第四百一話 マリー・エドワーズたちは『歌うたいの竪琴』でマーキースの母親と話す



マリーが店内に入ると見覚えのある女性が勢いよく席を立ち、腕輪を嵌めた左手を振る。


「マリー・エドワーズ様!! こちらです!!」


「ローラさんっ。様付けはやめてください……っ」


マリーは急いでローラがいるテーブルに駆け寄る。

情報屋と真珠もマリーの後に続いた。

店内はほどほどに賑わっている様子だ。

ローラはマリーに満面の笑みを浮かべて口を開く。


「今、うちの劇団でお店を貸し切りにしてるんです。夕方になる前に撤収予定なので、今、来ていただいてよかったです」


「ローラ。幼女の知り合いがいたのか」


「可愛いっ。頭撫でてもいい?」


「白い子犬も可愛い……!!」


劇団員たちがマリーと真珠を見て口々に話し出す。


「マリー・エドワーズ様はマダムとお話がしたいと仰っています」


ローラは30代くらいに見えるイケメン男性NPCの隣にいる化粧が濃いNPC女性に視線を向けて言った。


「私と話したいというの? 嫌よ。私は話すことなんて無いわ」


感じ悪く断った女性NPCにもめげず、マリーは頑張って話しかける。


「あのっ。おば……じゃなくてお姉さんはマーキースのお母さんですかっ?」


「あら。あなたマーキースを知っているの?」


「はいっ。マーキースは私と真珠と情報屋さんのお友達ですっ」


「わんわんっ」


「そう……。あの子は今、どうしているの? 父親と一緒にいるのかしら?」


「えっと、独立して頑張ってると思いますっ。それでですね、聞きたいことがあるんですっ」


マリーはマーキースの母親に雑に返事をして、一気に自分の言いたいことを口にする。


「ウォーレン商会って船とか持ってますかっ? マーキースのお父さんが船で向かうとしたら、どこに行くかとかわかりますかっ?」


マリーの問いかけを聞いたマーキースの母親は少し考えて口を開いた。


「船は一艘持っていたと思うわ。あの人が船で行くとしたら『ヘヴン島』でしょうね」


ヘヴン島。知らない名前だ……!!

マリーと真珠が知らない名前でも、きっと情報屋は何か知っているはずだ。

マリーと真珠は期待を込めて情報屋に視線を向けた。

マリーと真珠に視線を向けられた情報屋は肯いて口を開く。


「『ヘヴン島』というのは移動する島『ヘルアンドヘヴン』の略称ということで宜しいですか? マダム」


「ええ。そうよ。アヴィラの港から希望者を無料で船に乗せて『ヘヴン島』に行くの。あの人も再起するために『ヘヴン島』に行ったんじゃないかしら」


無料で船に乗れる!!

その船に子どもたちもいるかもしれない!!

そしてマリーと真珠は船に乗ってみたい!! 無料で乗れるのなら!!


「情報屋さん!! 港に行きましょう!!」


「わんわんっ!!」


マリーと真珠は攫われた孤児たちの行方についての有力情報を得て、張り切って言う。

だがマリーと真珠のやる気に水を差したのはマーキースの母親だった。


「『ヘヴン島』行きの船はたぶんもう、出航しているはずよ。一度出航したら5日間は戻らないわ」


マーキースの母親の言葉を聞いたマリーは絶望した。

真珠は絶望に打ちひしがれるマリーを心配そうに見つめる。


「マリーさん。とりあえず教会に死に戻りましょう。私に考えがあります」


情報屋の言葉を聞いて、マリーは絶望から立ち直った。

そしてマリーはローラに視線を向けて頭を下げる。


「ローラさん。また今度、お礼をしますねっ」


「お礼は乙女系クエストの創造でお願いします……っ」


ローラの要望は壮大だった。

マリーは乙女ゲーム好きプレイヤーとして頑張ろうと思いながらローラに肯き、そして『ライト』を使って教会に死に戻った……。


***


マリー・エドワーズのステータス値の変化


MP 39/39 → MP 0/40


ライト レベル2(150/200)→ ライト レベル2(160/200)


紫月22日 昼(3時28分)=5月16日 13:28

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