。
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