第223話 ラブリーセイント参上!!(第三者視点)
「照り付ける太陽、青い海、綺麗な砂浜、南国の植物にトロピカルジュース……って、私はバカンスにきた旅行者じゃないんですよぉおおおお!?」
純白の水着を身に纏い、照り付ける太陽の下で白い椅子に座ってトロピカルジュースを片手に、雲一つない青空に向かって一人の女の子が咆哮する。
目の前には太陽に照り付けられてコバルトブルーに輝く海が広がり、まさにバカンスとしか思えない光景だった。
その女の子の名はノエル。とある機関の研究員であり、聖女と呼ばれる世界最高峰の
聖女と言う名前とは裏腹に姦しい性格なので、初対面で見破られることはほとんどない。勿論機関が情報規制しているというのもあるが。
彼女は日本のとある学園に留学する予定だったが、飛行機を乗り間違えてアメリカに行き、その後日本にやってくることが出来たものの、そこは沖縄という状況に見舞われていた。
そしてなぜかあれよあれよという間に、リゾートでバカンスを満喫している旅行者になっていたのである。
「まぁいっか、ですよ。ちゅ~」
先ほどの咆哮はなんのその。気持ちを早々に切り替えたノエルは、軽く寝そべるようなビーチチェアーに背を預けてトロピカルジュースに口を付け、目の前に光景をボーっと眺める。
ノエルが今座っているビーチチェアーは東屋のような場所にあり、そこからは海で遊ぶ旅行者たちが自然と目に入る。
大学生くらいのカップル、親子連れ、女性だけ、男達だけ、大人数のグループなど様々な組み合わせがあった。
「むむっ!!乙女のピンチですよぉ~。ちゅ~、ずぞぞぞぞぞっ。ほっ」
しかし、そんな光景の中に似つかわしくないものを発見したノエルは、トロピカルジュースを一気に吸い上げて飲み干し、砂浜に駆け出した。
「や、やめてください……!!」
「そ、そうよ。もう断ったじゃない」
「おいおいいいのか、探索者に逆らって?」
「そうだぜ?俺達今断られちゃったら次のスタンピードで君たちを見つけてもうっかり助けられないかもしれないぁ」
ノエルが走っていった先では可愛らしい女性が二人、ナンパというよりはもうほとんど脅しに近い内容である。
探索者は一般人とは隔絶した戦闘能力、そしてモンスターから一般人を守るという側面を持っているため、このような内容で一般人を脅して言うことを聞かせようとする人間が一定存在していた。
「待ちなさぁああああいデスよ!!」
「誰だ、てめぇは!?」
「ふっふっふ。私は何を隠そう、乙女の味方ラブリーセイント、ですよ!!キュピピピピピーンッ」
突然両者の間に現れた変なポーズを決める闖入者。
男たちは困惑した。しかし相手の正体を認識すると、思わず固まってしまった。
なぜならノエルは圧倒的美少女だからだ。何も話さず、大人しくしていればその二つ名の通り、聖女と呼ばれてもおかしくはない程に。
バカンス気分で流れるような金髪をまとめたお団子頭、その深紅の大きく、猫を思わせるクリっとした瞳、整った目鼻立ち、均整の取れたスタイルを持つ彼女は日本人の多いのの海辺で非常に目立っている。
ただし、言動とポーズがそれを台無しにしてしまっていた。
「はぁ!?なんだてめぇ!!」
「俺達の邪魔をするんじゃねぇ!!」
一瞬見惚れてしまった二人だったが、相手の変な言動とポーズによって我に返り、ノエルに邪魔をされた文句をつける。
「ちっちっち。全く探索者の力で脅すなんて、探索者の風上にも置けない屑デースよ。男を磨いてから出直すデスよぉ」
「この、ちょっと容姿がいいからって調子に乗りやがって!!」
「そうだそうだ!!こうなったらお前の体に分からせてやるからな!!」
挑発するノエルに二人の男は怒りを青筋を立てながら叫んだ。
「全くしょうがない男達デスよ。どうやら成敗するしかないようデスよ」
「やってみろよ!!」
「上等だ!!」
呆れるような仕草にさらに男たちは怒りを募らせる。
「それではお言葉に甘えて、デスよ。セイントキック!!」
「ふべぇ!?」
挑発しかえされたノエルは男たちの一人の顔面にドロップキックをかまし、男が吹き飛んでいく。
「な、なにぃ!?」
その様子を見たもう一人の男がノエルの思いがけない強さにうろたえる。
何を隠そうノエルは聖女と呼ばれるほどの世界最高峰の
つまり、世界最高峰の力をもっているということ。
当然それは戦闘能力もあるということを示している。
勿論戦闘職は劣るが、そんじょそこらの低ランク探索者に劣るようなものではなかった。
「ふっふっふっ。どうしたデスか?かかってこないデス?」
「ふ、ふざけやがって!!絶対鳴かしてやる!!」
小ばかにするような態度をとるノエルに、冷や汗をかきながらももう引けない男は精一杯の虚勢を張る。
「出来るモノならやってみろ、デスよ!!」
「ぬかせ!!ふごぉ!?」
相手と同じセリフで挑発しかえし、襲い掛かってきた男を返り討ち。
「まぁこんなものですよぉ!!」
ノエルはその真っ平な胸を張って勝ち誇った。
男たちは砂浜に突き刺さっていた。
「大丈夫デスか?」
「え、ええ、ありがとうございました」
「ありがとうございます」
怯えていた女の子達の所に向かうと、二人は安堵した表情でノエルにあたまを下げる。
「可愛い女の子を守るのはラブリーセイントの使命デスから。ラブリーセイントはあいつらを探索者組合に連れていくデスから気を付けて遊ぶデスよ」
「はい」
「本当にありがとうございました」
ノエルはその様子に満足そうな笑みを浮かべて腕を組んで笑った。二人はノエルに頭を下げて少し離れた海辺で遊び始めた。
「女の子に対する乱暴はこのセイントラブリーが許さないですよぉ!!」
自分のことを見ていたであろう海辺に居る旅行者に向かって宣言するノエル。
海辺の男達はビクリと反応した。
「ウンウン、それではさらばデスよ!!」
男達の反応に満足したノエルは、気絶したままの男二人の足を掴んで引き摺り、ビーチを抜けたところで換装して探索者組合に向かった。
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