高校デビューに失敗した無能探索者は人間を極める～レベルもスキルも能力値もない俺に何故か美少女が次々と近づいてくる件～

第259話 罰ゲーム

「はぁ……はぁ……負けました」

　零は戦意を喪失してしまったけど、きちんと岩まで行って帰ってきた。最後までやりきるところはさすがだと思う。

「七海チームの勝利！！」

　零が帰ってくるなり俺が勝利判定を告げる。

「へへーん。私達の勝ちぃ～！！」

「勝利」

　七海がドヤ顔で、シアは無表情でアホ毛が力こぶを形作って勝ち誇る。

　よっぽど嬉しいらしい。

「もう！！こんなの無効よ！！無効試合よ！！」

「駄目です～。ルール違反はしてないんだからね！！」

　天音が子供のように地団太を踏んで今の戦いをなかったことにしようとするけど、七海が正論でそれを阻止する。

「そうね。私たちもちゃんと確認しなかったし、それで戦いを受けたんだから、負けを認めましょう？」

　零も天音の肩に手を置いて諭すように話した。

「はぁ……分かったわよ。今回は私たちの負けにしておいてあげる。でも次に戦う時は負けないんだからね！！」

「望むところだよ！！」

　零の言葉が効いたらしく、がっくりと肩を落として諦めたようにため息を吐いた後、つーんと不満気な表情で負けを認めた。

　その後で宣戦布告をして七海も楽しそうにそれを受けた。

「でもやっぱり胸が邪魔ねぇ……。そのせいで大分泳ぐのが遅くなったわ」

「それはその通りね。抵抗が凄いのよね」

　二人は俯き、胸を持ち上げるようにして自分の胸を見下ろしながら不満気に呟く。

　手で持ち上げることによって、手に乗るように形をぐにゃりと変え、その柔らかさが想像されてしまい、思わず顔を逸らした。

　二人は俺がここにいるのを忘れているんだろうか？

　それともまさか俺の反応を見て楽しんでいるのか？

　全くとんでもない仲間たちだ。

「そうやってこれ見よがしに見せつけるなんて！！」

「ズルい」

　俺の思考を他所に二人の様子に怒り心頭の七海。それに羨ましそうなシア。

「悔しいなら七海も大きくなることね！！」

　悔しそうに叫ぶ七海に、図らずも精神ダメージを与えることに成功した天音が、二人を見下すように勝ち誇った。

「むきー！！もうこうなったら簡単な罰ゲームで許してあげようと思ったけど、凄いの考えちゃうんだからね！！」

「ん！！」

　二人の逆鱗に触れた天音により、罰ゲームがより酷いものになることが決定した。

「あ、あ、ごめん、ごめんってばぁ！！」

「ダメですぅ！！ちょっと考えてるんだからあっち行ってて！！」

「ん」

　その後、急に焦って二人に謝って罰ゲームを優しい物にしてもらおうとした天音だったけど、その声は七海たちに届くことはなく、天音を追い払った。

「はぁ……」

「流石に煽り過ぎだろ」

「そうねぇ……」

　落ち込んで俺と零が居る辺りに戻ってくる天音に俺と零が咎めるように言う。

「だってあんな負け方悔しかったから……」

「分からないでもないけどな。後で甘いものでも出してやるし、少し俺からも話しておくから元気出せ」

　とっても悔しそうな天音。彼女は負けず嫌いだからな。正々堂々じゃない感じで負けたのがよっぽど納得いかないんだろうな。

　その様子を見ていられなかった俺は天音を慰める。

「分かったわ。頼むわね……余りに酷いのはちょっとね……」

「分かってるって」

　確かに余りに酷いものを罰ゲームにさせるのは良くない。

　まさかそんな酷い罰ゲームを考えていることはないと思うけど、俺は七海たちの所に近づいた。

「やっぱり裸で逆立ちして町内一周じゃない？」

「鼻からスパゲティ三キロ」

「それも悪くないわね」

「ぶはっ」

　二人の会話を聞いてみたら、思った以上に酷い罰ゲームを考えていて俺は思わず噴き出した。

　というか古い時代のドラゴえもんに出てきそうな罰ゲームだ。

　あれって実際にやったら確実にヤバいよな。

「あ、お兄ちゃん。どうしたの？」

「ん？」

　俺が噴き出したのに気づいて振り向いて首を傾げる二人。

「いや、どんな罰ゲームを考えているか聞きに来たんだけど、ちょっとあまりにも酷かったからな。もう少しやさしい罰ゲームにしてほしい」

「えぇええええええ！！せっかく勝ったのにぃい！！それに嫌味言われたし！！」

　七海は俺の言葉に不満たらたらで叫ぶ。腕を組んで不機嫌そうにそっぽ向いて怒り心頭である。

　確かに腹が立つのは分かるけど、その苛立ちを勘定のままに相手にぶつけるのは良くない。

　七海にとっても天音にとっても。

「その気持ちも分かるけどな。あんまりひどいと心に傷が出来るし、二人の気持ちの溝にもなる。それに七海もホントはちょっとズルしたと思ってるんだろ？」

「それはまぁ……うん」

　俺の言葉に、七海は自分も少しズルい事をしたという自覚があることを吐露する。

　七海にも罪悪感があるなら話は早い。

「だったらもう少し優しいものにしてくれ。そうじゃないと本当に仲が悪くなっちゃうぞ？」

「はぁ……分かった。それじゃあ、私たちが案を出すからお兄ちゃんがどのくらいならいいか判断してね」

「了解」

　俺が諭すように言うと、七海は気持ちを切り替えるように大きく息を吐いた後、険の取れた表情になって俺に罰ゲーム案の判断を依頼してきたので、俺はそれを快く引き受けた。

　七海とシアから出される罰ゲーム案は中々に鬼畜なものが多かったけど、これならまぁなんとかいけるかなぁってものに抑えることが出来たと思う。

「それじゃあ、これから七海に罰ゲームを発表してもらいます」

―ジャガジャガジャガジャガッ……

　どこから出したのかよくテレビ番組の結果発表とかに流れる太鼓の音みたいな音楽を流し始める。

―ジャガジャンッ

　数十秒ほど流れると、太鼓の音が止まった。

「二人にはこの防具を来て明日一日過ごしてもらいます！！」

　そうやって二人が取り出したのは、とんでもなく際どい上に、角とか羽とか尻尾とかが生えた、所謂サキュバスっぽい衣装だった。

　実はこれダンジョン探索で出てきた防具だ。

　七海のカバンの中で肥やしになっていたんだけど、今回お披露目されることとなった。

「そ、それは流石に恥ずかしいんだけど……」

「ちょっときわど過ぎるかなぁって」

　二人はそれを見た途端、顔を真っ赤にしてやんわりと拒否する。

「大丈夫！！この防具はポロリしない補正が掛かってるから！！」

「ん」

　どうやらシアが以前同じような防具を見たことがあるらしく、それには絶対にズレない魔法が付与されていたらしい。

「それにそのくらいじゃないと罰ゲームにならないでしょ！！」

　確かに羞恥心とか辛いとか、そういうマイナスの感情を伴わないと罰ゲームとは言えない。

　裸は流石にマズいと思ったし、逆立ちもしんどいので、このくらいならと妥協した結果が今回の罰ゲームだ。

「はぁ……分かったわ。負けは負けだし、その罰ゲームに従うわ」

「そうね。私も恥ずかしいけど、言ってしまえばそれだけだし、我慢するわ」

　諦めた様に肩を落としてその罰ゲームを受ける覚悟を決めた二人。

　その頃には日が沈みかけていたので、美味しい物や甘い物を食べることで、暗くなった雰囲気を吹き飛ばした。

　ご飯を食べ終え、皆で談笑していい頃合いになると、皆が寝っ転がっても大丈夫な程広いウォーターベッドのようなものをビニールシートの上に置いて、みんなで横になる。

　その日も満点の星空と、その星空が映る海面という美しい光景に癒されながら、俺達は眠りに着いた。