第四百七十一話 高橋悠里は帰り道に要とデートの約束をして帰宅し、祖母に出迎えられて段ボール箱からゲーム機器を取り出す



「悠里ちゃんは中間テスト、どうだった? 手ごたえとかあった?」


帰り道、悠里の家に向かう途中に要が言う。


「英語は、要先輩と一緒に買った単語カードに書いていた英単語がテストに出たのでちょっとだけ自信があります。でも、テストが返ってこないといいのになあと思います……」


「テストで間違えたところを復習すると結構タメになるよ。わからないことがあったら教えるから言ってね」


「はいっ。ありがとうございます」


悠里は平均点以上を採れた科目のテスト用紙か、間違えたところだけをノートに写して要に見せようと思う。


「要先輩は今日、家に帰ったら『アルカディアオンライン』で遊びますか?」


「うん。今日はお父様にいろいろ報告とかして一緒に過ごしたいなと思ってる。外出しまくって心配かけたと思うから。マリーちゃんと遊べそうな時はメッセージを送るね。マリーちゃんの都合が悪ければスルーしていいからね」


「わかりました」


「悠里ちゃんの『アルカディアオンライン』での予定は?」


「えっと、まずは『銀のうさぎ亭』の庭にラブリーチェリーの種を埋めようと思ってます。あとグリック村で買った食材で料理もしたいし、真珠がスロットマシーンで遊ぶための椅子を作りに行きたいですっ」


「やりたいことがいっぱいだね」


「はいっ」


中間テストが終わって三連休が始まる。

思いっきり『アルカディアオンライン』で遊ぶんだ!!

悠里がゲーム三昧の日々に思いを馳せていると、要が口を開く。


「悠里ちゃん。明日の予定とか空いてる? 一緒にどこか行かない?」


「行きますっ」


悠里の三連休初日、テスト明け休みの金曜日は要とのデートの予定が入った。


要に送られて自宅に帰った悠里は彼の姿が見えなくなるまで見送って、家の中に入る。


「ただいま!!」


元気よく言った悠里は玄関で靴を脱ぐ。


「おかえり。悠里」


祖母が姿を現して悠里を出迎えてくれた。


「テストお疲れさま。ゲームが入った段ボール箱は悠里の部屋に置いておいたわよ」


「ありがとう。お祖母ちゃん」


「ねえ。悠里。最近、お祖父ちゃんが午前中とか午後に散歩に行かなくなって、誰も来ていないのに玄関のドアを開けて外を見たりしてるんだけど、何か知ってる?」


困った顔で言う祖母を見つめ、悠里は厳かな表情を浮かべて口を開いた。


「お祖母ちゃん。お祖父ちゃんにもいろいろあるんだよ。そっとしておいてあげようよ」


祖父は悠里が『アルカディアオンライン』で頼んだ花束が置き配されていないか確認してくれているのだと思う。

ありがとう。お祖父ちゃん。

そして祖父は祖母と母親にサプライズで花束を贈りたいという悠里の気持ちを尊重して祖母に不審なまなざしを向けられても黙ってくれているのだ。

祖母への花束は、祖父に渡してもらおうと悠里は思う。


つけていたグレーの不織布マスクを外してリビングのゴミ箱に捨てた悠里は洗面所で手洗いとうがいをして、トイレに入り自室へと向かう。

生理は終わりかけているけれど、まだ薄いナプキンをつけている。

でも下腹が痛いとか、身体が怠いということは無いから嬉しい。


自室に入って通学鞄を机の上に置き、制服から部屋着に着替えた悠里は段ボール箱に入ったゲーム機器を出してベッドの上に置く。

それから学校で支給されたノートパソコンとスマホを充電をした。




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