第438話 そうだ、文化祭に行こう!!(第三者視点)
普人達がテンプレのような何かを体験している頃、神ノ宮学園の近くに歩いてやってきた二人の人物がいた。
一人は小学生にも見えなくないほどに小柄で黒髪をツインテールにしている美幼女。もう一人は高校生くらいに見える黒髪ロングヘア―の美少女。ツインテールの女の子はお上りさんのように辺りを忙しなく観察し、もう一人の少女は落ち着いた雰囲気でゆったりと歩いていく。
二人は全く気付いていないが、他の通行人の男たちは二人に思わず目を奪われたり、体を硬直させてたりしていた。
元々美少女だった二人はスパ・エモーショナルと呼ばれるスパリゾートのガチ施術によってさらなる存在へと昇華され、他の男たちにとってはとんでもない美少女に映っているせいだ。
そのおかげで彼女や妻がいる男たちは脇をつねられたり、殴られたりして酷い目にあっている。
まぁ自業自得である。
「ふわぁ。お兄ちゃんの学校の前の人だかり半端ないよ~」
「そうねぇ。毎年沢山の人が訪れるけど、今年は色々な事件起こったから何時にも増して多いわね」
「そうなんだ。迷子になりそう」
「それなら私と手をつなぎましょうか」
「零ちゃんありがとう」
その二人とは佐藤普人の妹である佐藤七海と、パーティメンバー兼普人が代表を務めるアビスガーディアンの副代表である黒崎零である。
彼女たちは普人の勇姿を見るために、神ノ宮学園の学園祭へとやってきたのだ。
彼女たちは学校前の直線の道に人だかりを見つけてうんざりしている。二人は意を決して手をつないでその人だかりの中へと突入した。
「念のため魔法掛けとくね、パニッシュメントプロテクション」
「感謝するわ、七海ちゃん」
「どうしたしまして」
人が沢山いるため、スリや痴漢が現れる可能性もある。だから、七海は自分たちの周囲に歩きを阻害しない結界魔法を使用した。
本来であれば、結界魔法はノエルが動かせなかったことを考えれば、非常に難しい魔法なのだが、ユニークスキルを持っていて、尚且つすでにSランク以上に足を突っ込んでいる七海にとっては、なんの苦も無く使える魔法でしかない。
ただ、この結界魔法は守るための魔法ではなかった。
「お嬢さんたち、俺たちと一緒に回らない?」
「絶対損はさせないからさ」
その効果がいかんなく発揮される生贄として、二人に声を掛ける男たちが現れる。
「それでね、やっぱりお兄ちゃんの執事姿めっちゃ見たい。それにその姿で恭しくもてなされたい」
「それはなかなか魅力的な話ね」
「だから、最初はお兄ちゃんのお店に行こうよ」
「分かったわ」
七海と零は声を掛けてきた男たちなどいないかのように全く意に介すことなく二人で話を続けながら先に進んでいく。
「ねぇ、ねぇってば!!」
「ちょっと話を聞いてくれないか?」
男たちは無視されたにもかかわらず、しつこく二人に付きまとう。他の通行人たちは迷惑そうに男たちを見つめるが何も言わない。
いちゃもんを付けられて自分たちに被害が及んだらと思うと、何も言えないのだ。
「その後は適当にお店を回って、時間になったらお兄ちゃんたちの演奏見にいこ」
「そうね。私はこういうイベントは学生以来だから楽しみだわ」
「そうだね、私も初めてだからすっごい楽しみ!!」
しかし、そんなこととは露知らず。七海と零は男たちを無視し続ける。
「おいおい、ちょっとかわいいからって調子に乗りすぎじゃないか?」
「そうだそうだ。いい加減にしろよ?」
流石に無視し続けられて頭に来たらしい男たち。二人はいきなり態度を変えて七海と零に向かって凄んで見せた。
「できれば全部のお店を回りたいなぁ」
「ちょっとこの人手だと難しいかもしれないわ」
「そうなんだよねぇ……」
しかし、男たちの精一杯の威嚇も七海たちに届くことはなかった。
そもそも普段からAランクやSランクのような化け物と対峙している二人にとってその辺のチャラ男の威嚇なんてそよ風みたいなものだ。もっとも、仮に探索者だとしても今の二人には余程の相手でなければ威嚇にもならない。
アリが象に対して威嚇しているようなものなのだから。そんな矮小な気持ちなんて察することさえできない。
「ふざけやがって!!」
「ちょっとこっちにこい!!」
完全に無視され続けた男たちは、遂に七海たちに手を出した。出してしまった。男たちの手があと十センチ程度で七海たちの体に触れようという距離まで近づいた時、それは起こった。
『あばばばばばばばばっ』
男らはまるで雷にでも打たれたかのように体を痙攣させ、体をくねくねと動かす。
そう。これこそが七海が使用した結界魔法『パニッシュメントプロテクション』の効果なのだ。その名前の通り、対象が敵意や害意をもってその結界に触れたり、攻撃したりすると、電撃のような反撃が罰として自動的に行われるのである。
チャラ男達はその身に罰を受けたということだ。それはか弱い?女性に手を上げようとした因果応報だった。
二人はそんな男たちを気にすることもなく、学校に向かって進み続けるのであった。
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