第114話 五輝聖の力
「おーいリュート、早くやろうぜー」
クロウの代わりに中央に仁王立ちするキューがやる気満々で俺を読んでいる。
その右手にはクロウの得物より更に太くて長いロングソードが握られ、一切の重さを感じさせる事無く片手でブンブン振り回している。
その剣オモチャじゃ…ないよね。
こちらにも目論見があって受けた話とはいえ危険度を見誤ったかな。
怪我しないように頑張ろ。
仕方なくマリダから剣を受け取り練兵場の中央に歩み出た。
「お手柔らかに頼むよ」
「何言ってんだい。リュートは
「じゃあ準備はいい?キューは
「はいはい」
ん?知らない単語だ。
「
「貴方はリシャールで見たでしょ。まるで幻を見ているかのようだと陛下が名付けて下さった私達が使える特別な力よ。私は特別とも思わないけど貴方には危険すぎるから」
「ふーん。近くで見てみたい気もするけどな」
「怪我しても構わなないなら解禁するわよ」
「それは勘弁」
「じゃあ始めましょう。いい?」
オデッサが俺達から離れながら最後の確認をする。
「始め!」
『ガキン!!』
合図と共に左横からの衝撃に吹っ飛ばされた。
キューの突進は電光石火と呼ぶに相応しい速さだ。5メートルはあった間合いを一瞬でゼロ距離まで踏み込んできた。
そのスピードとパワーは今まで組手をしてきたアジェントや衛士たちの比ではない。やはり身体的要素とは別の力を感じる。
油断することなく
それでも前の経験から相手の動きはゆっくりと見えるはずなのにキューの動きは極々普通に見えた。それだけ動きが速いという事だが逆に言えば俺の動きと同じスピードと言う事だ。
(いけるか)
キューの斬撃に飛ばされながら着地と同時に剣を振るうがあっさりと躱された。
「ひゅー、あたしの初撃を防いで斬り返してきた!サイコーじゃん。そりゃクロウじゃ勝てないって。ヒャッホー、楽しいぞ!」
それから繰り出された攻撃は正に嵐の様だった。一撃の重さは体重で勝る俺の体幹がズレる程の衝撃を伴い襲ってくる。受けを間違えばこの重くて頑丈な剣でさえマリダの言う通り折れかねない。
キューの表情を見れば、まぁ楽しそうだこと。
新しい玩具で遊ぶ子供みたいだわ。
「ウッヒョー」とか言ってるし。
やってる事は全く反対の剣呑極まるものなのに。
これだけの力だ。全開にする機会などほぼ無いだろう。多分、相手をしてやれるのは同じ五輝聖だけなんじゃないかな。
でもこれはアレだな。はしゃぎすぎて玩具壊して泣くパターンだ。もう少し考えて遊びましょ。
かなり厳しい状況だけどやりようがないわけでもない。
圧倒的なパワーとスピードを持つが故なのか技が磨かれてない。
その必要が無かったからだろうがセンスだけで戦ってる感じだから、結構動きに無駄があるし所々に隙が見える。
偉そうに言っても簡単なわけじゃない。何しろ普通なら圧倒されるパワーとスピードなんだから。偶に繰り出すこちらの攻撃も鮮やかに受けられ躱される。
殆どの時間を防御に費やしながらその時は来た。
『ガキィン』
鈍い金属音と共に俺の剣が折れ砕ける。
ニヤリとキューの口角が上がるのが見える。
当然、ここが決め時と次の一撃が迫るが力みのせいでかなり大振りだ。
俺がこの瞬間を待っていたとも知らずに。
踏み込みながら折れた剣の柄をキューの左側に投げつけ右側への動きを誘導して上体を開かせながら振り下ろされる右手首をつかむ。
その腕を外に捻り肘を極めながら腕の下に潜り込み体を翻し一気に投げを打つ。
そのまま地面に叩きつけるのが正しいのだが与えるダメージが大きすぎて模擬戦の域をはみ出してしまいそうなので途中で手を離して空中に放り投げた。
普通ならそのまま背中から落ちて終了なんだが、そこはさすが
剣こそ手放したものの空中で華麗に捻りを加えて体勢を立て直して着地しやがった。
猫かお前は!
しかも着地と同時に突っ込んできやがる。
剣がない分動きが良くなった気さえする。
突っ込んでくるその顔は脳筋全開の笑顔だ。
第二ラウンドは無手格闘戦で決定の様です。
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