第四百五十二話 マリー・エドワーズと真珠はベッド下で丸まった紙を見つけ、ベッド下から這い出て『リープ』する
ライトの明かりを頼りに、真珠はマリーが翳してくれた虫眼鏡を覗き込みながらベッドの下を這い進む。
マリーは左手で『識別の虫眼鏡』を持って真珠の顔の前に翳し、右手で身体を支えて這い進んでいるのでものすごく疲労している。
「わうー!! わんわんっ!!」
マリーが真珠に引き返そうと弱音を吐こうとしたその時、真珠がマリーを見つめて吠えた。
「真珠。何か見つけたの?」
「わんっ」
真珠は肯いてマリーが翳している虫眼鏡のレンズを見た。
「あ。本当だ。……紙?」
マリーは丸まった紙を手に取る。
真珠に虫眼鏡を翳すことに集中していて、丸まった紙……ゴミのような紙……に気がつかなかった。
探検の成果を得て満足した真珠はマリーに肯き、後ずさりを始めた。
マリーは左腕の腕輪に丸まった紙と虫眼鏡を触れさせて収納し、真珠に倣って、這いつくばったまま後ずさりをする。
真珠とマリーはベッド下から這い出て、マリーは『ライト』の光の玉を消した。
「くしゃんっ」
真珠は鼻がむずむずしてくしゃみをした。
「やっぱり真珠も私も埃まみれになっちゃったね」
「くぅん……」
真珠は足の裏や身体にくっついた灰色のふわふわが埃だと理解して項垂れる。
マリーはベッドを背にして床に座り、真珠に両腕を差し伸べる。
「真珠。おいで」
「わんわんっ。わうー」
真珠がマリーに駆け寄り、マリーは真珠を抱っこして微笑む。
「今から転送の間に行って戻るからね。そうしたら私も真珠も綺麗になるからね」
「わんっ」
マリーは肯いた真珠の頭を撫でて口を開いた。
「リープ」
マリーの意識は暗転した。
転送の間に転移した悠里はサポートAIに挨拶をした後、鏡の中に入っていく。
マリーは目を開け、二度瞬いた。
「わうー。わううぅ」
マリーの腕の中にいる真珠がマリーを見上げて尻尾を振る。
真珠の白い毛並みは滑らかで綺麗だ。
『リープ』をして戻ったので、埃が消えて綺麗になっている。よかった。
マリーの髪や手にまとわりついていた埃もなくなっている。
この状態ならベッドの上にあがってもいいと判断したマリーはベッドに座ってブーツを脱ぎ、ブーツをアイテムボックスに収納する。
真珠も身軽にベッドの上に飛び乗った。
「まだユリエル様は眠っているね」
マリーは眠るユリエルの様子を窺って、小さな声で言う。
真珠はユリエルが早く目覚めるといいのになと思いながら肯いた。
マリーは真珠の頭を優しく撫でて口を開く。
「真珠が拾った紙を見てみようか。でも部屋が少し暗いね」
部屋の中は薄暗い。
紫月は夜以外は雨が降っているので、朝や昼間だとしても薄暗いのだ。
紙に書かれた内容を確認するにはもう少し明るい方がいいかなと思いながらマリーは部屋を見回した。
ベッドサイドにランプがあったが、魔力を込めるタイプではなく『銀のうさぎ亭』の寝室にあるようなマッチで火をつけるタイプだ。
ランプの隣にマッチ箱があるけれど、マリーは火をつけるのが怖かったので再び『ライト』を使うことにした。
***
紫月27日 夕方(4時55分)=5月17日 20:55
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