第七百九十三話 5月28日/高橋悠里は帰宅して、父親のゲーム機器が届いたことを知った後にログイン
カレシの要に家まで送ってもらった悠里は、彼の姿が見えなくなるまで見送って、家の中に入る。
「ただいまー」
玄関で靴を脱ぎながら言うと、母親が出迎えてくれた。
「お帰り、悠里」
「ただいま、お母さん。お祖母ちゃんは?」
いつも出迎えてくれる祖母の姿が見えなくて、悠里は首を傾げる。
「お祖母ちゃんはお祖父ちゃんと一緒に和室で『アルカディアオンライン』をプレイしているわ。今日の午前中にはお父さんの『アルカディアオンライン』のゲーム機器が届いたわよ」
「そうなんだ。じゃあ家族全員『アルカディアオンライン』のプレイヤーだねえ」
家族全員と大好きなファンタジーVRMMO『アルカディアオンライン』の話ができるのは、すごく嬉しい。
「一人一台ゲーム機器っていうのはものすごく邪魔ね。無料だから仕方ないけど……。でも邪魔よ。掃除する時、面倒くさい」
悠里は母親の愚痴を聞き流しながら、通学鞄を二階の自室に置くために階段を上がる。
通学鞄を置いたら手洗いとうがいをして、それから制服から部屋着に着替えて『アルカディアオンライン』をプレイしよう。
諸々の作業を終え、しっかりおやつを食べた後、二階の自室に戻った悠里は通学鞄からスマホを取り出す。
「要先輩、もうおうちに帰ってるよね。送ってもらったお礼のメッセージを送って、今日はいつ『アルカディアオンライン』をプレイする予定か聞いてみよう」
スマホを悠里は要へのメッセージを書き始めた。
♦
要先輩、いつも家まで送ってくれてありがとうございます。
今日は『アルカディアオンライン』をプレイしますか?
私は晩ご飯まで『アルカディアオンライン』をプレイしたいと思っています。
時間が合えば、要先輩と一緒に遊べたら嬉しいです。
♦
悠里は要へのメッセージを送信して『アルカディアオンライン』をプレイする準備を整えた。
そして、ゲーム機とヘッドギアの電源を入れてヘッドギアをつけ、ベッドに横になり、目を閉じる。
「『アルカディアオンライン』を開始します」
サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。
気がつくと、悠里は転送の間にいた。
無事にログインできたようだ。
悠里はこの前マリーが着ていたオレンジ色のワンピースドレスを着ている。可愛い。
悠里がオレンジ色のワンピースドレスの裾を摘まんでくるりと一回転した直後、サポートAIの声が響いた。
「プレイヤーの意識の定着を確認しました。『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様」
「こんにちは。サポートAIさん」
悠里はサポートAIに挨拶をした後、今日の分の換金をしようと口を開いた。
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