紅茶 〜ゆきちゃんと味〜



「あ、ゆきちゃん。おじゃまするよ」



「どうぞあがってください」



「はぁ、疲れた」



「侑希さんって私の家来る時いつも疲れてますよね」



「あー、なんか口癖みたいになってるかも」



「わかります。職場で帰りたいが口癖になって、遊びに行っても帰りたいって言っちゃうみたいな」



「いるよね。そういう人」



「はい。あ、何か飲みますか? ちょうど喫茶店でいい紅茶を買ってきたんですけど、よかったらどうですか?」



「お、おいしそう。お願いしてもいい?」



「はい、ちょっと待ってくださいね。すぐ淹れますから」



〈ポー〉



「どうぞ、おまたせしました」



「ありがとう。ねぇ、〈ポー〉って何? もしかして、やかんで沸かしてる?」



「いえ、ボタンひとつですぐに百度のお湯ができる家電製品を使ってますけど」



「じゃあ、ポーはおかしいでしょ……」



「お茶を淹れる擬音ってこれが一番よくないですか?」



「ゆきちゃんがこの擬音つけてるの?」



「そんなことは今はいいんです! どうですか? お茶のお味は?」



「すっごいいい香りだね。キッチンからすでにいい匂いがしてたもん」



「袋を開けた時がすごいんですよ」



「でも、僕あんまり紅茶飲まないんだよね」



「そうなんですか?」



「うん。あんまり味しなくない? だからもしかしたらあんまりいい感想言えないかも……」



「まぁ、香りが紅茶の醍醐味ですけど。でも、これは私が淹れてもおいしいんです。盗まれたと思って」



「騙された、ね。じゃ、じゃあ、いただきます。……」



「……」



「・0・」



「だから、縦組で読んでくださる人には顔文字に見えないんですって」


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