彼女がお祭りにふんどしを締めてきた話

なんにもない 〜ゆきちゃんと小腹空いた〜

「ね、なんか小腹空かない？」

「お夕飯から時間経ってますね。何か食べますか？」

「うーん。たぶん家なんにもないんだよね」

「ほんとですね。冷蔵庫も醤油しかないです……。カップラーメンとか蓄えてないんですか？　弓槻（ゆづき）さんみたいに」

「買おう買おうと思って忘れちゃうんだよね」

「もう……、コンビニでも行きますか？」

「風呂入っちゃったし、めんどくない？」

「なんというていたらく……」

「あ、冷凍庫にうどんがあったかも！」

「あ、あります。２玉ありますよ！」

「でも、スープの出汁がない……」

「えぇ、なんのためにうどん買ったんですか……」

「うーん。困った」

「あ、ごま油があるじゃないですか！　これでうどんできますよ！」

「ごま油で？」

「はい。焼きうどんみたいな」

「へぇー、おいしそうだね」

「さっそく作りましょうか」

〈ピロン〉

「あ、メールだ。ぐえっ、部長から……。ごめん、ゆきちゃん。ちょっと返信するね」

「じゃあ、その間にさっと作っちゃいますね」

「うん。ありがとう」

「えーっと、ごま油を大さじ……」

〈どぼどぼどぼ……〉

「侑希さん！　できましたよ！」

「お、めっちゃいい匂い！　はぇー、おいしそう。こんな油そばみたいになるんだね」

「はい。ぜひ食べてみてください！」

「いただきます！　うぉっ！　うめぇっ！　めっちゃ油がしっかりしてる。背徳感たっぷりな油系のカップラーメンみたいな感じ！　すごい、おいしいよ」

「えへへ。ありがとうございます♪」

「これができたら、うどんとごま油だけでごはんになるね。どうやって作ったの？」

「フライパンにごま油を大さじ４くらい————

「え？」

「へ？　どうしました？」

「え？　今なんて？」

「フライパンにごま油を……」

「そのあと……」

「大さじ４くらい入れて、うどんを炒めれば……」

「４……？」

「はい。４です」

「大さじ、４……？」

「はい。大さじ４です」

「ゆきちゃん、これ食べたことある……？」

「私はないですけど、雪斗（ゆきと）が小腹空かせてた時に、適当に作ってあげたらおいしいっていうので……」

「あの、おいしいんだけど……。ごま油大さじ４って……」

「もしかして、多いですか……？」

「脂質のグラムで計算したら大変なことになりそう……」