第五百八十話 高橋悠里はお風呂を済ませて髪を乾かし、自室に戻って要からのメッセージを読み、彼が作ったカレーの写真を見て感動した後に返信してからログイン

お風呂から上がった悠里はパジャマを来て、洗面所で髪を乾かし、トイレに入って自室に向かう。

階段を上がりながら、悠里は要からのメッセージが来ているか確認するためにスマホを見ようと思った。


「今夜は要先輩とは『アルカディアオンライン』で会えないかなあ」


要とは今日、学校で会ってデートもしたけれど『アルカディアオンライン』の中でも会いたい。

だけど、要にも予定やゲームをプレイしたくない気分の時もあるだろうから、無理強いはできない……。


自室に戻った悠里はスマホを手にして、画面を見た。


「あっ。要先輩からメッセージが来てる……!!」


要が作ったカレーの写真が送られてきたのかもしれない。

悠里はわくわくしながら、要からのメッセージを確認する。





悠里ちゃん。メッセージ送るの遅くなってごめん。

後片づけとかしてたら、いつの間にか時間経ってて……。

食器洗いとか、いつも全部母親に任せてたんだけど、時間かかるんだね。知らなかった。

作ったカレーの画像を送るね。

ひとりで初めて作ったカレーだけど、結構おいしくできたと思う。

明日は、残ったカレーでカレーパンを作ろうと思ってるよ。

レシピ検索したら、割と簡単にできそうだったから。


これから『アルカディアオンライン』をプレイするから、もし時間が合えば、マリーちゃんと一緒に遊びたいです。

ゲーム内でもメッセージを送るね。





悠里は要からのメッセージを二度読み返した後、彼が送ってくれた写真画像を表示させた。


「うわあ。おいしそう……!! ランチョンマット敷いてて可愛い!! お高い洋食レストランで出てきそうなカレーだ……!!」


カレーの色味は黒が強く、肉は牛肉だろうかと悠里は想像する。

牛肉の他はにんじんとマッシュルームが入っているが、悠里はマッシュルームを『丸いもの』としか認識できなかった。

高橋家のカレーにも給食のカレーにも、マッシュルームが入っていたことが無いのだ……。


「要先輩すごい。ひとりで初めてカレー作って、しかも後片づけまでするなんて尊敬する……」


悠里は平日の晩ご飯の後と、休日に三食食べた後、自分の分の食器を洗うだけでうんざりしているのに。


「要先輩、もう『アルカディアオンライン』にログインしてるかもだけど、返信を書こう」


悠里はそう呟いて、要への返信を書き始めた。





要先輩。カレーの写真、ありがとうございます!

ランチョンマットひいてて可愛いです!!

カレーすごくおいしそうです……!!

要先輩が明日作るカレーパンもすごく気になります。

もしよかったら、カレーパンの写真を見せてもらえるとすごく嬉しいです。

無理そうだったらスルーしてください。


私もこれから『アルカディアオンライン』をプレイするつもりです。

ユリエル様とゲーム内で会えたら嬉しいなあと思います。





悠里は要に返信をして、スマホをベッドの枕元に置いた。

ゲーム機とヘッドギアの電源を入れてヘッドギアをつけた。

ベッドに横になり、目を閉じる。


「『アルカディアオンライン』を開始します」


サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。



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