第112話 対戦カード
「キュー、いきなりは失礼だといつも言ってるでしょ」
オデッサの叱責をどこ吹く風と気にする事もなくキューと呼ばれた少女は悪びれる事なく続ける。
「何でオデッサさんと一緒にいるのかなーって思っただけ。貴族じゃないんでしょ?ならいいじゃん」
「そうはいかないの。お客様なんだからちゃんとしてちょうだい」
俺としては自分の不用意な発言の結果だが平手打ちをくらっているので既にどうでもいい話だ。
「気にしないでいいよ。俺もその方が話しやすい」
「ほら、本人がそう言ってるんだから問題なし。ニヒヒ」
「確かリシャールにいたよね?ひょっとして
「そう、
「その呼び方は誤解だから勘弁してくれ。俺はリュートでこっちはマリダ。普通に名前呼びで頼む」
「ふーん、じゃあ宜しくリュート」
立ち上がって差し出されたキューの右手を握ると驚くほどの力で握ってきた。
身長は俺とマリダの中間位でほぼ大人なんだけどこれはあれだ。悪戯っ子がそのまま大きくなったタイプだな。
ならばとこちらも相手の親指の付け根を抑えながら掌を捻り込み相手側に押し込んでやる。
「痛たたたた。参った、参った」
手首を軽く極めただけだから周りは訳が分からずポカンとしている。
「おー痛ぇ。やっぱり四百人殺しじゃないか。何したの?」
「悪戯のお礼だ。迂闊に悪戯ばかりしてるとこういう事もあるって事。勉強になったろ?」
「戦場で握手なんかしないじゃん。でも他にもできるんだろ?面白そうだから対決しようぜ」
面白そうってそんなのでいいのか?
返事に困ってオデッサを見る。
「そうね。腕前を見たくて連れてきたんだからちょうどいいわ。キューが相手をしてちょうだい。でも怪我させるようなのは駄目よ。彼らは
「分かってる、分かってる。ひょー、四百人殺しと対戦できるぞ!」
「なら私もお願いしますオデッサさん」
「あっクロウ、新入りのくせにズルいぞ」
「こういうのは早い者勝ちでしょ」
はしゃいでいるキューの横で声を上げたのは昨日オデッサと一緒にいた少女だ。
周りの他の女達が抜け駆けを責めるようなセリフを口にするが気にする素振りは見せない。
「その内容を見て
「クロウにはまだ早いと思うけど…分かったわ。相手も二人だし内容によってはアディーに話をしてあげる。貴方達もそれでいいかしら?」
話を振られたのでマリダを見ると苦笑いの様な表情で頷いている。
「ああ、そっちがいいなら俺たちは構わない」
「はいはいはい、じゃあ相手はリュートがいい。男と戦った事ないし」
「じゃあクロウはマリダさんね。クロウもそれでいい?」
「私はどちらでも構いません。どちらが相手でも負ける気はありませんからオデッサさんにお任せします」
「あなたも
そんなやり取りを聞いているとマリダが小声で話しかけてきた。
「随分と下に見られているようですけどどうしますか?」
「彼女たちは精鋭だ。仕方ないだろ。取り敢えず力量が分かる程度に絡んでみてからだけど、ここでは勝っておいた方が後々話ができそうだ。マリダは競り勝った程度の演出でいいんじゃないか?モードの選択は自由にしていい」
「分かりました。データを収集してからの決着を目指します」
「俺の方はどうなるか分からんから成り行き任せだな。最悪負けるかもしれんが何とかなるだろ」
小声でそんな打ち合わせをしているとオデッサが振り向いて声をかけてきた。
「それで二人もいいかしら?」
「ああ」
「じゃあ組み合わせはキューがリュートと
「はい、任せて下さい」
さあ
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