第四百七話 マリー・エドワーズはユリエルに『フローラ・カフェラテ』を渡し、マリーと真珠は『フローラ・カフェラテ』を半分こして、バージルは情報屋の恋人あっせん事業の顧客になる



領主館に向かう途中、ユリエルとバージルは馬車の中で自己紹介をして、その後、フレンド登録をする。

ユリエルの隣に座り、マリーは真珠を膝の上に乗せながらユリエルの横顔を見つめた。

真珠はマリーの膝の上から下りて窓の側に座り、窓の外の景色を楽しそうに眺める。


ユリエルとバージルのフレンド登録が終わった後、バージルは情報屋と商談を始めた。

マリーは領主館に着くまでの時間に、ユリエルに『ラブリーチェリー』を半分こして食べることができるかもと思ったが、馬車の中で『ラブリーチェリー』が入った木箱を出すのは難しいと思い至り、諦める。


「そうだ。『フローラ・カフェラテ』と『フローラ・バナナマフィン』があるんだ。ステータス」


マリーはアイテムボックスから『フローラ・カフェラテ』を取り出してユリエルに差し出す。


「あのっ。ユリエル様。よかったら『フローラ・カフェラテ』をどうぞ。この前、フローラ・カフェ港町アヴィラ支店で買って、アイテムボックスに収納していたんです」


「いいの? ありがとう。マリーちゃん」


ユリエルはマリーから『フローラ・カフェラテ』を受け取って微笑む。

マリーはユリエルに『フローラ・カフェラテ』を渡し終えた後、アイテムボックスからもう一つ『フローラ・カフェラテ』を取り出した。そして真珠に視線を向けて口を開く。


「真珠。『フローラ・カフェラテ』を飲もう。真珠は私と半分こしようね」


元々はマリーと真珠の分として『フローラ・カフェラテ』を二つ買ったのだが、マリーはユリエルに『フローラ・カフェラテ』を一つ渡して、自分と真珠でもう一つの『フローラ・カフェラテ』を半分こすることにした。

真珠の『フローラ・カフェラテ』を半分に減らしてしまった代わりに、真珠にマリーの分の『フローラ・バナナマフィン』をあげるつもりだ。


「わうー。くぅん?」


窓の外を見ていた真珠は名前を呼ばれてマリーに歩み寄り、膝の上に乗る。


「真珠。『フローラ・カフェラテ』を飲もうね」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯いて尻尾を振る。


「まずは私がひとくち飲んで『フローラ・カフェラテ』が熱すぎないか確認するからね」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯く。

マリーは真珠が肯いたのを確認して『フローラ・カフェラテ』をひとくち飲んだ。

熱いけれど、熱すぎるということはないような気がする……?

でも、もしかしたら真珠には熱いかもしれない。

マリーは『フローラ・カフェラテ』のプラスチックの蓋を外して、蓋を左腕の腕輪に触れさせて収納した。

それから息を吹きかけてカフェラテを冷ます。


「ふーっ。ふーっ。ふーっ。……もう大丈夫かな?」


ユリエルはマリーから渡された『フローラ・カフェラテ』を飲みながら、真珠のためにカフェラテを冷ましているマリーを微笑ましく見つめる。

ユリエルとマリー、真珠の向かい側に情報屋と並んで座っているバージルは情報屋との商談の最中、ユリエルに視線を向けて口を開いた。


「なあ。情報屋。マリーとユリエルからリア充実爆発しろ的オーラを感じるんだけど、あいつらリアルで付き合ってんの?」


「ゲーム内でリアルの情報の詮索は厳禁ですよ。バージルさん。それと、ゲーム内での恋愛をご希望でしたら、私の方でプレイヤーかNPCをご紹介できます。仲介手数料は頂きますし、恋人になる、結婚するといった場合にはカップル成立報酬を頂戴します。紹介するにあたり、誓約書を書いていただくことになりますが、それでも宜しければ……」


「情報屋、カノジョ紹介してくれんの? マジで?」


バージルは情報屋の言葉に食いつく。

金策のつもりで情報屋に会ったはずのバージルは情報屋にゲーム内通貨を払う側になりそうだ……。


真珠がマリーが冷ましたカフェラテをおいしく飲んで、バージルが情報屋に自分の理想の女性のグラフィックを熱く語っているうちに馬車がゆっくりと減速して停止する。

マリーたちは領主館に到着した馬車から下りて、領主館内に入った。


***


紫月22日 夕方(4時34分)=5月16日 14:34



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