第七百八十八話 5月28日/高橋悠里は昼休み、晴菜やクラスメイトたちと球技大会の話題で盛り上がる
一時間目の授業が終わると、悠里の後ろの席にいる晴菜はクラスメイトたちに取り囲まれてしまった。
新型コロナが蔓延してからは、仲の良い少人数だけで距離を取りつつお喋りをする習慣になっていたけれど、今日は、いつもは一緒にいないクラスメイトたちが集まって、球技大会の話題で盛り上がっている。
悠里は後ろの席の賑わいには加わらず、球技大会の試合の組み合わせ表のデータを見ることにした。
要と晴菜の試合がいつ行われるのかチェックしたい。
その後はサックスパートのメンバーやクラスメイトの女子たちの試合がいつ始まるのか確認しよう。
「えっ!? はるちゃんと要先輩の一回戦の試合時間、被ってる……!!」
悠里はショックを受けて思わず叫ぶ。
そして後ろの席の晴菜を振り返った。
「はるちゃん。なんで要先輩とはるちゃんの一回戦被らせたのーっ!?」
「仕方ないじゃない。そうなっちゃったの。悠里はカレシを教室でリモート応援すればいいよ。あたしは応援してくれるクラスの人いるし。何人かは体育館で応援してくれるでしょ?」
晴菜の言葉を受けて、クラスメイトたちが盛り上がる。
「オレ、松本さんを応援する!!」
「うちらクラスメイトだしね」
「高橋さん、カレシいるんだ。いいなあ」
要と晴菜を両方とも応援しようとしていた悠里の計画は脆くも崩れ去り、クラスメイトたちの盛り上がりについていけずに前を向く。
二回戦は要と晴菜の試合時間が被らないようなので、二回戦は、晴菜のことを頑張って応援したい。
悠里は、自分自身は卓球の一回戦で負ける気満々なので、自分の二回戦以降のスケジュールは見る気もない。
一回戦の相手は二年生の女子らしいが、フルネームを見ても全く覚えがないのである意味気楽だ。
元吹奏楽部員で意地悪をされた佐々木先輩と当たるとかだったら、本当に最悪だった……。
午前中の授業が過ぎ行き、給食を食べて、昼休みを過ごす。
昼休みも晴菜はクラスメイトたちに囲まれていて、悠里のその輪の中にいる。
大勢で過ごすのは、罪悪感もあるけれど楽しい。
新型コロナなんて全然無かった頃は、これが普通の光景だった。
大勢で過ごすことに、何のためらいも罪悪感もなかった小学生の頃が、すごく懐かしい気がする。
「駄菓子セットって全校生徒全員分用意してるの?」
「してるよ」
クラスメイトの男子の質問に、晴菜は肯いて言う。
「だったら余りとか出るんじゃない? だって全員が一回戦で勝つ人を当てられるわけじゃないっしょ?」
「余ったお菓子は生徒会スタッフの打ち上げでおいしく頂きます。あたしたちめちゃくちゃ頑張ったから、それくらいの役得があってもいいってことになったの」
「いいなあ、打ち上げ……」
「今からでも生徒会の手伝いしてくれたら打ち上げに参加できるよ。球技大会当日もやることいっぱいあるの。好きな人のこととかクラスメイトのことをガチで応援したい人にはおすすめできないけど」
「はるちゃん、私、何か手伝おうか?」
「悠里はカレシの応援してて。リモート応援になっちゃうのは残念かもしれないけど」
昼休みは終始、球技大会の話題で盛り上がり、昼休み終了の鐘が鳴ってもまだ、皆で名残惜しくお喋りをしていた。
五時間目の教科担任が教室に入ってきて、クラスメイトたちは慌てて自分たちの席に戻っていく。
悠里も気持ちを切り替えて、自分のノートパソコンの画面を見つめた。
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