武器を装備しよう!②

「スイには杖だ。まあ、何もなしでもいいんだけど、この杖には魔術を強くする付与が付いているから、役立ててくれ」

「ありがとう」


 スイには魔術で魔物を攻撃してもらうつもりだったので、正直今のままの装備でも別によかった。

 魔術の操作能力を上げる道具などもあるんだが、そういうのを使うと個人の能力が下がるからあまり使わないほうがいいとされている。


 だが、一人だけ何もなしというのは少し寂しいのでスイの身長より長い杖を渡してみた。

 魔術師といえば杖という俺の勝手な思い込みで杖にしたけど、道具は別にスコップでもバールでも何でもよかった。


「役割としては、大技を後ろから撃って敵を倒す役割をしてほしい。まあ、グレイウルフだったら『水球』の魔術で十分倒せるだろうから、最初は『水球』の魔術をグレイウルフに正確に当てるのが役割かな。魔物を魔術で倒すコツはあとで教えるから、やってみてくれ。スイなら簡単にできると思う」

「わかった、やってみる」


 スイはそういってきゅっと強く杖を握る。

 やる気は十分のようだ。


「キーリはボウガンと採集セットかな」

「何これ?」


 俺が渡したボウガンをキーリは興味深げに眺める。


「これはボウガンって言って、片手で使える弓だよ。それほど強力なものじゃないから、敵にダメージは与えられないと思うけど、矢にしびれ薬を塗ってみたりして使ってほしい。本命は採集セットの方だな」


 俺はそういってポケットがいっぱい下げられたベルトのようなものをキーリに渡す。


「これはまあ、見ればわかると思うけど、いろいろなものが入れられる。移動しながら採集できるものは『採集』で集めて行ってくれ」

「でも、そんなにいっぱい採集するものは見つけられないわよ?」

「それは、これを使ってほしい」


 俺はキーリにメガネ型の魔道具を手渡す。


「何これ? メガネ? うわ!!」


 俺から受け取ったメガネをかけたキーリは驚きの声を上げる。


「すごい。何か、みんなからオーラみたいなのが立ち上がっているように見える!!」


 まあ、驚いても当然か。

 俺たちがオーラをまとっているようにキーリには見えているはずなのだから。


「そのメガネは周りにある一定以上の魔力を可視化してくれる。採集物は魔力をまとってるから、今までより簡単に見つけられるようになるはずだ」

「こんなものがあるなら、どうしてもっと早くに渡してくれなかったの?」

「そのメガネは微量ではあるけど無属性の魔力を使用者から吸うんだよ。キーリには土属性の魔力を伸ばしてほしかったから取っておいたんだ。今くらいの魔力量があればそのメガネにとられる魔力量程度では何も変わらないだろ」


 魔道具は基本的に無属性の魔力を利用する。

 魔道具ばかりを使っていると、無意識のうちに無属性の魔力ばかりが成長するようになってしまうのだ。


「まあ、キーリは今まで通り採集がメインで魔物と戦うときは後方から敵のけん制とか相手を万全の状況にしないように動くようにしてほしい。グレイウルフ相手では大した役割はないかもしれないけど」

「わかったわ」


 キーリはメガネでいろいろなものを見始めたので、後半は聞いていないように見えた。

 だが、まあ、大丈夫だろう。


「じゃあ、最後にミーリアだけど、ミーリアはこのネックレスをつけておいてほしい。まあ、役割はスイの杖と一緒だ」

「どうしてスイは杖で私はネックレスなんですか?」

「理由は単純だぞ? 『回復』は患部に両手をかざすと一番効きがいい。杖を持っていると片手がふさがるだろ?」

「なるほど」


 『回復』の魔術には片方の手で患部を修復する魔力を放出し、もう一方の手がある場合は患部の状況を解析するという効果がある。

 だから、片手でやるより両手でやる方が効率よく回復できるのだ。


「ミーリアもやること自体は今までと大して変わらないんだよね。戦闘中は『祝福』の魔術をかけること。それで、戦闘後、どんな小さな傷でも傷を負っていれば四人に『回復』の魔術をかける。治せば治すだけうまくなるから、これは絶対かな」


 魔術は誰が使っても同じものだが、魔術を発動する際の設定値は人それぞれ変わってくる。

 回復系の魔術の場合、この設定値がほとんど魔術感覚によるものだから魔術を使って魔術感覚を鍛えれば鍛えるほど効きは良くなってくる。

 知識があればその速度は加速するが、魔術を使う回数は多いほうがいい。


「まあ、当分は命にかかわるようなケガはしないと思うけど、今のうちになれておけばそういうやばいケガも治せるようになると思う」

「わかりました。がんばります」


 ミーリアは気合を入れるようにきゅっとこぶしを作る。

 どうやら、五人とも気合十分のようだ。


「じゃあ、明日さっそくグレイウルフを倒してみようか!」

「「「「「おーーーー!」」」」」


 5人は元気よく返事をした。

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