第百二話 マリー・エドワーズと真珠はビー玉で遊び、母親と一緒に出かけたいと言い張る
マリーは母親を待つ間に真珠と、クレムから手に入れたビー玉で遊ぶことにした。
アイテムボックスからビー玉を取り出して眺める。クレムはガラクタだと言ったけれどマリーは綺麗なビー玉だと思う。
「真珠。今から真珠のところにビー玉を転がすから受け止めてね」
「わんっ」
「行くよー」
マリーは真珠に向かって、床にビー玉を転がした。ビー玉は真珠のところに真っ直ぐには転がらずに斜めに転がってしまったが、真珠は身軽にステップを踏み、ビー玉を従魔の輪が嵌まった右の前足でキャッチした。
マリーは拍手して真珠を称える。
「真珠、上手!! 私、うまく転がせなくて曲がっちゃったのに取ってくれてありがとう」
「わぅわううわうわ」
「今度は真珠がビー玉を転がして。私がキャッチするね」
「わんっ!!」
真珠はキャッチした右足でビー玉をはじいた。
ビー玉は一直線にマリーの足元に転がってくる。マリーは身を屈めてビー玉を手のひらでキャッチした。
「わんわんっ!!」
マリーがビー玉をキャッチしたのを見て、真珠がはしゃいで駆けまわっているとカウンター奥から母親が戻って来た。
エプロンを外して、出かける準備を終えている。
母親が戻って来たことに気づいたマリーはビー玉をアイテムボックスに収納した。真珠はマリーに駆け寄る。
「マリー。お母さんは出かけるから、お祖母ちゃんたちの言うことを聞いて、シンジュと一緒にいい子で待っているのよ」
カウンターから出て来た母親がマリーを見て、言う。
「私と真珠も一緒に行くっ」
「わんっ」
「ダメよ。夜は暗いでしょう? 暗い道は危ないの」
「街灯で明るいもん。お母さんと真珠と一緒なら危なくないよ」
「わうんっ」
母親の行く手を阻むように両手を広げて立ちふさがるマリーとマリーの隣で耳をピンと立てて胸を張る真珠を交互に見て、母親はため息を吐いた。
「留守番をしていてと言ってもついてきそうね。仕方ない。一緒に行きましょう」
「やったーっ!! やったね。真珠っ」
「わっわうっ!! わうーっ」
ついて行けることになったマリーは真珠を抱っこしてぎゅっと抱きしめた。
母親は大喜びしているマリーと真珠を見つめて苦笑する。
「シンジュは私が抱いていくから、マリーは逸れないように手をつないで」
「真珠。お母さんに抱っこしてもらってもいい?」
「わんっ」
マリーに抱っこされている真珠は、尻尾を振って肯く。
真珠の同意を得たマリーは、彼を母親に差し出した。
母親はマリーから真珠を受け取り、左腕で抱く。そして右手をマリーに差し出した。
マリーは母親の手を握る。
「じゃあ、行きましょうか」
母親の言葉にマリーと真珠は肯き、そして揃って外に出た。
***
若葉月9日 夜(5時30分)=5月5日 14:30
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