フィクションです 〜ゆきちゃんと歴史の授業〜



侑希ゆうきさん。最近の研究でとっても面白い武将がいたかもしれないことがわかったらしいんですよ。興味ありませんか?」



「あー、ちょっとあるかも。小学生の頃はよく戦国武将の漫画とか読んでたなー。どんな武将なの?」



「はい。逸話破之介いつわやぶるのすけって名前なんですけど」



「変な名前だね。何をした人なの?」



「聞いて驚かないでください。なんと……」



「なんと……」



「三本重ねた矢を折り曲げた人なんです」



「は?」



「だから、三本まとめた矢をぽきっと折っちゃったんです」



「他には?」



「それだけです」



「それだけ!?」



「はい」



「え? 何もすごくなくない?」



「へ? すごいことですよ。ほら、昔の偉い人が言ってたじゃないですか。一本だと折れるけど、三本だと折れないって」



「いや、確かにそんな話は聞いたことあるけど……」



「それで戦国中に名を轟かせたみたいですよ」



「そんなことで轟くわけないよ」



「で、それが原因で他の強い武将から目をつけられることになっちゃって、すぐにお城を攻め込まれたそうなんです」



「攻め込まれた理由があほすぎると思うんだけど」



「それで四面楚歌、八方が塞がれちゃって」



「何してんの?」



「そこでなんとか切り抜ける方法がないかと必死で案を絞り出した結果、ある言葉を思い出したそうなんです」



「へー。どんな言葉だったの?」



「『三人寄れば文殊の知恵』です」



「すでに嫌な予感がするんだけど」



「城内屈指の知将を二人集めて、腕を組ながら三日三晩三人で考え込んでたみたいなんです。その結果、その間に城が落とされました」



「そんなあほな知将がいてたまるか」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る