日常に戻った
「はぁ、また戻ってきちゃった」
「しょうがないです。いつまでもご実家で遊んでいるわけにはいかないんですから」
「……そうだね。あれ? 雪斗君は?」
「実家に帰りましたよ。授業があるって」
「そうか。そうだよね。あのさ、ちょっと気になったことがあるんだけど……」
「なんですか? 『落成』という言葉は、工事が終わって、建築物ができあがったことを指すのに、なぜ『落』という漢字が使われているのか気になってるんですか?」
「そんなこと気にしたこともないよ」
「でもおかしくないですか? 『あの城を攻め落とせ!』と同じ漢字を使っているのに意味が全く逆なんですよ」
「知らない知らない。先生なんだから自分で調べてよ。じゃなくて、雪斗君のこと」
「雪斗がどうかしたんですか?」
「前にさ、君の実家に行った時は雪斗君ゆきちゃんにすごく冷たかったじゃんか。それなのに、僕の実家の時はやけにゆきちゃんに従順だったでしょ。それがちょっと気になってるんだよね」
「そういえば……、普通に添い寝してくれましたね。うーん。なんででしょうか?」
「確か雪斗君がゆきちゃんに冷たく当たってた理由って、中学生にもなってゆきちゃんに甘えるわけにはいかないから、姉を卒業しようとしたんだったよね?」
「そうだったと思います。ということは、普通に甘えたくなったんでしょうか?」
「どうだろう。……そういえばさ、雪斗君が僕の実家に来た理由って、ゆきちゃんのアパートに遊びに行こうとしたからだったよね。……。あ。わかっちゃったかも」
「雪斗が私に甘えてくれた理由ですか?」
「うん。たぶんだけど、人の目じゃないかな?」
「ひとのめ? 他人の目線が気になるのなら、侑希さんと弓槻さんのいる場所で私に甘えることなんてしなくないですか?」
「雪斗君を知ってる人がいるかいないかだと思う。たとえ僕と姉さんの前でゆきちゃんに甘えてたとしても、雪斗君のご両親がいる実家みたいに、何かを言ってくる人がいないでしょ。だから、じゃないかな?」
「つまり、雪斗が甘えてるところを見ても、からかったり、他の人に言いふらしたりしないってことですね。確かに、侑希さんや弓槻さんは絶対にそんなことしないですから」
「そう思うと、やっぱり雪斗君かわいいな……」
「弓槻さんと同じで、侑希さんも私のライバルになるんですか!? 雪斗は渡しませんよ!」
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