第四百六話 マリー・エドワーズたちはユリエルが情報屋のパーティーに入るのを見守り、馬車に乗って領主館に向かう



情報屋が発動させた『ウィンドウォール・キューブ』に守られ、雨を避けながらマリーたちは領主館から馬車が来るのを待った。

馬車を待つ間にマリーはバージルに今の状況を説明する。

バージルはすでにワールドクエスト『消えた孤児たちを追え!!』を受注していたので、情報屋に情報を売りながらマリーたちに同行するということで合意した。


バージルと情報屋が商談をしている間、マリーは真珠を抱っこして馬車を待ちながら歌を歌い始めた。

幼稚園生の時、雨が降った日に祖母と歌った歌だ。歌詞はうろ覚えなので適当だ。

真珠は耳をぴくぴくと動かしながら、マリーの歌を楽しそうに聞いている。


教会に近づいてくる馬車を見つけたマリーは、はしゃいで声をあげた。


「あっ!! 馬車が来た!!」


「わうわうーっ!!」


商談をしていたバージルと情報屋は大喜びしているマリーと真珠に気づいて商談をやめ、馬車を待つ。


馬に騎乗した護衛騎士ふたりに先導された紋章付きの豪奢な馬車が教会の前に停まり、傘をさした御者が馬車の扉を開けると輝く金の髪と濃い青色の目が美しいユリエル・クラーツ・アヴィラが姿を現す。


「ユリエル様……っ」


「わうわう……っ」


マリーと真珠はユリエルに会えて嬉しくて、それぞれに彼の名前を呼んだ。

御者に傘をさしかけられたユリエルはアイテムボックスから『ガード・アンブレラ』を出して傘を開き、傘をさしてマリーと真珠に歩み寄る。


「マリーちゃん。真珠くん。迎えに来たよ。待たせてごめんね」


微笑んで言うユリエルに、マリーと真珠は嬉しくて照れた。

初めてユリエルを見たバージルは筋肉が無いひ弱なグラフィックのままなんだなと思い、情報屋はこっそりとユリエルの傘を鑑定する。


ユリエルは『ウィンドウォール・キューブ』がマリーたちを包んでいることに気づいて首を傾げ、口を開いた。


「マリーちゃんと真珠くんは傘をさしていないのに雨に濡れてないんだね。雨避けの魔法があるの?」


「情報屋さんが『ウィンドウォール・キューブ』っていう魔法を使ってくれているんですっ。無料で!!」


無料!! 大事な情報だ……!!

マリーが胸を張って言った後、情報屋が口を開く。


「ユリエルさんが私のパーティーに入ってくだされば、ユリエルさんにも『ウィンドウォール・キューブ』の効果を波及させることができますが、どうしますか?」


情報屋の言葉を聞いたユリエルは少し考えた後、口を開いた。


「じゃあ、俺もパーティーに入れてもらおうかな。よろしくお願いします。情報屋さん」


「わかりました。ではユリエルさんにパーティー申請を送りますね。ステータス」


情報屋がユリエルにパーティー申請を送り、ユリエルはそれを受けた。

ユリエルも情報屋の『ウィンドウォール・キューブ』に包まれると、彼はさしていた傘を閉じる。

マリーと真珠はユリエルの傘に入れて貰えなくなってがっかりしたが、騒ぐことなく黙っていた。

それから、情報屋の『ウィンドウォール・キューブ』に守られた一同は馬車に乗り、馬車はゆっくりと走り出す。

馬車は道を歩いているプレイヤーやNPCの注目を集めながら領主館へと向かった。


***


紫月22日 夕方(4時15分)=5月16日 14:15



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