第234話 驚愕、そして驚愕
「それから、失踪事件とは全く別件なんだけど、報告がある。シア、言っても大丈夫か?」
「ん。ふーくんにお任せ」
それから一通り今後の予定を話し合った俺達。キリもいいのでシアの両親について話すことにした。
「アレクシアがどうかしたの?」
「そうね、何かあったのかしら」
「そういえば私も詳しく知らないんだった!!」
「ああ、それを今から話す」
シアに話を振ったことで彼女のことだと理解した三人が各々反応を示すので、俺は頷いて話し始める。
「まず、シアの両親に関してだけど、半年ほど前からダンジョンに入ったっきり戻ってこなくて生死不明の状態だったんだ」
「え!?そうだったの!?」
「まさかそんなことが……」
俺が話を切り出すと、七海と天音はとんでもない事態になっていたことを知り、愕然とした表情を見せる。
「ああ、実はそうだったんだ。シア、間違いないよな?」
「ん。二人ともある日から帰ってこなくなった。私は助けるためにレベル上げてた」
シアに同意を求めると、彼女は頷いて少し追加情報を加える。
「シアお姉ちゃんがレベル上げ頑張ってたのってそういう理由があったんだね……」
「ん」
七海がシアがレベル上げを頑張って理由を知って悲し気な表情をする。
「それはそうと、零は驚いてないな。知っていたのか?」
「ええ。葛城さんのご両親がダンジョンから帰っていないことは知っていたわ。二人は結構有名だしね」
驚いていない様子の零に尋ねると、案の定彼女はシアの両親のことを知っていた。
「やっぱりそうだったか。それで今日の本題なんだけど、俺は愛莉珠ちゃんを拾った後、いくつものダンジョンを経由して日本に帰ってきた訳だけど、最後に辿り着いた日本のダンジョンで二人を見つけた。そしてかなりひどい状態だったから、アイテムを二人に使って傷を治して保護し、一昨日ラックの力でウチに連れて帰ってきたんだ」
「私はいきなり現れてびっくりしたけどね!!」
「最初は気づかなかったけどな」
「お兄ちゃん、それは言わないで!!」
俺はその失踪中の二人を見つけて生還させたことを報告すると、七海が茶々を入れるように言う。
俺は少しいたずらしたくなって、ニヤリと笑って当時の状況を思い出しながら七海をからかうと、七海は頬を膨らました。
はぁ~、俺の妹可愛いな。
「つまり、行方不明になっていたアレクシアの両親を普人君が帰還させたって事だよね?」
「ああ。一昨日は夜遅かったからウチに泊まってもらったり、汚れを落としたりしてもらって、昨日シアにサプライズで再会してもらった。な?」
天音が話をまとめて俺に確認するので、俺は肯定するように首を縦に振り、帰ってきてからの流れを説明し、シアに同意を求めた。
「ん。心臓飛び出すかと思った」
シアは無表情に近い顔でそんなことをいうもんだから、なんだかギャップが半端じゃない。
「それってアレクシアの心からの願いを叶えたってことだよね?」
「えっと、そういうことになるのか?」
「ん。とっても嬉しかった」
天音がさらに追加で俺に尋ねる。何かの尋問だろうか。
俺は分からないのでシアに尋ねると、シアは無表情で頷いた。
「そうだよね~、そんなことされた嬉しいよね。そこで何かなかった?」
ニヤニヤとからかうような視線を俺に送ってくる天音。
うわっ。こいつシアが俺に何かしたのを確認して追及してきてたのか。
「い、いや、何もなかったぞ?」
俺は苦し紛れな言い訳をする。
くっ。シアの両親を助けた話をすると、この話題になる可能性があることを失念していた。
「アレクシア、ホント?」
俺が口を割らないと見るや、天音はシアに矛先を変えて尋ねる。
「ん、ふーくんがもっと大好きになったからちゅーした」
『え!?』
シアは特に恥ずかしがることもなく躊躇せず答えた。その答えに驚愕した三人が目を見開いてシアを見つめる。
「ちゅーした」
「違うのよ。そういうことじゃないの!!」
三人が聞き取れなかったと勘違いしたのか、シアは再び繰り返す。繰り返すシアに天音はそういうことじゃないとキレ気味に叫んだ。
「お兄ちゃん、ホントにしたの!?」
「いや、まぁ、し、したと言えばしたな」
信じられないという表情で俺の顔を見ると七海に嘘を言えない俺は、顔を少し逸らして頬をかきながら答えた。
「そんなぁああああああああ。お兄ちゃんのファーストキスは私がもらう予定だったのに!!」
「いやいや、妹とキスしたりしないからな!!」
七海が兄妹にあるまじき願望を言いだしたので、俺は断固拒否する。
しかし、混乱は収まらない。
「二度目」
「え!?」
「ふーくんとちゅーするのは二度目」
『ええぇええええええええ!?』
シアのさらなる追い打ちによって三人はさらに驚愕の叫びをあげた。
「どういうことなのお兄ちゃん!!」
「どういうことよ、普人君!!」
「私も詳しい話を聞いてもいいかしら?」
いや、あれは俺の暴走を止めるための不可抗力じゃないんですか、シアさん!?
あんなムードも何もないキスを初めてとカウントしてもいいんでしょうか!?
俺はシア以外の三人に問い詰められながら、そんなことを考えていた。
その後、俺はシアとのことを根掘り葉掘り聞きだされることとなった。
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