第8話
「あんた……シヌシヌっていったけ? 魔導師なんでしょ? 魔法でズンズン達を強化したのね。じゃないとおかしいもん、どう見ても普通の動きじゃなかった」
チィコの推理は当たらずとも遠からず、シヌシヌが得た呪いの力によって爆散隊は人間離れした戦闘力を手に入れた。
「ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいず。私だって強化魔法があれば、あれ位戦えるもん。次の戦では私にもかけてよね」
「次はない。君とはここでサヨナラだ」
「は?意味分かんない。ダメに決まってんじゃん。付いてくから」
「好きにするといい。我ら爆散隊の仲間には入れない」
「勝手にするし!」
シヌシヌはズンズン達にもチィコを相手にしないように指示し、旅を再開した。
チィコはむくれながらも付いてくる。
――どこかのタイミングで多分諦めるだろう。そしたらこっそり誰かにカソまで見送らせよう。
シヌシヌはやはりどこか甘い。
そろそろ日が暮れかかっている。
まもなく次の村に着く、そこで宿を借りる算段でいる。
この日の目的地、ヒゴは明らかに様子がおかしかった。
住居が所々壊され、村人は深刻な顔で慌ただしく動き回っている。
村全体が殺気立ち、あちこちで揉める声が聞こえる。
しばらくボーッと突っ立っていたシヌシヌ達。
一人の若い村人がようやく気付いてくれた、カリカリした様子で一行を問い質す。
「誰だあんたら、何しに来た?」
「旅の者です、今夜宿を借りようと立ち寄りましたが、何かあったんです?」
「付近に住むゴブリン共に若い女を
確かに、先程から忙しく動いているのは男ばかりだ。
さて困ったなと、シヌシヌは頭を掻いた。
「私達に任せて。ゴブリンなんかぶっ倒して村の人を救い出してあげる」
チィコが口を挟んだ。
「おい……勝手に……」
「手を貸してくれるなら有難い。準備が整い次第、明朝にでも襲撃をかけるつもりだったんだ」
すると別の中年男性が割って入る。
「余所者に調子のいい事吹かすな。襲撃なんてしたって勝てる訳ないんだよ」
「だったら拐われた女はどうするんだ?見捨てるのか」
「交渉するんだよ、条件を提示して」
「ゴブリンにそんなもの通用するかよ。仮に交渉出来ても全員は返ってはこない」
「だからって襲撃に失敗したらこの村は終わりだ」
「村の女が返ってこなけりゃどっちにしろ終わりだ」
村の中でも意見が割れているようだ。
こんな状態では襲撃も交渉も失敗するだろう。
「だから私達に任せてって言ってるでしょ。ここにいる六人で拐われた人、皆連れて帰ってあげる」
チィコが自信満々に宣言する。
「無理だろ……どうやって……」
「無理じゃない!私達はついさっき道中でピンクスパイシーをボッコボコに蹴散らしてきたのよ!」
村人はピンクスパイシーの名にピクリと反応、この辺りではかなり悪名が轟いているらしい。
「……それは本当か?」
「本当!任せなさい!」
――こいつ……調子に乗り過ぎだ……
「おい、さっきから勝手に話を進めるな。俺はやるなんて言ってない」
「何で?この人達困ってるんだよ。助けたっていいじゃん。シヌシヌは強いんだよね」
「そんな事やってる暇は……」
シヌシヌはチィコを見る、懇願するような顔。
さて困ったなと、シヌシヌは頭を掻いた。
自分の甘さに呆れ果ててしまう。
「条件がある、ゴブリンを倒したらカソへ帰れ。そしたらやってやる」
「は?なんで?やだよ。勝手に付いてこいって言ったじゃん」
「ならこの話はなし。やむを得ん、今夜は野宿だ」
しばしの沈黙……。
の後、チィコは口を開いた。
「………………分かった、終わったら村に帰る。この村を助けて」
チィコは真剣な目、それを確認してシヌシヌは二人の村人に向き直った。
「村長の所に案内してくれ」
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